サッカープレスとは?基本の種類から効果的なかけ方まで徹底解説!

ルールと戦術を学ぶ

サッカーの試合を見ていると「プレスが効いてますね!」「良いプレスだ!」といった解説を耳にすることがありますよね。なんとなく「相手にプレッシャーをかけることかな?」とイメージはできても、具体的にどのような戦術なのか、どんな種類があるのかまでは知らない方も多いのではないでしょうか。

現代サッカーにおいて、プレスは試合の勝敗を左右する非常に重要な戦術です。 守備の基本であると同時に、実は攻撃の第一歩とも言える奥深いものなのです。 この記事では、そんなサッカープレスについて、基本的な意味から具体的な種類、そして効果的なプレスの方法まで、サッカーを最近見始めた方にも分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、サッカー観戦がもっと面白くなること間違いなしです!

サッカープレスとは?基本をわかりやすく解説

まずはじめに、「サッカープレス」がどのようなものなのか、その基本的な概念と重要性について見ていきましょう。

プレスとは「圧力をかける」守備戦術

サッカーにおけるプレス(プレッシング)とは、相手チームのボールを持っている選手に対して、守備側の選手が積極的に近づいていき、プレーの自由を奪うためにプレッシャー(圧力)をかける守備戦術のことです。 英語の「Press(押す、圧力をかける)」が語源となっています。

ただ単にボールを奪いに行くだけでなく、相手に時間とスペースを与えないことで、パスやドリブルの選択肢を制限し、ミスを誘うことを目的としています。 相手を特定のエリアに追い込んだり、パスコースを限定したりすることで、チーム全体で計画的にボールを奪い、攻撃へとつなげていくのです。 そのため、単なる守備戦術ではなく、試合の主導権を握るための「攻撃的な守備」とも言えるでしょう。

なぜプレスが重要視されるのか?

現代サッカーでは、このプレス戦術が非常に重要視されています。その理由は、より相手ゴールに近い位置でボールを奪うことができれば、すぐに大きなチャンスにつながるからです。

守備が整う前の相手ゴール前でボールを奪えれば、短いパス数本でシュートまで持ち込める「ショートカウンター」が可能になります。 このように、プレスは守備から攻撃への切り替えをスムーズにし、効率的に得点を狙う上で欠かせない戦術なのです。

また、常に相手にプレッシャーをかけ続けることで、相手チームの選手は精神的にも肉体的にも消耗し、思い通りのプレーができなくなります。 これにより、試合全体のペースを自分たちのものに引き寄せることができるのです。

プレスの歴史と進化

プレスの概念は、1970年代のオランダ代表が用いた「トータルフットボール」の中で生まれた「ボール狩り」が原型とされています。 これは、ボールを失ったらすぐに奪い返すという考え方で、当時の守備の常識を覆すものでした。

その後、1980年代後半から90年代にかけて、ACミランを率いたアリーゴ・サッキ監督が「ゾーンプレス」を完成させ、世界を席巻します。 チーム全体が連動してコンパクトな陣形を保ち、組織的にボールを奪うこの戦術は、現代のプレス戦術の基礎を築きました。

そして近年では、ユルゲン・クロップ監督が有名にした「ゲーゲンプレス」のように、ボールを奪われた瞬間に即座にプレスをかけ返す戦術が主流になるなど、プレス戦術は今もなお進化を続けています。

サッカープレスの主な種類と特徴

サッカーのプレスは、どのエリアからプレッシャーをかけ始めるかによって、大きく3つの種類に分けられます。 それぞれに特徴があり、チームの戦術や試合状況によって使い分けられます。

フォアチェック(ハイプレス)

ハイプレスは、相手陣内の深い位置、つまり相手ゴールに近い場所から積極的にプレッシャーをかける攻撃的な守備戦術です。 相手のディフェンダーやゴールキーパーがボールを持っている段階からプレスを仕掛け、パスの組み立て(ビルドアップ)を妨害します。

成功すれば、非常に高い位置でボールを奪えるため、得点のチャンスに直結しやすいという大きなメリットがあります。 しかし、前線の選手がプレスに行く分、自陣のディフェンスラインの裏には広大なスペースが生まれやすく、そこを相手に突かれると一気にピンチになるというリスクも抱えています。 また、常に前線から走り回るため、選手の体力消耗が激しいのも特徴です。

ミドルプレス

ミドルプレスは、ピッチの中盤、ハーフウェイライン付近で守備のブロックを形成し、相手がそこに進入してきたタイミングでプレスを開始する戦術です。 ハイプレスほど前がかりにならず、自陣深くに引きこもるわけでもない、バランスの取れた守備方法と言えるでしょう。

ハイプレスに比べて体力的な負担が少なく、守備の陣形を保ちやすいため、安定した試合運びが可能です。 相手にある程度ボールを前進させますが、中盤でボールを奪えれば、素早いカウンター攻撃につなげることができます。現代サッカーでは、このミドルプレスを基本としながら、状況に応じてハイプレスを仕掛けるチームが多く見られます。

リトリート(ロープレス)

リトリート(ロープレス)は、自陣の深い位置まで全選手が戻り、ゴール前を固めて守る戦術です。 相手にボールを保持される時間は長くなりますが、ゴール前に密集した守備ブロックを築くことで、相手に決定的なスペースを与えず、シュートチャンスを作らせないことを狙いとします。

この戦術は、特に相手チームの攻撃力が高い場合や、リードを守り切りたい試合終盤などで用いられます。 失点のリスクは低いですが、相手ゴールまでが遠くなるため、ボールを奪ってもカウンター攻撃につなげるのが難しくなるという側面もあります。

プレスの種類 プレスを開始する位置 メリット デメリット
ハイプレス 相手陣内の深い位置 ・高い位置でボールを奪え、チャンスになりやすい
・相手の攻撃の組み立てを妨害できる
・体力消耗が激しい
・DFラインの裏のスペースを突かれやすい
ミドルプレス ピッチ中央付近 ・攻守のバランスが取りやすい
・カウンターを狙いやすい
・相手にボールを持たれる時間が増える
・中途半端になる可能性がある
ロープレス 自陣の深い位置 ・失点のリスクが低い
・スペースを消して堅実に守れる
・攻撃に転じにくい
・試合の主導権を握られやすい

ゲーゲンプレス(カウンタープレス)

ゲーゲンプレスは、ドイツ語で「Gegen(反対の、対抗する)」を意味し、自分たちがボールを失った瞬間に、即座に相手にプレスをかけてボールを奪い返す戦術のことです。 通常、ボールを失うと一度自陣に戻って守備ブロックを整えますが、ゲーゲンプレスではその逆を行います。

ボールを奪われた直後は、相手チームも攻撃へ切り替えるため陣形が乱れていることが多く、そこを突くことでボールを奪い返しやすいという理論に基づいています。 高い位置でボールを奪い返せれば、相手の守備が整う前にショートカウンターを仕掛けることができ、非常に効果的な攻撃手段となります。 リヴァプールを率いたユルゲン・クロップ監督が得意とする戦術として有名です。

効果的なプレスの実行方法

プレスは、ただ闇雲にボールを追いかけるだけでは成功しません。チーム全体で意思統一を図り、組織的に動くことが不可欠です。 ここでは、効果的なプレスを実行するための重要なポイントを解説します。

プレス開始のスイッチ役

効果的なプレスには、「いつからプレスを始めるか」というタイミングをチーム全体で共有する必要があります。 そのきっかけとなるのが「スイッチ役」あるいは「トリガー」と呼ばれるプレーです。

例えば、「相手のセンターバックからサイドバックへパスが出た時」や「相手選手が後ろ向きでボールを受けた時」など、あらかじめチーム内でルールを決めておきます。 このスイッチが入ったら、一番近くにいる選手(主にフォワード)が勢いよくアプローチを開始し、それを合図に周りの選手も連動してプレスをかけていきます。

このスイッチが明確であるほど、チーム全体の動きがスムーズになり、プレスの精度が高まります。

チーム全体での連動

プレスは、一人の選手が頑張っても簡単に突破されてしまいます。 前線、中盤、ディフェンスラインの選手たちが、それぞれの役割を果たしながら連動することが最も重要です。

例えば、フォワードの選手が相手ディフェンダーにプレスをかけたなら、中盤の選手は次にパスが出てきそうなコースを予測してポジションを取り、ディフェンスラインは全体の状況を見ながらラインを押し上げてチーム全体をコンパクトに保ちます。 このように、選手間の距離感を適切に保ち、スペースを埋めながら組織として動くことで、相手の逃げ場をなくしていくのです。

相手の逃げ道を塞ぐコース限定

プレスの目的は、必ずしもボールを奪い切ることだけではありません。 相手のパスコースやドリブルの進路を限定し、プレーエリアを狭めていくことも非常に重要です。

例えば、サイドに相手を追い込んで、タッチラインを「もう一人のディフェンダー」として利用したり、複数の選手で囲い込んでパスの選択肢を奪ったりします。 相手が苦し紛れに出したパスを、別の選手が狙って奪うという形が理想的です。どこに相手を追い込み、どこでボールを奪うのか、チームとしての狙いを共有しておくことが成功の鍵となります。

適切な距離感と強度

相手選手にプレッシャーをかける際、適切な距離感を保つことが大切です。近すぎると簡単にかわされてしまいますし、遠すぎるとプレッシャーがかかりません。 相手が焦りを感じるものの、簡単には突破できない距離まで素早く寄せることが求められます。

また、プレスの強度も重要です。常に全力でプレスをかけると体力が持たないため、試合状況や相手の位置に応じて強度をコントロールする必要があります。ボールを奪いに行く場面と、パスコースを限定して相手の攻撃を遅らせる場面を使い分ける判断力も、良いプレスには欠かせません。

ポジション別!プレスにおける役割

チーム全体で連動して行うプレスですが、ポジションごとに求められる役割は異なります。それぞれのポジションがどのように関わっているのかを見ていきましょう。

フォワード(FW)の役割

フォワード(FW)は、チームの「第一守備者」として、プレスを開始する上で非常に重要な役割を担います。 相手のディフェンダーやゴールキーパーに最初にプレッシャーをかけ、相手の攻撃の組み立てを限定する「スイッチ役」となることが多いです。

FWのプレスによって、相手は自由にパスを出すことができなくなり、サイドに追いやられたり、苦し紛れの長いボールを蹴らせたりすることができます。 たとえボールを奪えなくても、FWが前線から tirelessly(疲れを知らずに)相手を追い回すことで、後ろの選手たちが守備をしやすくなるのです。かわされることを恐れずに、積極的にアプローチすることが求められます。

ミッドフィルダー(MF)の役割

ミッドフィルダー(MF)は、プレスの心臓部とも言えるポジションです。FWが限定したパスコースの先に待ち構え、ボールを奪い取る役割を担います。

また、相手の中盤の選手にプレッシャーをかけ、攻撃の起点を作らせないことも重要です。ピッチの中央で広い範囲をカバーし、常に周りの状況を把握しながら、FWのプレスとDFラインの動きをつなぐ潤滑油のような働きが求められます。ボールを奪った後には、すぐに攻撃に切り替える起点にもなるため、攻守両面での貢献が不可欠です。

ディフェンダー(DF)の役割

ディフェンダー(DF)は、最後の砦としてゴールを守るのが主な仕事ですが、プレスにおいても重要な役割があります。前線の選手たちがプレスをかけているのに合わせて、ディフェンスライン全体を押し上げ、チーム全体をコンパクトに保つことが求められます。

ラインを高く設定することで、FWとMF、DFの間のスペース(ライン間)が狭まり、相手がパスを受けるスペースをなくすことができます。 また、相手が前線のプレッシャーを嫌ってロングボールを蹴ってきた際の対応や、ラインの裏へ抜け出そうとする相手選手への対応もDFの重要な仕事です。常に的確なポジショニングと、周りの選手との連携が不可欠となります。

プレス戦術のメリットとデメリット

非常に効果的なプレス戦術ですが、もちろん良い面ばかりではありません。ここでは、プレス戦術がもたらすメリットと、それに伴うデメリットを整理してみましょう。

メリット:高い位置でボールを奪える

プレス戦術、特にハイプレスの最大のメリットは、相手ゴールに近い高い位置でボールを奪えることです。 攻撃は、相手ゴールに近い位置から始める方が得点の可能性は格段に高まります。

相手の守備陣形が整う前にボールを奪うことができれば、少ない人数と短い時間でゴールに迫る「ショートカウンター」を仕掛けることができます。 これは、守備から一転して大きなチャンスを生み出す、非常に効率的な攻撃方法です。

メリット:主導権を握りやすい

常に相手にプレッシャーをかけ続けることで、相手チームに時間的、精神的な余裕を与えません。 これにより、相手はパスミスやトラップミスをしやすくなります。

ボールを持っている時間(ポゼッション率)が長くなくても、試合の主導権を握ることが可能です。 相手のやりたいサッカーをさせず、自分たちのペースで試合を進められることは、勝利を手繰り寄せる上で大きなアドバンテージとなります。

デメリット:体力消耗が激しい

プレス戦術、特にハイプレスは、選手の運動量が非常に多くなるため、体力の消耗が激しいというデメリットがあります。 90分間、常に高い強度でプレスをかけ続けることは不可能です。

試合終盤になると足が止まってしまい、プレスの連動性が失われ、相手にスペースを与えてしまう危険性があります。そのため、試合を通してプレスの強度をコントロールしたり、選手交代をうまく活用したりするなどのチームマネジメントが重要になります。

デメリット:裏のスペースを突かれやすい

プレスをかけるために選手が前がかりになるということは、自陣のディフェンスラインの背後に広大なスペースが生まれやすいことを意味します。

もし、前線のプレスを巧みにかわされ、その裏のスペースに質の高いパスを通されてしまうと、一気に決定的なピンチを迎えることになります。 特に足の速い相手フォワードがいる場合、このリスクはさらに高まります。プレスに行く選手と、背後のスペースをカバーする選手の連携が少しでも乱れると、致命的な弱点となり得ます。

まとめ:サッカープレスを理解して観戦をもっと楽しく

この記事では、現代サッカーに欠かせない「サッカープレス」について、その基本的な意味から種類、そして具体的な方法までを解説してきました。

  • サッカープレスとは、相手にプレッシャーをかけて自由を奪う「攻撃的な守備」であること。
  • プレスには、開始位置によって「ハイプレス」「ミドルプレス」「ロープレス」といった種類があること。
  • ボールを失った瞬間に奪い返す「ゲーゲンプレス」という進化形の戦術もあること。
  • 効果的なプレスには、チーム全体の連動と意思統一が不可欠であること。
  • 大きなメリットがある一方で、体力の消耗や背後のスペースというリスクも伴うこと。

これらのポイントを押さえることで、試合の中で各チームがどのような狙いで守備をしているのか、選手の動き一つひとつにどんな意味が込められているのかが分かり、サッカー観戦がより深く、面白くなるはずです。次にサッカーを見る機会があれば、ぜひ選手たちの「プレス」に注目してみてください。

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