サッカーワールドカップのトロフィー!歴史やデザイン、値段まで徹底解説

サッカー豆知識

4年に一度、世界中のサッカーファンを熱狂させるFIFAワールドカップ。選手たちが目指すのは、世界一の栄光の証である黄金のトロフィーです。あの独特なデザインのトロフィーには、実は初代から続く波乱万丈の歴史が隠されています。現在のトロフィーは2代目で、その前には「ジュール・リメ・トロフィー」と呼ばれる初代トロフィーが存在しました。

この記事では、知っているようで意外と知らないサッカーワールドカップのトロフィーについて、初代・2代目の歴史からデザインの秘密、気になる価値、さらには「優勝国でも本物を持ち帰れない」というルールまで、わかりやすく解説していきます。この記事を読めば、次回のワールドカップ観戦がさらに楽しくなること間違いなしです。

サッカーワールドカップのトロフィーの基礎知識

サッカーのワールドカップで優勝国に授与されるトロフィーは、単なる優勝カップ以上の存在であり、世界中のサッカー選手が憧れる最高の栄誉の象徴です。現在使用されているトロフィーに至るまでには、歴史的な背景やドラマチックな物語があります。ここでは、まず現在のトロフィーと初代トロフィーについて、その基本的な情報を解説します。

現在のトロフィー「FIFAワールドカップトロフィー」とは?

現在使用されているトロフィーは、通称「FIFAワールドカップトロフィー」と呼ばれています。 このトロフィーは1974年の西ドイツ大会から使用されており、実は2代目のデザインです。 初代トロフィーが1970年に規定によってブラジルに永久譲渡されたことを受け、FIFAが新しいトロフィーのデザインを世界中から公募しました。

7カ国から53点ものデザイン案が集まり、その中から選ばれたのが、イタリア人彫刻家シルビオ・ガザニガ氏のデザインでした。

地球を頭上に掲げて歓喜する2人のアスリートがデザインされており、「勝利の瞬間」が見事に表現されています。 材質は18金で、台座部分には緑色のマラカイト(孔雀石)が2本のラインであしらわれています。 このトロフィーは、優勝国が永久に保持することはできず、表彰式の後にFIFAによって回収されます。優勝国には、代わりに金メッキが施されたブロンズ製の精巧なレプリカが贈られることになっています。

初代トロフィー「ジュール・リメ・トロフィー」

現在のトロフィーが誕生する前、1930年の第1回大会から1970年大会まで使用されていたのが、初代トロフィーである「ジュール・リメ・トロフィー」です。 この名前は、ワールドカップの創設に尽力した第3代FIFA会長ジュール・リメ氏の功績を称えて名付けられました。

デザインはフランスの彫刻家アベル・ラフレール氏によるもので、ギリシャ神話に登場する勝利の女神ニケが、八角形のカップを支え持つ姿をしています。 材質は純銀製で、その上に金メッキが施されていました。 当時のFIFAの規定では、「ワールドカップで3回優勝した国は、そのトロフィーを永久に保持できる」と定められていました。 そして1970年、ブラジルが3度目の優勝を果たしたことで、ジュール・リメ・トロフィーはブラジルの永久所有となりました。 しかし、この初代トロフィーには、後に数奇な運命が待ち受けていたのです。

2つのトロフィーの歴史と変遷

ワールドカップのトロフィーは、大きく分けて「ジュール・リメ・トロフィー」の時代と、現在の「FIFAワールドカップトロフィー」の時代に分けられます。

トロフィー名 使用期間 特徴
ジュール・リメ・トロフィー 1930年〜1970年 ・勝利の女神ニケがカップを支えるデザイン
・純銀製(金メッキ)
・3回優勝したブラジルが永久保持
FIFAワールドカップトロフィー 1974年〜現在 ・2人の選手が地球を支えるデザイン
・18金製
・FIFAが所有権を持ち、優勝国にはレプリカが贈られる

ジュール・リメ・トロフィーは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによる捜索の危機を乗り越えたり、1966年のイングランド大会前に盗難に遭い、犬によって発見されたりするなど、数々のドラマを経験しました。 しかし、1983年にブラジルで再び盗難に遭い、犯人は逮捕されたもののトロフィーそのものは見つからず、溶かされてしまったと考えられています。

このような歴史的背景から、FIFAは2代目トロフィーの所有権を永久に保持し、優勝国にはレプリカを渡すという現在の方式を定めました。 これは、世界に一つしかない貴重なトロフィーを盗難や紛失から守るための措置なのです。

FIFAワールドカップトロフィーのデザインと特徴

現在のFIFAワールドカップトロフィーは、その美しさと圧倒的な存在感で、世界中の人々を魅了しています。ここでは、そのデザインに込められた意味や、材質、大きさ、そして気になるその価値について詳しく見ていきましょう。

誰がデザインした?制作者とデザインの意味

現在のFIFAワールドカップトロフィーは、イタリアの彫刻家シルビオ・ガザニガ氏によってデザインされました。 1970年に初代トロフィーがブラジルに永久譲渡された後、FIFAは新しいトロフィーのデザインを国際的に公募し、53点の候補の中からガザニガ氏の作品が選ばれました。

彼のデザインは、「2人のアスリートが、歓喜の瞬間に世界(地球)を支え上げている」様子を表現しています。 躍動感あふれる選手の姿と、その手で掲げられた地球は、サッカーが世界的なスポーツであること、そしてワールドカップ優勝が世界一の栄誉であることを象徴しています。ガザニガ氏は自身のデザインについて、「地球は球体であり、サッカーボールによく似ている」と語っています。 トロフィー全体から放たれるエネルギーとダイナミズムは、まさに4年に一度の祭典の頂点を飾るにふさわしいデザインと言えるでしょう。

材質や大きさ、重さは?

FIFAワールドカップトロフィーは、見た目の輝きだけでなく、その素材も非常に貴重なものです。

トロフィー本体は18金で作られており、その重さはなんと6.175kgにもなります。 高さも36.8cmあり、選手たちが掲げる姿からもその重厚感が伝わってきます。

台座部分は、鮮やかな緑色が特徴のマラカイト(孔雀石)という半貴石が2層にわたって装飾されており、黄金の輝きとの美しいコントラストを生み出しています。 この台座の底面には、1974年大会以降の優勝国名と優勝年が刻まれるプレートが取り付けられています。 2022年のカタール大会でアルゼンチンが優勝したことで、13番目の名前が刻まれました。 このように、トロフィーは単なる造形物ではなく、ワールドカップの栄光の歴史そのものを刻み続ける貴重な記録媒体でもあるのです。

項目 詳細
高さ 36.8 cm
重さ 6.175 kg
材質 18金
台座 マラカイト(孔雀石)

トロフィーの価値は一体いくら?

FIFAワールドカップトロフィーの価値は、単純に金額だけで測れるものではありません。しかし、その素材からくる金銭的な価値も非常に高額であることは間違いありません。

トロフィーには約5kg強の18金が使用されているとされており、これを現在の金の市場価格で換算すると、素材だけで2,000万円から5,000万円以上になると言われています。

しかし、これはあくまで素材としての価値です。世界で唯一無二の芸術品であり、サッカー界最高の栄誉の象徴であるという歴史的・文化的な価値を含めれば、その金額は計り知れません。オークションに出品されるようなことは考えられませんが、もしそうなれば、その落札価格は天文学的な数字になることは想像に難くないでしょう。このトロフィーは、お金には代えられない、世界中のサッカー選手の夢と情熱が詰まった究極の宝物なのです。

ジュール・リメ・トロフィーの数奇な運命

現在のトロフィーが導入される以前に使用されていた初代「ジュール・リメ・トロフィー」は、その輝かしい歴史の裏で、数々の危機に見舞われた波乱万丈の物語を持っています。ここでは、その数奇な運命を3つのエピソードから紐解いていきます。

第二次世界大戦を乗り越えた秘話

ジュール・リメ・トロフィーが経験した最初の大きな危機は、第二次世界大戦中でした。1938年の第3回大会で優勝したのはイタリアで、トロフィーは当然イタリア国内に保管されていました。 しかし、戦争が激化し、1943年にイタリアが降伏すると、占領したナチス・ドイツが金としての価値を持つこのトロフィーを捜索し始めました。

この危機を救ったのが、当時のFIFA副会長であったイタリア人のオットリーノ・バラッシ氏でした。彼はナチスの捜索が及ぶことを察知し、ローマの銀行からトロフィーを密かに運び出しました。そして、なんと自宅のベッドの下の靴箱に隠すことで、ナチスの目から守り抜いたのです。

彼の勇敢な行動がなければ、初代トロフィーは溶かされて歴史から姿を消していたかもしれません。戦争という大きな混乱の中、一人の人間の機転と勇気によって、ワールドカップの象徴は守られたのです。

1966年イングランドでの盗難事件

第二次世界大戦の危機を乗り越えたジュール・リメ・トロフィーでしたが、平時においても受難は続きます。1966年、ワールドカップ開催を控えたイングランド・ロンドンで展示されていた最中に、なんとトロフィーが盗まれるという前代未聞の事件が発生しました。

開催国としてのメンツを失いかねないこの事態に、ロンドン警視庁は大規模な捜査を開始。イングランドサッカー協会には身代金を要求する脅迫状も届きました。 捜査は難航しましたが、事件は意外な形で解決へと向かいます。

盗難から7日後、ロンドン郊外の住宅街で、「ピクルス」という名前の犬が、散歩中に生け垣の下に新聞紙で包まれていたトロフィーを発見したのです。 このお手柄により、ピクルスは一躍イギリス中のヒーローとなり、飼い主には報奨金が贈られました。 大会は無事に開幕し、開催国のイングランドが初優勝を飾ることになります。 この事件は、ワールドカップの歴史における最も有名な逸話の一つとして語り継がれています。

ブラジルで永久保持後の盗難と紛失

1970年のメキシコ大会で3度目の優勝を果たしたブラジルは、規定によりジュール・リメ・トロフィーを永久保持する権利を得ました。 これでトロフィーも安泰かと思われましたが、最大の悲劇が待ち受けていました。

1983年12月、ブラジルのリオデジャネイロにあるサッカー連盟本部に保管されていたトロフィーが、またしても盗難に遭ってしまったのです。 連盟の建物は防弾ガラスなどで厳重に警備されていましたが、犯人グループは裏口の木製の額縁をこじ開けて侵入したとされています。

ブラジル警察は必死の捜査を行い、容疑者たちを逮捕しましたが、トロフィーそのものはついに発見されませんでした。 犯人たちの供述によれば、トロフィーは盗まれた後すぐに溶かされて金の延べ棒にされてしまったとされています。 この事件により、サッカー界の至宝であったジュール・リメ・トロフィーのオリジナルは、永遠に世界から失われてしまいました。現在、ブラジルサッカー連盟に保管されているのは、この時に失われたトロフィーのレプリカです。

ワールドカップトロフィーにまつわるルールと豆知識

世界最高峰の戦いの勝者のみが手にすることができるワールドカップトロフィー。その扱いには、厳格なルールやあまり知られていない豆知識が存在します。ここでは、トロフィーにまつわる興味深い事実をいくつかご紹介します。

優勝国はトロフィーを持ち帰れない?レプリカの存在

多くの人が、優勝国はあの黄金のトロフィーを4年間自国で保管できると思っているかもしれません。しかし、実は優勝セレモニーで選手たちが掲げている本物のトロフィーは、その直後にFIFAによって回収されてしまいます。

優勝国が持ち帰り、自国のサッカー協会で飾ることができるのは、「ウィナーズトロフィー」と呼ばれる金メッキが施されたブロンズ(真鍮)製の公式レプリカです。 このレプリカは非常に精巧に作られていますが、本物の18金製ではありません。

このルールが導入されたのは、初代「ジュール・リメ・トロフィー」がブラジルで盗難され、紛失してしまった悲しい歴史が背景にあります。 世界に一つしかない本物のトロフィーを未来永劫守り続けるため、FIFAが所有権を保持し、厳重に管理するという現在の形になったのです。

トロフィーに触れることができる特別な人々

ワールドカップトロフィーは、その神聖さゆえに、誰でも気軽に触れることができるわけではありません。FIFAは、トロフィーに直接触れることができる人物を厳格に定めています。

その資格があるのは、「過去にワールドカップで優勝した経験のある選手」「各国の国家元首」の2種類の人々だけです。

つまり、どれだけ偉大な選手であっても、ワールドカップ優勝経験がなければトロフィーに触れることは許されないのです。 例えば、ペレやマラドーナのような優勝経験者は触れることができますが、ヨハン・クライフのような無冠のレジェンドは触れることができません。 日本人選手も、まだワールドカップ優勝を果たしていないため、誰も触れる資格を持っていません。 元日本代表監督の岡田武史氏も、イベントで実物を見た際に触ることができず、残念がっていたというエピソードがあります。 この厳格なルールが、トロフィーの権威と価値をさらに高めていると言えるでしょう。

トロフィーの台座に刻まれる優勝国の名前

FIFAワールドカップトロフィーの台座の下部には、これまでの栄光の歴史が刻まれています。そこには、1974年の西ドイツ大会以降の歴代優勝国の名前と優勝年が、その国の公用語で刻印されたプレートが取り付けられています。

優勝年 優勝国
1974 ドイツ
1978 アルゼンチン
1982 イタリア
1986 アルゼンチン
1990 ドイツ
1994 ブラジル
1998 フランス
2002 ブラジル
2006 イタリア
2010 スペイン
2014 ドイツ
2018 フランス
2022 アルゼンチン

出典:

この台座のプレートはスペースに限りがあり、いずれ満杯になる時が来ると言われています。その時、FIFAがどのような決断を下すのか、新しいトロフィーが作られるのか、あるいは台座が新しくなるのか、サッカーファンの間でも注目されています。

トロフィーはどこで保管されている?

優勝セレモニーの後、そして世界中を旅するトロフィーツアー以外の期間、本物のFIFAワールドカップトロフィーはどこに保管されているのでしょうか。

その答えは、スイスのチューリッヒにあるFIFA本部の金庫の中です。より正確には、FIFAが運営する「FIFAワールドフットボールミュージアム」で厳重に管理・保管されています。

一般のファンが本物のトロフィーを見るチャンスは非常に限られています。その数少ない機会の一つが、ワールドカップ開催前にFIFAと公式スポンサーによって開催される「FIFAワールドカップトロフィーツアー」です。 このツアーでは、本物のトロフィーが世界数十カ国を巡回し、ファンに披露されます。日本にも数日間訪れることがあるため、ニュースをチェックしていれば、実物を見る貴重な機会に恵まれるかもしれません。

まとめ:サッカーワールドカップのトロフィーの輝かしい歴史と未来

この記事では、サッカーワールドカップのトロフィーに焦点を当て、その歴史、デザイン、価値、そして知られざるルールについて詳しく解説してきました。

  • 2つのトロフィー: ワールドカップには初代「ジュール・リメ・トロフィー」と現在の「FIFAワールドカップトロフィー」の2種類が存在します。
  • 波乱万丈の歴史: 初代トロフィーは、第二次世界大戦の危機を乗り越え、2度の盗難に遭い、最終的には行方不明になるという数奇な運命を辿りました。
  • 現在のトロフィー: 1974年から使用されている現在のトロフィーはイタリア人デザイナー、シルビオ・ガザニガ氏によるもので、18金製でその価値は計り知れません。
  • 厳格なルール: 本物のトロフィーはFIFAが所有し、優勝国にはレプリカが贈られます。 また、トロフィーに触れることができるのは優勝経験者と国家元首のみという厳しいルールがあります。

サッカーワールドカップのトロフィーは、単なる金色のカップではありません。それは、世界中の人々の夢と情熱、そして数々のドラマが刻まれた、サッカー界最高の栄光の象徴です。次にあなたがワールドカップを目にするとき、選手たちが掲げるトロフィーの背景にある物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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