オフサイドルール変更!新ルール「ヴェンゲル案」を世界一わかりやすく解説

ルールと戦術を学ぶ

サッカーの試合を観ていて「え、これがオフサイド?」と疑問に思ったことはありませんか?現在、そんなオフサイドルールの大きな変更が検討されています。

元アーセナル監督のアーセン・ヴェンゲル氏が提案したこの新ルールは、攻撃側の選手に有利なもので、「サッカーがもっと面白くなる」と期待されています。

この記事では、話題のオフサイドルール変更案について、現行ルールとの違いや導入の背景、メリット・デメリット、そしていつから導入されるのかまで、サッカー初心者の方にも分かりやすく、図解も交えて徹底解説します。新しい時代のサッカールールを一緒に学んでいきましょう。

オフサイドルール変更案(新ルール)の具体的な中身

サッカーの根幹に関わるルールの一つ、オフサイド。このルールが、より攻撃的に、そしてより分かりやすくなる可能性を秘めた大きな変更の岐路に立っています。ここでは、注目を集める新オフサイルールの具体的な内容と、その提案者について詳しく見ていきましょう。

提唱者は誰?元アーセナル監督ヴェンゲル氏

この画期的なオフサイドルール変更案を提唱しているのは、イングランド・プレミアリーグの強豪アーセナルで22年間も監督を務め、Jリーグの名古屋グランパスでも指揮を執った経験を持つ、アーセン・ヴェンゲル氏です。

監督引退後は、FIFA(国際サッカー連盟)の国際サッカー発展部門責任者という重要な役職に就き、サッカーというスポーツをより魅力的にするための様々な改革に取り組んでいます。 今回のオフサイドルール変更案もその一環で、彼の豊富な経験とサッカーへの深い洞察から生まれたものです。 ヴェンゲル氏は、より多くのゴールが生まれ、試合がスピーディーになることを目指しています。

「体全体が相手より前に出ていないとオフサイドにならない」とは?

新ルールの核心は、「攻撃側の選手の体全体が、守備側の最後から2番目の選手(オフサイドライン)より完全に前に出て初めてオフサイドになる」という点です。

現行のルールでは、頭や足など、体の一部でもオフサイドラインより前に出ていればオフサイドと判定されます。 しかし、ヴェンゲル氏が提案する新ルールでは、かかとやつま先など、体の一部でもオフサイドラインに残っていればオンサイド(オフサイドではない)と見なされるのです。

例えば、攻撃側の選手が相手ディフェンダーと並んで走りながらパスを受けようとする場面を想像してください。現行ルールでは、上半身が少し前に出ただけでもオフサイドの笛が吹かれます。しかし、新ルールが採用されれば、体の大部分が相手より前に出ていても、片足が相手選手と重なっていたり、少しでも後ろに残っていればプレーは続行されます。これは、攻撃側の選手にとって非常に有利な変更と言えるでしょう。

イラストで比較!現行ルールと新ルールの違い

言葉だけでは少し分かりにくいかもしれませんので、簡単な比較表で現行ルールと新ルールの違いを整理してみましょう。

ルール オフサイドになるケース オンサイドになるケース
現行ルール 攻撃側選手の体の一部(頭、胴体、足など)がオフサイドラインより前に出ている。 攻撃側選手の体が完全にオフサイドラインの後ろにあるか、並んでいる。
新ルール(ヴェンゲル案) 攻撃側選手の体全体が、完全にオフサイドラインより前に出ている。 攻撃側選手の体の一部(かかとなど)でもオフサイドラインに残っているか、並んでいる。
要するに、「少しでも出ていたらアウト」だったのが、「完全に全部出ていなければセーフ」に変わる、というイメージです。

この変更により、これまでオフサイドと判定されていたギリギリのプレーの多くがオンサイドとなり、ゴール前の攻防が格段に増えることが予想されます。

なぜオフサイドルールは変更されるの?

長年親しまれてきたオフサイドルールが、なぜ今、大きな変更の対象となっているのでしょうか。その背景には、近年のサッカー界が抱えるいくつかの課題と、スポーツをより魅力的なものにしたいというFIFAの思惑があります。

VAR導入による「ミリ単位」の判定への批判

大きな理由の一つが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入です。VARは、映像を用いて主審の判定をサポートする画期的なシステムで、誤審を減らすことに大きく貢献しました。 しかし、オフサイドの判定においては、新たな問題を生み出しました。

VARによって、これまで人間の目では見抜けなかった数センチ、時には数ミリ単位のオフサイドが厳密に判定されるようになりました。 これにより、素晴らしいゴールが取り消されるケースが頻発。「つま先がちょっと出ていただけ」「脇の下がオフサイド?」といった、ファンにとっては釈然としない判定が議論を呼ぶことも少なくありませんでした。 こうした「厳密すぎる判定」が、試合のスペクタクル性を損なっているという批判が、選手、監督、そしてファンの中から高まってきたのです。

攻撃的なサッカーの推進が目的

FIFAやヴェンゲル氏が新ルールを推進する最大の目的は、より攻撃的で、ゴールの多い、エキサイティングなサッカーを実現することにあります。

新ルールが導入されれば、攻撃側の選手はより大胆にディフェンスラインの裏を狙えるようになります。 これまでオフサイドを恐れて躊躇していたようなタイミングでも、自信を持って飛び出せるようになるでしょう。これにより、ディフェンスラインとゴールキーパーの間のスペース(裏のスペース)をめぐる攻防が活発化し、決定的なチャンスが増えると考えられています。FIFAの試算では、得点数が50%も増加する可能性があるとも言われています。

バレーボールがラリーポイント制を導入して試合展開をスピーディーにしたように、サッカーもルール変更によってエンターテイメント性を高めようとしているのです。

これまでのオフサイドルールの変遷

実は、オフサイドルールはサッカーの歴史の中で何度も変更が加えられてきました。ルールが誕生した当初は、ボールより前にいる選手は全員オフサイドと見なされるなど、非常に厳しいものでした。

その後、時代とともにルールは緩和されてきました。

  • 1925年: 「相手選手が3人」から「2人」いればオフサイドにならないように変更。これにより、攻撃的な戦術が大きく発展しました。
  • 1990年: 守備側選手と「同じレベル(並んでいる状態)」であればオンサイドと見なされるように変更。
  • 2005年: 「オフサイドポジションにいること」自体は反則ではなく、「その位置でプレーに関与した場合」に初めて反則となる、という解釈が明確化。

このように、オフサイドルールは常に「いかにして試合を面白くするか」という視点で見直されてきました。今回のヴェンゲル案も、その歴史の延長線上にある、ごく自然な流れと捉えることができるでしょう。

新オフサイドルール導入によるメリットとデメリット

どんなルール変更にも、良い面と課題となる面が存在します。ヴェンゲル氏が提唱する新オフサイドルールは、サッカーを劇的に変える可能性を秘めている一方で、新たな問題点を指摘する声も上がっています。ここでは、考えられるメリットとデメリットを具体的に見ていきましょう。

メリット:得点機会の増加と分かりやすさ

新ルールの最大のメリットは、何と言っても得点機会の大幅な増加が期待されることです。 攻撃側が有利になることで、ゴール前の攻防が増え、よりスリリングな試合展開が見られるようになるでしょう。 ストライカー(点を取る選手)はディフェンスラインとの駆け引きにおいて有利な立場となり、これまで以上に多くのゴールを決めるチャンスを得ることになります。

もう一つのメリットは、判定の分かりやすさです。 VARによるミリ単位の判定は正確かもしれませんが、ファンにとっては直感的ではありませんでした。 新ルールでは「体全体が完全に出ているか」という、より明確な基準になるため、肉眼でも判断しやすくなる可能性があります。 これにより、ゴールが取り消されることへのフラストレーションが減り、誰もが判定に納得しやすくなることが期待されます。

デメリット:ディフェンスラインの崩壊と戦術の画一化?

一方で、デメリットも指摘されています。最も懸念されているのが、守備戦術への大きな影響です。

現在、多くのチームが採用している「ディフェンスラインを高く保ち、相手の攻撃スペースを消す」という戦術が、新ルールの下では機能しづらくなる可能性があります。攻撃側が有利になるため、ディフェンダーは自陣のゴール近くまで下がらざるを得なくなるかもしれません。そうなると、中盤に広大なスペースが生まれ、試合が大味になってしまう危険性があります。

一部では、「ディフェンダーというポジションの価値が下がるのではないか」「戦術がゴール前に引いて守るカウンターサッカーばかりになり、画一化してしまうのではないか」といった懸念の声も上がっています。

このルール変更は、特にディフェンダーにとっては非常に大きな脅威であり、適応するためには新たな戦術やトレーニングが必須となるでしょう。

選手や監督の反応は?

この新ルール案に対しては、サッカー界の現場からも様々な意見が出ています。

攻撃的な選手や監督からは、より多くのゴールチャンスが生まれることを歓迎する声が聞かれます。試合がよりダイナミックになることへの期待感は大きいようです。

しかし、守備側の選手や、戦術的な駆け引きを重視する監督からは、懸念の声も少なくありません。「サッカーの戦術的な深みが失われるのではないか」「試合のバランスが崩れてしまう」といった意見です。

このように、立場によって賛否両論あるのが現状です。新ルールがサッカーの価値をさらに高めるのか、それとも何かを失わせてしまうのか、実際に導入されてみないと分からない部分が多いと言えるでしょう。

新ルールの導入はいつから?今後の見通し

多くのサッカーファンが気になるのは、「この新ルールは一体いつから始まるのか?」という点でしょう。画期的なルール変更だけに、導入までには慎重なプロセスが踏まれています。ここでは、テスト導入の状況や今後のスケジュールについて解説します。

テスト導入の状況と結果

この新オフサイドルールは、いきなり全世界で導入されるわけではありません。まず、一部の国やリーグで試験的に運用され、その効果や問題点が検証されます。

FIFAは、2023-24シーズンから、スウェーデン、オランダ、イタリアといった国々で、この新ルールの試験運用を開始する予定であると報じられています。 具体的には、スウェーデンの男子U-21リーグや女子U-19リーグなどで最初に試され、その後、他の国でも導入が進められる計画です。

これらのテストマッチを通じて、FIFAは以下のような点を詳細に分析します。

  • 実際に得点数は増えるのか
  • 試合展開はどのように変化するのか
  • 審判の判定は容易になるのか、それとも難しくなるのか
  • 選手や監督、ファンはどのような反応を示すのか

このテスト結果が、新ルールの将来を大きく左右することになります。

IFABでの議論と今後のスケジュール

サッカーのルールを最終的に決定するのは、IFAB(国際サッカー評議会)という組織です。 FIFAや、サッカーの母国であるイギリスの4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)などで構成されています。

ヴェンゲル氏が提案した新ルールも、このIFABの年次総会で議論され、承認を得る必要があります。 テスト導入で得られたデータをもとに、慎重な議論が交わされることになります。

当初、2024-25シーズンからのルール改正に盛り込まれる可能性も報じられましたが、2024年3月に行われたIFABの年次総会では、このオフサイドに関する新ルールの導入は見送られることが決定しました。

これは、まだテストと分析が十分ではないという判断によるものと考えられます。今後もテストは継続され、その結果次第では、2025年以降に再び本格的な導入が検討される可能性があります。

日本(Jリーグ)での導入はいつになる?

もし将来的にIFABが新ルールの導入を正式に決定した場合、それは全世界のサッカー競技会に適用されることになります。 もちろん、日本のJリーグも例外ではありません。

IFABによるルール改正は、通常7月1日から施行されます。 Jリーグでは、シーズン途中からルールが変わることを避けるため、例年ヨーロッパの新シーズンが始まるタイミングに合わせて、7月末ごろから新ルールを導入しています。

したがって、もし仮にIFABが将来のある時点で新ルールの導入を決定すれば、その年の夏以降にはJリーグの試合でも新しいオフサイドルールが適用されることになるでしょう。ただし、前述の通り、現時点では導入は見送られており、具体的な時期はまだ決まっていません。ファンとしては、今後のIFABの動向を注意深く見守る必要があります。

まとめ:オフサイドルール変更(新ルール)でサッカーは新たな時代へ

今回は、サッカー界で大きな注目を集めているオフサイドルールの変更案について、詳しく解説してきました。最後に、この記事の要点を簡潔にまとめておきましょう。

  • 提唱者: 元アーセナル監督のアーセン・ヴェンゲル氏。
  • 新ルールの内容: 攻撃側選手の体全体が完全にオフサイドラインを越えなければオフサイドにならない。 体の一部でも残っていればオンサイド。
  • 目的: VARによる「ミリ単位」の判定への批判を解消し、より攻撃的でゴールの多いエキサイティングなサッカーを実現するため。
  • メリット: 得点機会の増加と、判定の分かりやすさ。
  • デメリット: 守備戦術の崩壊や、試合展開が単調になる可能性。
  • 今後の見通し: 現在、スウェーデンやイタリアなどでテスト導入中。 2024-25シーズンからの本格導入は見送られたが、今後も議論は継続される見込み。

この新ルールは、サッカーの戦術や試合の様相を根底から変える可能性を秘めています。まだ正式導入の時期は未定ですが、サッカーがよりダイナミックで魅力的なスポーツへと進化していく過程にあることは間違いありません。今後の動向に、ぜひ注目していきましょう。

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