サッカーファンにとって、4年に一度の祭典「ワールドカップ」は特別な時間です。2026年の北中米3か国共催、2030年の欧州・アフリカ・南米にまたがる100周年記念大会、そして2034年のサウジアラビア開催と、未来の開催地が次々と決まっています。では、そのさらに先、2038年のワールドカップ開催国はどこになるのでしょうか?
「まだ気が早い」と感じるかもしれませんが、実は水面下ではすでに壮大な計画が動き出しています。特に注目されているのが、アフリカのガーナが掲げる国家プロジェクトや、FIFA(国際サッカー連盟)が定める厳格な「ローテーションルール」の行方です。48カ国参加による大会規模の拡大に伴い、単独開催が難しくなっている現状も無視できません。
この記事では、2038年ワールドカップの開催地候補として噂される国々や、決定に大きく関わるFIFAのルール、そして日本開催の可能性について、徹底的に深掘りして解説します。未来のサッカー界を想像しながら、一緒に予想の旅に出かけましょう。
2038年のワールドカップ開催国はいつ決まる?基本情報

ワールドカップの開催地決定は、かつては開催の6〜7年前に行われるのが通例でした。しかし、近年のサッカービジネスの巨大化に伴い、その決定プロセスは大きく変化しています。まずは、2038年大会の開催地が決まる時期や、そのプロセスについて基本的な情報を整理しましょう。
決定までのスケジュールの目安と近年の傾向
従来、FIFAワールドカップの開催国は、大会の7年前に決定されることが一般的でした。例えば、2002年の日韓大会は1996年に、2018年と2022年の開催国は2010年に同時に決定されました。この「7年前ルール」に基づけば、2038年大会の開催地は2031年頃に決定される計算になります。
しかし、最近のFIFAはこの慣例を覆す動きを見せています。2030年大会と2034年大会の開催地が、実質的に2023年から2024年にかけて相次いで決定されたのです。これは、立候補国を一本化することで無駄な招致合戦を避け、準備期間を長く確保したいというFIFAの意図が働いていると言われています。
この傾向を踏まえると、2038年の開催国決定も前倒しされる可能性があります。早ければ2020年代後半、遅くとも2030年大会が開催される頃には、次なる舞台が発表されているかもしれません。開催地の決定が早まることは、インフラ整備やスポンサー集めにおいて開催国にとって大きなメリットとなります。
FIFAの開催地ローテーションルールとは
ワールドカップの開催地を予想する上で、最も重要なのが「大陸連盟のローテーションルール」です。これは、特定の大陸や地域で連続して開催されるのを防ぎ、サッカーの普及を世界規模で均等に行うためのルールです。現在のFIFAの規定では、「直近2大会を開催した大陸連盟(加盟国)は、次の開催国に立候補できない」という原則があります。
これを2038年大会に当てはめてみましょう。まず、2030年大会は欧州(UEFA)、アフリカ(CAF)、そして100周年記念試合として南米(CONMEBOL)で開催されます。次に、2034年大会はアジア(AFC)のサウジアラビアで開催されることが決定しています。つまり、ルールを厳格に適用すれば、これら4つの大陸連盟は2038年大会の招致から除外される可能性があるのです。
残された選択肢は、北中米カリブ海(CONCACAF)か、オセアニア(OFC)となります。しかし、2026年に北中米大会が開催されているため、ここも「直近2大会」の範囲に入るのか、それとも12年の間隔があれば許容されるのか、解釈が分かれるところです。このルールの運用次第で、候補国は劇的に変わることになります。
参加国数拡大が開催地に与える影響
2026年大会から、ワールドカップの参加国数は従来の32カ国から48カ国へと大幅に拡大されます。これに伴い、試合数は増え、必要となるスタジアムの数やトレーニングキャンプ地、宿泊施設の規模も飛躍的に増大します。これは、一国単独での開催が非常に困難になることを意味しています。
実際、2026年はアメリカ・メキシコ・カナダの3カ国共催、2030年も3大陸にまたがる共催の形をとっています。2034年のサウジアラビアは豊富な資金力を背景に単独開催を目指していますが、これは例外的なケースと言えるでしょう。2038年大会においても、基本的には「複数国による共同開催」が前提となると予想されます。
スタジアムには、開幕戦や決勝戦で8万人以上を収容できる巨大なキャパシティが求められます。このような条件を満たせる国は限られており、地理的に近接した国々がタッグを組んで立候補するスタイルが、今後のワールドカップ招致のスタンダードになっていくことは間違いありません。
アフリカ大陸からの挑戦?ガーナが掲げる2038年計画

「2038年 ワールドカップ」というキーワードで検索すると、意外な国の名前が浮上します。それは西アフリカの「ガーナ」です。サッカー強豪国として知られるガーナですが、国を挙げて2038年の開催を目指すという壮大なビジョンが存在することをご存知でしょうか。
ガーナの「40年開発計画」とワールドカップ
ガーナ政府は2018年頃、「国家開発40年計画(40-year National Development Plan)」という長期的なビジョンを策定しました。この計画書の中に、驚くべきことに「2038年にワールドカップを開催する」という目標が明記されていたのです。これは単なる夢物語ではなく、国家のインフラ整備と経済成長の集大成として、ワールドカップ招致を位置付けていることを示しています。
ブラック・スター・スタジアム構想
この計画の中で特に注目されたのが、近未来的なデザインの「ブラック・スター・スタジアム」の建設構想です。屋根全体をソーラーパネルで覆い、環境に配慮したサステナブルな巨大スタジアムを中心として、周辺にホテルやショッピングモール、鉄道網を整備するという具体的な青写真が描かれていました。
ガーナにとってワールドカップは、単なるスポーツイベント以上の意味を持ちます。大会開催を目標に定めることで、道路、空港、通信網などの社会基盤を一気に近代化させ、観光立国としての地位を確立しようという国家戦略なのです。実現すれば、西アフリカ地域全体の経済活性化にもつながると期待されています。
アフリカ開催の可能性と現実的な課題
しかし、現実的にガーナが2038年にワールドカップを開催できるかというと、そこには高いハードルが存在します。最大の課題はやはり「経済力」と「インフラ」です。48カ国参加の巨大イベントをホストするためには、FIFAの基準を満たすスタジアムが少なくとも12〜16箇所必要になります。現在のガーナの経済状況を鑑みると、これらを新設・改修するのは至難の業です。
また、近隣諸国との共同開催(西アフリカ共催)という案も考えられますが、周辺国の情勢や治安、インフラレベルを考慮すると、調整は難航が予想されます。さらに、2030年大会でモロッコ(アフリカ大陸)が開催国の一部となっているため、ローテーションルールの観点からも、2038年に再びアフリカに順番が回ってくる可能性は低いという見方もあります。
それでも、アフリカ大陸の急速な人口増加と経済成長のポテンシャルは無視できません。2038年までの10数年で劇的な発展を遂げれば、不可能な話ではなくなります。「アフリカンドリーム」として、世界中が注目する招致プランになることは間違いないでしょう。
過去の南アフリカ大会からの教訓
アフリカ大陸での開催といえば、2010年の南アフリカ大会が思い出されます。あの大会は「ブブゼラ」の音色とともに記憶されていますが、運営面では多くの課題も残しました。大会後のスタジアムの維持管理費が重荷になったり、期待されたほどの経済波及効果が地元貧困層に行き渡らなかったりといった問題です。
ガーナや他のアフリカ諸国が将来的に立候補する場合、この「ホワイトエレファント(無用の長物)」問題をどう解決するかが問われます。単に巨大なスタジアムを作るのではなく、大会後も市民が利用でき、収益を生み出す施設にできるか。サステナビリティ(持続可能性)が最重要視される現代のワールドカップにおいて、この計画の緻密さが招致の成否を分けることになります。
南アフリカ大会の成功と反省を生かし、より進化した「アフリカ開催」を提案できるかどうかが、ガーナの挑戦の鍵を握っています。FIFAもアフリカ市場の開拓には積極的であり、しっかりとした計画があれば支援を惜しまない姿勢を見せるかもしれません。
2038年開催の有力候補と予想される地域

ガーナのような野心的なプランがある一方で、FIFAのルールや現実的な開催能力に基づくと、どのような地域が有力候補となるのでしょうか。2030年、2034年の決定プロセスを踏まえ、2038年大会の開催地として可能性が高いシナリオを分析します。
北中米カリブ海地域の再登板はあるか (CONCACAF)
消去法で考えると、最も有力な候補の一つとして浮上するのが北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)です。2026年にアメリカ・メキシコ・カナダで開催されますが、2038年までには12年の期間が空きます。FIFAの「直近2大会を避ける」というルールを、2030年(欧州・アフリカ・南米)と2034年(アジア)で消化したと解釈すれば、順番的には再び北中米に回ってくる可能性があります。
特にアメリカは、スタジアムインフラがすでに完成されており、追加投資なしでいつでも開催できる能力を持っています。しかし、同じ地域で12年ぶりに開催することに対しては、「頻度が高すぎる」という批判が出ることも予想されます。その場合、まだ開催経験のない中米諸国を含めた広域開催などの新しい提案が必要になるかもしれません。
また、商業的な成功を最優先するFIFAにとって、巨大な北米市場は常に魅力的です。ルール上の解釈次第では、アメリカが再び主導する形での開催、あるいは2026年で開催都市とならなかった地域を中心とした開催案が出てくる可能性もゼロではありません。
オセアニア初開催の可能性 (OFC)
世界6大陸の中で、唯一男子ワールドカップを開催していないのがオセアニア地域(OFC)です。多様性と包括性を掲げるFIFAにとって、「オセアニア初開催」は非常に魅力的なスローガンとなり得ます。中心となるのはニュージーランドですが、スタジアムの収容人数や数の問題から、単独開催は不可能です。
ここで大きな壁となるのが、隣国オーストラリアの存在です。地理的にはオセアニアですが、サッカー連盟としてはアジア(AFC)に所属しています。2034年に同じAFCのサウジアラビアが開催するため、ルール上、オーストラリアは2038年の招致に関わることが難しくなります。頼みの綱であるオーストラリアと共催できないとなると、ニュージーランド単独や島嶼国との共催は現実味が薄れます。
ただし、FIFAが「オセアニアの発展」を特例として扱い、オーストラリアとの共催を認める、あるいはルールを変更するといったウルトラCがあれば話は別です。2023年の女子ワールドカップ(オーストラリア・ニュージーランド共催)が大成功を収めた実績は、オセアニア開催への大きな追い風となっています。
欧州・南米の扱いとルールの柔軟性
2030年大会は非常に特殊な形となりました。主開催国はスペイン・ポルトガル・モロッコですが、100周年を祝うためにウルグアイ・アルゼンチン・パラグアイでも試合が行われます。ここで議論になるのが、「南米は開催権を行使したとみなされるのか?」という点です。わずか数試合の開催で「南米開催」としてカウントされ、次の2大会(2034、2038)から締め出されるのは不公平だという声も南米側にはあります。
もしFIFAが「2030年の南米開催は例外的措置であり、ローテーションのカウントには含めない」という解釈を示せば、サッカー王国ブラジルやアルゼンチンを中心とした南米開催が2038年の本命になる可能性があります。南米の情熱的なサッカー文化は、ワールドカップに不可欠な要素だからです。
同様に、欧州(UEFA)についても議論の余地があります。サッカーの中心地である欧州で、12年間もワールドカップが開かれない(2018年ロシア以来、次は最短で2030年)ことへの不満は常にあります。2038年に欧州へ戻すために、FIFAがルールの解釈を柔軟に変更することは十分に考えられます。
共同開催が主流になる未来の形
どの地域で開催されるにせよ、2038年大会は「広域共同開催」になる可能性が高いでしょう。例えば「東南アジア諸国連合(ASEAN)」による共同開催案なども過去には話題になりました(ただし、2034年サウジ決定によりアジア枠は消滅しました)。
国境を越えた開催は、移動の負担やビザの問題、税制の違いなど運営上の複雑さを招きますが、一国にかかる経済的負担を分散できるメリットがあります。将来的には、地理的な近さよりも、飛行機での移動時間を基準にした「飛び地開催」のような新しい概念が生まれるかもしれません。
日本が再びワールドカップを開催する可能性はあるのか

私たち日本人にとって最も気になるのは、「日本で再びワールドカップが見られる日は来るのか」という点でしょう。2002年の日韓ワールドカップの熱狂をもう一度、と願うファンは多いはずです。しかし、2038年大会に関して言えば、残念ながら日本開催の可能性はほぼ「ゼロ」と言わざるを得ません。
日本サッカー協会の「JFAの約束2050」
日本サッカー協会(JFA)は、「JFAの約束2050」という長期目標を掲げています。その中には「2050年までにワールドカップを日本で開催し、日本代表が優勝する」という大きな夢が含まれています。つまり、日本は将来的に必ず招致に動く意思を持っています。
しかし、立ちはだかるのが先ほど説明した「ローテーションルール」です。2034年大会が同じアジアサッカー連盟(AFC)のサウジアラビアに決まったことで、アジア勢はその後2大会、つまり2038年と2042年の大会には原則として立候補できません。最短でも日本が立候補できるのは、2046年大会以降ということになります。
このルールがある限り、2038年に日本が開催国になることは物理的に不可能です。日本としては、2034年のサウジアラビア大会の成功を支援しつつ、アジアのサッカー市場価値を高め、2046年あるいは2050年の招致に向けて準備を進める期間となります。
単独開催と共同開催のメリット・デメリット
将来的に日本が招致に動く際、議論になるのが「単独開催か、共同開催か」という点です。2002年は韓国との共催でしたが、JFAは基本的に「単独開催」を目指す姿勢を見せてきました。しかし、48カ国開催となった今、単独開催には国内に12〜16箇所の4万人規模スタジアムが必要です。
現在、日本国内でワールドカップ決勝基準(8万人以上)を満たすのは新国立競技場や日産スタジアムなど数えるほどしかありません。地方のスタジアムを大規模改修する必要がありますが、少子高齢化が進む日本で、大会後の巨大スタジアムをどう維持するかは深刻な問題です。
現実的な解として、中国や韓国、あるいはオーストラリアなどとの「アジア・オセアニア広域共催」が選択肢に入るかもしれません。2038年は無理でも、未来の日本開催を実現するためには、近隣諸国との外交関係や協力体制を今から築いておく必要があります。
アジア枠の制約と2034年サウジ開催の影響
サウジアラビアが2034年大会の開催権を獲得したことは、日本にとって「招致の扉が当面閉ざされた」ことを意味すると同時に、「アジアでの開催実績が増える」というポジティブな側面もあります。中東での開催が成功すれば、アジア全体のサッカーインフラへの評価が高まります。
また、サウジアラビアのような資金力のある国が最新鋭のテクノロジーを導入することで、ワールドカップの運営基準が一気に引き上げられるでしょう。日本が将来開催する際には、それ以上の「おもてなし」や「技術革新」が求められることになります。2038年大会の行方は、日本が将来どのような大会を目指すべきかを知るための重要な指標となるのです。
近年のワールドカップ開催地決定の傾向と政治的背景

最後に、ワールドカップの開催地がどのように決まっていくのか、その裏側にあるトレンドや政治的な背景について触れておきましょう。純粋なサッカーの情熱だけでなく、様々な思惑が絡み合って開催地は決定されます。
インフラ整備とスタジアム要件の厳格化
FIFAが開催国に求める要件は年々厳しくなっています。スタジアムの収容人数だけでなく、VIP席の数、メディアセンターの規模、ファンのための交通アクセス、宿泊施設の部屋数など、膨大な基準「ブック(入札要項)」が存在します。これらすべてをクリアできる国は、世界でも限られています。
特に近年重視されているのが「デジタルインフラ」と「セキュリティ」です。世界中から数百万人が訪れるイベントを安全かつスムーズに運営するためには、最先端のIT技術と高度な治安維持能力が不可欠です。2038年の開催国には、これらを国家レベルで保証できる安定性が求められます。
サステナビリティと環境への配慮
現代のメガイベントにおいて避けて通れないのが環境問題です。巨大なスタジアム建設によるCO2排出や、大量の観客移動による環境負荷は批判の対象となります。カタール大会ではスタジアムの冷房設備によるエネルギー消費が議論になりました。
マネーゲーム化する招致合戦の現状
ワールドカップ開催は、巨額の放送権料やスポンサー収入が動く巨大ビジネスです。開催国にとっても、建設需要や観光収入による経済効果は計り知れません。そのため、招致活動は国家の威信をかけた「外交戦」の様相を呈します。
サウジアラビアのように国家ファンドを背景に強力なロビー活動を行う国もあれば、アメリカのように巨大な市場規模を武器にする国もあります。2038年の招致レースも、純粋な競技環境だけでなく、FIFAへの貢献度や政治的なパワーバランスが大きく影響することは間違いありません。
ファン体験と開催国の文化発信
一方で、FIFAは「ファンフェスティバル」の充実など、現地を訪れるサポーターの体験価値を重視しています。安全に楽しめ、開催国独自の文化や食事を味わえる環境が整っているかが重要です。2038年の開催地候補は、単にスタジアムがあるだけでなく、「世界中のファンを歓迎し、楽しませる文化的な土壌」があるかどうかも厳しく審査されるでしょう。
まとめ:ワールドカップ開催国2038の行方に注目
2038年のワールドカップ開催国について、現時点での情報を整理し、予想してきました。ポイントを振り返りましょう。
【2038年開催国予想のポイント】
・FIFAのルール:「直近2大会(欧州・アフリカ・南米・アジア)は不可」が原則。
・有力候補:ルール通りなら北中米(CONCACAF)の再開催か、特例での南米・欧州。
・大穴候補:国家計画を持つガーナ(アフリカ)や、未開催地域のオセアニア。
・日本の可能性:アジア開催直後のため、2038年の開催は不可能。
現時点では、2034年までの開催地が固まったことで、2038年は「空白地帯」となっています。FIFAが既存のルールを厳格に守るのか、それとも柔軟に変更して新しい地域にチャンスを与えるのかによって、未来のサッカー地図は大きく変わります。
ガーナのように国を挙げて夢を見る国が現れるのも、ワールドカップという大会が持つ魔力です。決定はまだ先の話ですが、水面下での駆け引きはすでに始まっています。2038年、世界中のサッカーファンがどこに集い、熱狂するのか。これからのニュースにぜひ注目してみてください。




