サッカーの退場とは?レッドカードのルールや影響をわかりやすく解説

サッカーの退場とは?レッドカードのルールや影響をわかりやすく解説
サッカーの退場とは?レッドカードのルールや影響をわかりやすく解説
ルールと戦術を学ぶ

サッカーの試合中、スタジアムの空気が一瞬にして凍りつく瞬間があります。それは、審判がポケットから「レッドカード」を取り出したときです。たった一枚のカードが、試合の流れを劇的に変え、時にはシーズンの行方さえも左右してしまうことがあります。選手にとってもチームにとっても、退場処分は最も避けたい事態の一つですが、ルールを深く理解している人は意外と少ないかもしれません。「なぜ今のが退場なの?」「次の試合はどうなるの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

この記事では、サッカーにおける「退場」について、その基準から試合への影響、さらには出場停止のルールまでを徹底的に解説します。決定的な得点機会の阻止(DOGSO)や、監督へのカード提示といった少しマニアックなルールも、噛み砕いてお伝えします。これを知れば、レッドカードが出たときのドラマをより深く味わえるようになるはずです。

サッカーで退場になる主な理由とレッドカードの基準

サッカーにおいて審判が選手に退場を命じる場合、必ず「レッドカード」が提示されます。これは単なる罰則ではなく、試合の公平性と選手の安全を守るための重要なルールです。では、具体的にどのようなプレーや行為が退場の対象となるのでしょうか。ここでは、代表的な4つのケースについて詳しく見ていきましょう。

警告が2回累積した場合

最も一般的な退場の理由は、1つの試合中に「イエローカード(警告)」を2枚受けることです。サッカーでは、イエローカードは「次は気をつけて」という注意信号ですが、これが2回重なると「これ以上はプレーさせられない」という判断になり、自動的にレッドカードが提示されます。

1枚目の警告は、ラフプレーや遅延行為、異議などで出されることが多いですが、選手はその後、常に「あと1回で退場」というプレッシャーの中でプレーしなければなりません。2枚目の警告は、必ずしも悪質なファウルである必要はなく、戦術的なファウルや軽率なハンドでも出されることがあります。このケースでの退場は、累積によるものなので、一発退場に比べれば出場停止処分は軽くなる傾向がありますが、試合中のチームへのダメージは変わりません。

著しく不正なプレー

「著しく不正なプレー」とは、相手選手の安全を脅かすような危険なファウルのことを指します。ボールにプレーしようとしていたとしても、過度な力を用いたり、無謀なタックルを行ったりした場合がこれに該当します。

具体的には、足の裏を見せて相手の足首や膝に向かってスライディングしたり、スピードに乗った状態で制御不能なタックルを仕掛けたりする行為です。審判は、そのプレーが「相手に怪我をさせる危険性が高いかどうか」を瞬時に判断します。もし危険だと判断されれば、イエローカードを挟まずに即座にレッドカード(一発退場)が提示されます。これは選手のキャリアを守るために非常に厳しくジャッジされる項目です。

乱暴な行為と侮辱的な発言

ボールとは関係のないところで行われる暴力行為や、スポーツマンシップに反する言動も退場の対象です。「乱暴な行為」には、プレーが切れている時に相手を殴る、蹴る、頭突きをする、あるいは唾を吐きかけるといった行為が含まれます。

また、審判や相手選手、観客に対して攻撃的、侮辱的、または下品な発言や身振りを行った場合もレッドカードが出されます。特に審判への暴言は厳しく取られる傾向にあり、「熱くなりすぎてつい言ってしまった」では済まされません。これらはサッカーという競技の品位を損なう行為として、通常のファウルよりも重い出場停止処分が科されることが一般的です。

決定的な得点機会の阻止(DOGSO)

近年、特に注目されているのが「DOGSO(ドグソ)」と呼ばれるルールです。これは “Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity” の略で、「決定的な得点機会の阻止」を意味します。守備側の選手がファウルやハンドによって、相手のほぼ確実なゴールチャンスを潰した場合に適用されます。

DOGSOが成立する4つの要件
以下の4つがすべて揃ったと審判が判断した場合、DOGSOとなります。
1. 距離:反則が起きた場所とゴールの距離が近い。
2. 方向:プレーがゴール方向に向かっている。
3. 守備側競技者の位置と数:ファウルをした選手以外にカバーできるDFがいない、または遅れている。
4. ボールのコントロール:攻撃側の選手がボールをコントロールできる、またはその可能性が高い。

以前は、ペナルティエリア内でこのDOGSOにあたるファウルをすると、「PK献上」「退場」「次節出場停止」という非常に重い「三重罰」が科されていました。しかし現在はルールが改正され、ペナルティエリア内でボールに対して正当にチャレンジしようとした結果のファウルであれば、レッドカードではなくイエローカードに軽減されるケースが増えています(三重罰の軽減)。ただし、ハンドやホールディング、押す行為など、ボールへのチャレンジとは言えないファウルの場合は、エリア内であってもレッドカードとなります。

試合中に退場者が出た場合のチームへの影響と対策

退場者が出ると、そのチームは残りの時間を「10人」で戦わなければなりません。サッカーにおいて1人の差は非常に大きく、戦術や選手の心理に多大な影響を与えます。ここでは、数的不利になったチームがどのような状況に追い込まれ、どう対応するのかを解説します。

数的不利による戦術の変更

1人少なくなると、これまで通りの戦術を実行することはほぼ不可能になります。最も一般的な対策は、守備を固める「専守防衛」へのシフトです。攻撃の人数を削ってでも守備ブロックを形成し、相手にスペースを与えないようにして、失点を防ぐことを最優先にします。

例えば、4-4-2のフォーメーションだった場合、4-4-1にしてフォワードを1人減らし、残った1人のフォワードによるカウンター攻撃やセットプレーでの一発を狙う形が多く見られます。ボール支配率(ポゼッション)は相手に譲らざるを得なくなるため、ひたすら耐える時間が続き、観ている側も息が詰まるような展開になります。逆に、負けている状況で退場者が出た場合は、リスクを冒してでも攻撃に出なければならず、さらに失点する可能性が高まるというジレンマに陥ります。

交代枠の使い方とGKが退場した場合

退場者が出た直後、監督は非常に難しい決断を迫られます。守備のバランスを整えるために、攻撃的な選手(フォワードなど)をベンチに下げて、守備的な選手(ディフェンダー)を投入することが多いですが、これは「得点の可能性」を自ら削ることを意味します。

さらに深刻なのが、ゴールキーパー(GK)が退場になった場合です。GKは必ず置かなければならないため、フィールドプレーヤーを1人ベンチに下げ、控えのGKを投入する必要があります。つまり、チームは「退場による1人減」と「交代枠の消費」という二重のダメージを負うことになります。もし交代枠をすべて使い切った後にGKが退場した場合は、残っているフィールドプレーヤーの誰かが急遽GKのユニフォームを着てゴールを守らなければなりません。これは非常に稀ですが、試合会場が大きく盛り上がる(そしてチームにとっては絶望的な)シーンです。

残された選手の精神的負担と運動量

数的不利は、残された10人の選手に肉体的かつ精神的な限界を強います。単純計算でも、11人でカバーしていたエリアを10人で守るわけですから、一人当たりの走行距離は必然的に増えます。特にサイドの選手やボランチの選手は、攻撃と守備の両方で普段以上の運動量が求められ、試合終盤には足が止まってしまうことも珍しくありません。

精神的なプレッシャーも見逃せません。「ミスをして失点したら終わりだ」という緊張感が続く中で、相手の猛攻を凌ぎ続けなければならないストレスは計り知れません。しかし、この逆境がチームの結束力を高めることもあります。「1人少ない分、全員でカバーしよう」という強い意志が生まれ、数的不利を跳ね返して引き分けや勝利をもぎ取った試合は、サポーターの間で長く語り継がれる伝説となります。

退場処分を受けた選手に科される出場停止と罰金

レッドカードの効力は、その試合だけで終わりではありません。退場処分を受けた選手には、その後の試合への出場停止処分や、場合によっては罰金などのペナルティが科されます。このルールはリーグや大会によって細かく異なりますが、Jリーグなどの一般的な基準をもとに解説します。

基本的な出場停止試合数

レッドカードを受けた選手は、原則として「次の1試合」に出場することができません。これは「自動的出場停止」と呼ばれ、どんな理由での退場であっても最低限適用されるルールです。

例えば、イエローカード2枚での退場や、決定機阻止(DOGSO)による一発退場の多くは、この1試合のみの出場停止で済むことが一般的です。しかし、これが全てではありません。競技規則やリーグの規律委員会は、退場の理由となったプレーの悪質性を審査し、必要であれば出場停止期間を延長することができます。つまり、「最低でも1試合は出られない」というのがスタートラインなのです。

悪質なファウルに対する追加処分

「著しく不正なプレー」や「乱暴な行為」で一発退場となった場合、1試合の停止だけでは済まないケースがほとんどです。Jリーグなどのプロリーグには「規律委員会」という組織があり、試合映像を検証して処分の重さを決定します。

処分の目安(例)
・著しく不正なプレー(危険なタックルなど):1〜2試合以上の停止
・乱暴な行為(打つ、蹴るなど):2〜3試合以上の停止
・審判への侮辱や唾吐き行為:数試合〜長期間の停止

このように、プレーが悪質であればあるほど、チームを離脱する期間は長くなります。過去には、非常に危険な暴力行為に対して、数ヶ月単位の出場停止処分が下された事例もあります。これは選手個人のキャリアに傷をつけるだけでなく、主力選手を長期間欠くことになるチームにとっても大打撃となります。

罰金の有無とクラブ独自の処分

プロサッカーの世界では、出場停止に加えて「罰金(制裁金)」が科されることがあります。Jリーグの場合、反則の内容や繰り返しの度合いによって、リーグからクラブや選手個人に対して罰金が請求される規定があります。

また、リーグからの公式な処分とは別に、所属クラブが独自に処分を下すこともあります。例えば、チームの規律を著しく乱すような退場だった場合、クラブから選手に対して「練習参加禁止」や「厳重注意」、「減俸」などが言い渡されることがあります。これは、「チームの一員としての責任」を重く見ているためです。サポーターやスポンサーへの影響も考慮し、クラブとして厳しい姿勢を示す必要があるのです。

異なる大会への持ち越しルール

出場停止処分は、基本的には「その退場処分を受けた大会(リーグ戦ならリーグ戦)」の直近の試合で消化されます。しかし、ここには少し複雑な「持ち越し」や「振り替え」のルールが存在します。

例えば、リーグ戦の最終節でレッドカードをもらい、そのシーズン中に消化すべき試合がなくなってしまった場合、その処分は翌シーズンの開幕戦に持ち越されます。また、カップ戦で退場になり、チームがその試合で敗退してしまった場合、出場停止処分を消化する次の試合が存在しません。この場合、規定によっては「直近の同レベルの公式戦(リーグ戦など)」に処分が振り替えられることがあります。つまり、「カップ戦で退場したから、リーグ戦の大事な試合に出られない」という事態が起こり得るのです。これはチームのマネジメントにおいて非常に注意が必要なポイントです。

監督やベンチスタッフも退場?意外と知らないルール

退場処分を受けるのは、フィールドで戦っている11人の選手だけではありません。ベンチに座っている監督やコーチ、スタッフもレッドカードを提示され、退場を命じられることがあります。近年、このルールは明確化され、ベンチ内の規律も厳しくチェックされるようになっています。

監督・コーチへのカード提示基準

以前は監督に対して口頭での注意や退席処分が行われていましたが、現在では選手同様にイエローカードやレッドカードがはっきりと提示されます。これにより、観客や視聴者にも「監督が警告を受けたこと」が分かりやすくなりました。

監督がカードを受ける主な理由は「執拗な異議」です。判定に対してテクニカルエリア(監督が指示を出せる範囲)を飛び出して猛抗議したり、審判に暴言を吐いたりした場合が対象となります。また、プレーの妨害(ボールを蹴り入れるなど)や、相手チームのベンチに向けた挑発行為、ペットボトルを蹴り飛ばすといった暴力的な振る舞いもレッドカードの対象です。さらに、「誰がやったか特定できないが、ベンチから暴言が飛んだ」という場合、その責任者である監督にカードが出されることもあります。

退場後の監督の居場所と禁止事項

監督がレッドカードを受けて退場となった場合、選手と同じく、即座にフィールド周辺から立ち去らなければなりません。通常はロッカールームに下がるか、スタジアムの観客席(スタンド)へ移動することになります。

ここで重要なのが、退場後は「一切の指揮を執ってはいけない」というルールです。ベンチに残ったコーチに無線や携帯電話で指示を送ることは固く禁じられています。ハーフタイムにロッカールームへ行って選手を鼓舞することも許されません。つまり、退場した瞬間に監督はただの「見守る人」となり、戦術の変更や選手交代の判断は、すべて残されたアシスタントコーチなどに委ねられることになります。これは試合中のチームにとって、選手を一人失うのと同じくらい大きな混乱を招く要因となります。

ベンチ入りメンバーが足りなくなった場合

非常に稀なケースですが、監督だけでなく、アシスタントコーチや他のスタッフも次々と退場処分を受け、ベンチに指揮を執れる大人が誰もいなくなってしまったらどうなるのでしょうか。

この場合、ルール上はチーム内の誰か(例えばキャプテンや、選手兼任コーチとして登録されているメンバー)がその役割を代行することになります。しかし、現実的にはそこまで状況が悪化する前に試合がコントロール不能として没収試合になる可能性もありますが、基本的には「ベンチに資格を持つ指導者がいなくなる」という緊急事態に備え、各チームはスタッフの行動にも細心の注意を払っています。監督の退場は、単にその人がいなくなるだけでなく、チームの頭脳を失うことを意味するのです。

サッカーの退場に関するよくある疑問と特殊なケース

ここまで退場の基本的なルールを見てきましたが、サッカーには「こんな時はどうなるの?」という疑問が尽きません。最後に、退場に関する豆知識や、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が関わる現代ならではのケースなど、知っておくとさらにサッカー観戦が面白くなる情報をご紹介します。

1チーム何人まで退場できるのか

もし、一つのチームから次々と退場者が出た場合、試合はいつまで続けられるのでしょうか。ルール上、サッカーの試合が成立するためには、各チームに最低「7人」の選手が必要です。

つまり、1チームから最大で4人までの退場は許容されますが、5人目の退場者が出た瞬間に、そのチームの選手数は6人となり、試合続行不可能となります。この場合、試合はそこで打ち切られ「没収試合」として扱われます。一般的には、退場者を出したチームの「0-3」の敗戦という扱いになることが多いです。実際にプロの試合でここまで退場者が出ることは極めて稀ですが、南米のリーグやアマチュアの試合などで、乱闘騒ぎによって5人以上が退場し、試合終了となった事例が存在します。

試合終了後のレッドカード

試合終了のホイッスルが鳴ったからといって、もうカードが出ないわけではありません。審判の権限は、試合前後のピッチ周辺にいる間も有効です。

試合が終わった直後、判定に納得がいかない選手や監督が審判に詰め寄って暴言を吐いたり、相手選手と揉め事を起こしたりした場合、その場でレッドカードが提示されることがあります。この場合、すでに試合は終わっているため数的不利にはなりませんが、次節以降の出場停止処分は通常通り適用されます。「試合が終わったから何をしてもいい」わけではなく、最後までスポーツマンとしての振る舞いが求められるのです。

VAR(ビデオ判定)による退場の確認

現代サッカーでは、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の存在が退場判定に大きく関わっています。VARはすべてのプレーに介入するわけではありませんが、「一発退場(レッドカード)に相当するかどうか」は介入の対象となる重要な項目です。

VARが介入する主なケース

・審判がレッドカードを出さなかったが、映像で見ると一発退場に値する危険な行為だった場合(見逃しの修正)。

・審判がレッドカードを出したが、映像で見るとそこまで悪質ではなかった場合(イエローへの変更や取り消し)。

ただし、原則として「2枚目のイエローカード」に対してはVARは介入しません(人違いの場合を除く)。あくまで「一発レッド」の判断が正しかったかどうかがチェックされます。観戦中に「今のファウルは危ない!」と思った直後、主審が耳に手を当ててVARと交信し始め、その後にレッドカードが提示されるシーンは、現代サッカーならではの緊張感ある瞬間と言えます。

まとめ:サッカーの退場ルールを理解して観戦を楽しもう

まとめ
まとめ

サッカーにおける「退場」は、単に選手が一人減るというだけでなく、試合の戦術、選手の心理、そして次の試合に向けたチーム編成にまで多大な影響を及ぼす重大な出来事です。イエローカードの累積による退場、危険なプレーによる一発退場、そしてDOGSO(決定的な得点機会の阻止)という専門的な基準まで、退場にはさまざまな理由とドラマがあります。

また、選手だけでなく監督も退場の対象となることや、出場停止が及ぼすシーズンの行方への影響を知ることで、ピッチ上の攻防をより深く読み解くことができるようになります。レッドカードが出た瞬間、チームはどう動くのか、監督はどう修正するのか。そんな視点を持つことで、サッカー観戦の面白さは何倍にも広がるはずです。次にレッドカードを目にしたときは、ぜひこの記事で紹介したルールや背景を思い出してみてください。

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