サッカーを頑張っているお子さんを持つ保護者の方や、さらなる高みを目指すジュニア選手にとって「トレセン」という言葉は非常に気になるキーワードではないでしょうか。サッカートレセンとは、日本サッカー協会(JFA)が主導する「個の育成」を目的とした選抜育成システムのことです。
地域で実力のある選手たちが集まり、質の高い指導を受けることで、将来の日本代表を担うような人材を育てるための仕組みとなっています。しかし、初めて選考会の案内をもらった時や、周りで話題が出た時には「具体的にどんなことをするの?」「選ばれるためには何が必要なの?」と疑問に思うことも多いはずです。
この記事では、サッカートレセンとはどのような制度なのか、その仕組みやレベルの違い、選考で見られるポイント、そして参加するメリットについて詳しく解説します。これからトレセンを目指す方や、制度を詳しく知りたい保護者の方に役立つ情報を丁寧にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
サッカートレセンとは?日本独自の選抜制度と仕組みを理解しよう

サッカートレセンとは、正式名称を「トレーニングセンター制度」と言います。これは日本サッカー協会が、全国各地に点在する才能ある選手たちを早期に発掘し、良い環境で指導することを目的に設立したシステムです。普段のチームでの練習とは別に、選ばれた選手だけで集まって質の高いトレーニングを行います。
この制度の最大の特徴は、チームとしての強さを競うのではなく、あくまで「選手個人のレベルアップ」に焦点を当てている点にあります。上手な選手同士が競い合うことで刺激を受け、また専門的な知識を持つ指導者からアドバイスをもらうことで、選手の隠れた才能をさらに引き出すことが期待されています。
【トレセン制度のポイント】
・日本サッカー協会(JFA)が主催する個の育成システム
・普段のチーム活動とは別に行われる選抜活動
・ピラミッド構造になっており、実力に応じてステップアップする
日本サッカー協会がトレセン制度を導入している目的
トレセン制度が導入されている最大の目的は、世界で戦えるトッププレーヤーを育成することです。かつての日本サッカー界では、各チームにバラバラに存在する優秀な選手たちが、自分よりレベルの低い環境で満足してしまい、成長が止まってしまうという課題がありました。これを解消するために、上手な選手を一箇所に集める仕組みが作られたのです。
また、指導者のレベルアップも目的の一つに含まれています。トレセンにはライセンスを持った経験豊富な指導者が集まるため、そこで最新の指導法や戦術が共有されます。選手だけでなく指導者も研鑽を積むことで、日本全体のサッカーの質を底上げしていくという大きな狙いがあるのです。いわば、日本のサッカー文化を豊かにするための基盤と言えるでしょう。
さらに、トレセンは「オープンな選考」を大切にしています。特定のチームに所属しているから有利になるといったことがないよう、広く選手にチャンスを与える場としても機能しています。自分たちの地域にどのような才能が眠っているのかを把握し、それを見逃さずに育てる仕組みこそが、現在の日本サッカーの躍進を支えているのです。
地区から全国までつながるピラミッド型の組織構成
サッカートレセンの大きな特徴は、その組織がピラミッドのような階層構造になっていることです。まず最も身近な段階として「地区(ブロック)トレセン」があります。ここでは市町村単位のチームから選手が集められます。次に、その中から選ばれた選手が「都道府県トレセン(県トレ)」へと進んでいきます。レベルが上がるにつれて、選ばれる人数は絞られていきます。
県トレセンの上には、全国を9つのブロックに分けた「地域トレセン(関東、関西、九州など)」があり、さらにその頂点に位置するのが「ナショナルトレセン」です。ナショナルトレセンは、まさに日本を代表する同年代のトップエリートが集まる場所です。このように、段階を踏んでステップアップできる仕組みがあるため、選手にとっては具体的な目標が立てやすくなっています。
ピラミッドの上に行くほど、選手の技術力はもちろん、判断スピードやフィジカルの強さも格段に上がっていきます。しかし、最初からトップを目指すのではなく、まずは一番身近な地区トレセンを目指すことが、成長への第一歩となります。一つひとつの階段を上るように、自分の実力を試していく場として活用されています。
| レベル | 名称 | 主な活動範囲 |
|---|---|---|
| 頂点 | ナショナルトレセン | 日本全国から選抜されたトップエリート |
| レベル4 | 地域トレセン | 全国9ブロック(関東・関西など) |
| レベル3 | 都道府県トレセン | 各都道府県(県トレと呼ばれる) |
| レベル2 | 地区・ブロックトレセン | 市区町村や複数の自治体単位 |
| レベル1 | 自チーム活動 | 所属している少年団やクラブチーム |
トレセン活動が行われる対象年齢と選考の時期
トレセンの活動が本格的に始まるのは、主に小学校5年生(U-11)や6年生(U-12)の時期からです。地域によっては小学校4年生(U-10)から選考が始まることもありますが、一般的には高学年がメインとなります。この時期は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、身体の動かし方や技術を習得するのに最も適した時期であるため、重点的に強化が行われます。
中学生(ジュニアユース)になると、U-13、U-14、U-15といった年代別にさらに細かく活動が分かれます。高校生(ユース)年代でもトレセン活動は継続されますが、プロの下部組織や強豪校に優秀な選手が集中するため、ジュニアやジュニアユース時代に比べると、地域のトレセンというよりは代表候補の選考という意味合いが強くなってきます。
選考会の時期は地域によって異なりますが、多くの場合は年度の初め(4月から6月頃)に実施されます。そこで1年間の活動メンバーが決まることが一般的ですが、途中で入れ替えを行う「追加選考」を設けている地域もあります。一度選ばれたら終わりではなく、常に周囲と競い合いながら、実力を証明し続ける必要がある厳しい環境でもあります。
トレセンの活動頻度は、月に1〜2回程度の定期練習会や、長期休暇中に行われるキャンプ、大会形式の対抗戦などが中心です。自チームの活動を優先しながら、月に数回の刺激を受ける場として位置づけられています。
各カテゴリーごとのトレセンの特徴と具体的な活動内容

トレセン制度は階層ごとに役割が異なり、上にいくほど専門性が高まります。サッカートレセンとは単なる練習会ではなく、将来のプロ選手を育成するためのステップであることを理解しておくと、目標設定がしやすくなります。ここでは、最も身近な地区トレセンから、最高峰のナショナルトレセンまで、それぞれの活動内容を見ていきましょう。
それぞれのカテゴリーには、JFAが定める指導指針があり、一貫したコンセプトでトレーニングが行われています。例えば「攻撃では常にゴールを狙う」「守備では素早くボールを奪い返す」といった基本的な考え方を、レベルに合わせて深掘りしていきます。各カテゴリーの特徴を知ることで、自分がいまどの位置にいるのかを把握することができます。
地区トレセン(ブロック・市町村)での活動と役割
地区トレセンは、多くの選手にとって最初に直面する選抜の壁です。ここでは近隣のチームから推薦された選手が集まり、合同でトレーニングを行います。主な役割は、その地域のレベルアップを図ることと、さらに上の県トレセンへ送り出すための選手を見極めることです。初めて他チームの選手と一緒にプレーする経験は、子供たちにとって大きな刺激となります。
活動内容としては、基本的な技術の確認や、1対1、2対2といった小規模な対人練習が中心となります。地区レベルのコーチが指導にあたり、選手一人ひとりの特徴を細かく見てくれます。ここで自分の得意なプレーが通用するのかを試すことができます。また、近隣チームのライバルと仲良くなることで、サッカーのコミュニティが広がるのも地区トレセンの良さと言えるでしょう。
多くの選手はこの地区トレセンを目指すことからスタートします。ここで自信をつけることが、その後のサッカー人生において大きなプラスになります。練習頻度は月に1回程度のところが多く、チームの活動に支障が出ない範囲で実施されるのが一般的です。まずはここで自分の実力を発揮し、コーチの目に留まることが第一のステップです。
都道府県トレセン(県トレ)のレベルと選考の流れ
都道府県トレセン、通称「県トレ」になると、レベルは一気に上がります。各地区から勝ち上がってきた精鋭が集まるため、技術的なミスが非常に少なくなります。選考方法は、地区トレセン内での推薦や、地区対抗の試合形式でのオーディションが行われることが一般的です。県トレセンに選ばれることは、その都道府県の中で上位数百名に入っている証となります。
県トレセンの活動では、より戦術的な要素が加わります。止める・蹴るといった基礎はもちろん、試合の中でどのように優位に立つかといった「戦術眼」が求められるようになります。指導者もJFA公認のライセンスを持つベテランコーチが担当することが多く、質の高いフィードバックを受けることができます。練習だけでなく、他県のトレセンチームとの強化試合が行われることもあります。
県トレセンに選ばれると、周囲からの目も変わりますし、選手自身の自覚も芽生えます。しかし、そこには自分と同じかそれ以上の実力を持つ選手が何十人もいます。その中でどのように個性を出すかが問われるようになります。このレベルまで到達すると、将来的にJリーグの下部組織や強豪高校への道も見え始めてくるようになります。
ナショナルトレセンが目指す日本のトップ育成
ナショナルトレセンは、日本サッカー協会が直接運営する、日本で最高峰の育成プログラムです。各地域の優秀な選手が集まり、数日間のキャンプ形式で集中的にトレーニングを行います。ここに呼ばれる選手は、実質的な「年代別日本代表」の候補生と言っても過言ではありません。全国からスカウトやプロ関係者の注目が集まる舞台です。
ナショナルトレセンでは「世界基準」が常に意識されます。単に日本の中で上手いというだけでなく、世界の同年代のトップ選手と戦うために何が必要かを追求します。トレーニング強度は非常に高く、食事や休養といった生活面についてもプロさながらの意識が求められます。ここで経験したことを自分の地域やチームに持ち帰り、伝えていくことも選ばれた選手の使命とされています。
かつてはこのナショナルトレセンを経て、現在のフル代表で活躍しているスター選手も少なくありません。まさに日本サッカーの登竜門としての役割を果たしています。ただし、ここに参加できるのは極めて一握りの選手だけです。それでも、その頂を目指して日々の練習に励むことが、すべてのジュニア選手のモチベーションにつながっています。
トレセンの選考会でコーチが見ている具体的な評価ポイント

サッカートレセンとは選抜制度であるため、当然ながら「選ばれる基準」が存在します。多くの保護者や選手が「どうすれば合格できるのか」と悩むポイントですが、実はコーチが見ているのは派手なテクニックだけではありません。トレセンの選考で見られるポイントは、大きく分けて技術、判断、身体、そして精神面の4つの柱があります。
特にジュニア年代では、今の完成度だけでなく、将来どれだけ伸びるかという「将来性」も重視されます。今すぐに体が大きいから、あるいは足が速いから選ばれるわけではなく、サッカーをどれだけ深く理解しようとしているかが重要です。ここからは、選考会で高い評価を得るために意識すべき具体的な項目について詳しく解説します。
正確な基本技術とプレースピードの速さ
まず前提として、「止める・蹴る・運ぶ」という基本技術が正確であることが求められます。どんなに足が速くても、パスがズレたりトラップが浮いたりしてしまうと、ハイレベルな環境では通用しません。特にトレセンの選考では、相手のプレッシャーがある中で、いかにミスなく自分の意図した通りにボールを扱えるかが厳しくチェックされます。
さらに重要なのが「プレースピード」です。これは単に走る速さのことではなく、ボールをコントロールしてから次のプレーに移るまでの速さを指します。トップレベルの選手は、ボールが自分に来る前に周りを見て、次に何をすべきか決めています。そのため、トラップの瞬間に次の動作に入っており、流れるようなプレーが可能になります。この無駄のなさが、コーチたちの目に留まるポイントです。
また、両足を使えるかどうかも評価を左右します。右足しか使えない選手は、相手に守り方を読まれやすく、狭い局面で選択肢が狭まってしまいます。左足でも同じような精度でパスを出したりシュートを打てたりする選手は、どのポジションでも使いやすいと判断され、評価が高くなる傾向にあります。日頃から苦手な足の練習をしているかが、こうした場で現れます。
状況判断能力とインテリジェンスの高さ
現代サッカーで最も重視されるのが、この「状況判断能力(サッカーインテリジェンス)」です。ボールを持っていない時(オフ・ザ・ボール)に、どこに立てばパスを受けられるか、どこに走ればチャンスになるかを考えられているかが見られます。コーチは選手が何を考えてそのプレーを選択したのかを観察しています。たとえプレー自体が失敗しても、その「意図」が良ければ評価されることもあるのです。
具体的には、周りを見ているかどうか(首を振っているか)がチェックポイントになります。常に周囲の状況を把握し、敵と味方の位置を確認しながらプレーしている選手は、判断ミスが少なくなります。逆に、ボールだけを見つめて突っ込んでしまう選手は、いくらドリブルが上手くても高いレベルでは厳しいと判断されることが多いです。いわゆる「サッカーを知っている選手」が好まれます。
また、攻守の切り替えの早さもインテリジェンスの一部です。ボールを奪われた瞬間に素早く守備に回る、あるいは奪った瞬間にゴールを目指すといった状況の変化への対応力が求められます。頭の回転の速さは、技術を最大限に活かすためのベースとなります。自分一人でサッカーをするのではなく、チームとしてどう動くべきかを理解している選手は、どのチームでも重宝されます。
守備の意識とハードワークできる献身性
意外と見落とされがちなのが、守備に対する姿勢です。トレセンの選考会では、どうしても得点やドリブルなどの派手なプレーでアピールしようとしがちですが、コーチは「真面目に守備ができるか」を非常に重視しています。どれだけ技術が高くても、守備をサボる選手は選抜チームには不要だと考えられるからです。最後まで相手を追いかけ、体を張ってボールを奪いに行く献身性が求められます。
特に、球際の強さ(デュエル)は重要な評価基準です。相手とボールを競り合う場面で、絶対に負けないという強い気持ちを持って挑んでいるかは、選手のメンタリティを測る指標になります。ただ足を出して抜かれるのではなく、体を寄せて自由を奪うといった、泥臭いプレーができる選手は高く評価されます。守備がしっかりしている選手がいると、チーム全体が安定するためです。
また、試合の最後まで走り続けるスタミナとハードワークの精神も不可欠です。選考会という緊張する場面でも、足が止まらずに動き続けられるかどうかは、日頃の練習の積み重ねが現れます。苦しい時間帯でもチームのために走れる選手は、周囲の信頼も厚くなります。攻撃の華やかさだけでなく、守備という土台をしっかり持っていることが、合格への近道となります。
声出しや振る舞いなどのコミュニケーション能力
トレセンは即席のチームでプレーするため、初対面の選手同士でコミュニケーションを取る力も試されます。ピッチ内で味方に指示を出したり、パスを呼ぶ声をしっかり出せているかは大きな加点要素です。「自分はここにいるぞ」「こうしてほしい」という意思表示ができる選手は、周囲を動かすリーダーシップがあると見なされます。
また、ピッチ外での振る舞いも観察されていることがあります。コーチの話を聞く時の態度や、準備・片付けを自ら率先して行う姿勢などは、その選手の人間性を表します。サッカートレセンとは、単に技術を教える場ではなく、一人の人間として自立した選手を育てる場でもあります。そのため、自分のことを自分ででき、周りに配慮できる選手が選ばれやすいのです。
挨拶ができる、ルールを守る、仲間を鼓舞するといった基本的なことが、実は選考の分かれ目になることも珍しくありません。優れた選手は、同時に優れた人格者であるべきという考えがJFAの根底にあります。緊張して言葉が出ないこともあるかもしれませんが、勇気を持って声を出してみることが、自分の存在感をアピールする素晴らしい手段になります。
コーチは選手の「目」も見ています。真剣にサッカーに取り組んでいるか、話を聞き漏らさないように集中しているか。こうした目に見えない姿勢も、選考には大きな影響を与えます。
トレセンに参加することで得られる大きなメリットと成長のチャンス

サッカートレセンとは、選ばれたことによる名誉だけでなく、選手としての成長を加速させるための「最高の学び場」です。普段のチーム活動だけでは得られない経験がそこには詰まっています。トレセンに参加すること自体が、選手にとって大きな自信となり、さらなるモチベーションの向上につながります。
もちろん、移動の負担や時間のやりくりなど大変な面もありますが、それ以上に得られる価値は計り知れません。多くのプロ選手がジュニア時代のトレセン経験を「大きな転機だった」と振り返っていることからも、その重要性が分かります。ここでは、トレセンに参加することで得られる具体的な3つのメリットをご紹介します。
質の高い指導者と練習メニューによる刺激
トレセンの指導にあたるのは、多くが日本サッカー協会の指導者ライセンスを持ち、最新の育成理論を学んでいるコーチたちです。彼らは選手に対して、論理的かつ具体的なアドバイスをくれます。自分のチームのコーチとはまた違った視点での指摘をもらうことで、今まで気づかなかった自分の弱点や強みに気づくきっかけになります。
また、練習メニューも非常に洗練されています。限られた時間の中で最大の効果を得るために、非常に強度の高いトレーニングが組まれます。普段のチームではなかなかやらないような、高度な戦術練習や専門的なスキルアップのドリルに取り組むことができます。これにより、サッカーの新しい考え方や技術を効率よく習得することが可能になります。
こうした質の高い指導を受けることで、選手の中には「サッカーをもっと深く知りたい」という知的好奇心が芽生えます。教えられたことをただこなすのではなく、なぜこの練習が必要なのかを考える習慣がつきます。良質なトレーニング環境は、選手の技術だけでなく、サッカーに対する向き合い方そのものを変えてくれる力を持っています。
意識の高い仲間と出会い切磋琢磨できる環境
トレセンには、各チームから「一番上手い選手」たちが集まってきます。つまり、自分が所属チームで「エース」だったとしても、トレセンに行けば自分より上手い選手が何人もいるという現実に直面します。この「井の中の蛙」を脱する経験こそが、ジュニア年代の選手にとって最大の財産となります。
上手な選手と一緒にプレーすると、パススピードが違ったり、判断の速さに驚いたりすることがあります。その中で必死に食らいついていこうとすることで、自分の限界が引き上げられます。また、意識の高い仲間と友達になることで、「アイツがあんなに練習しているなら、自分ももっと頑張ろう」というポジティブな刺激を日常的に受けることができるようになります。
切磋琢磨できるライバルがいることは、成長のスピードを何倍にも早めてくれます。トレセンで出会った仲間と、後に中学・高校の大会で対戦したり、同じチームになったりすることもよくあります。サッカーを通じて広がる人間関係は、技術的な向上だけでなく、選手の精神的な豊かさにもつながっていく重要な要素です。
スカウトの目に留まる機会と将来への可能性
レベルの高いトレセン(県トレや地域トレ)になればなるほど、プロチームのスカウトや強豪校の指導者が視察に来るようになります。サッカートレセンとは、いわば「才能のショーケース」のような側面も持っています。ここで目立った活躍をすることで、将来の進路が大きく開ける可能性があります。
具体的には、Jリーグの下部組織(アカデミー)への練習参加の声がかかったり、強豪高校からの勧誘につながったりすることもあります。もちろん、トレセンに選ばれたからといって将来が約束されるわけではありませんが、自分のプレーを「しかるべき人に見てもらう」機会が増えるのは間違いありません。自分の可能性を広げる場として、これほど効率的な場所はありません。
たとえすぐに声がかからなくても、こうした「見られている環境」でプレーすることは、プロを目指す選手にとって必要な度胸を養う訓練になります。プレッシャーの中で自分の力を出し切る経験は、受験や就職など、将来のあらゆる場面で役立つ力となります。トレセンは、サッカー選手として、そして一人の人間としてのステージを引き上げるチャンスなのです。
【トレセン参加のメリットまとめ】
・専門的なコーチから最新の指導を受けられる
・ハイレベルなライバルとの出会いで基準が上がる
・将来の進路につながるスカウトの目に留まりやすくなる
トレセン選考に落ちた時に親ができるサポートと心構え

サッカートレセンとは選抜制度である以上、合格する選手がいれば、当然ながら落選する選手もいます。むしろ、落ちる選手の方が圧倒的に多いのが現実です。大切なお子さんが落選という結果を突きつけられた時、ショックを受けるのは選手本人だけでなく、支えてきた保護者の方も同じかもしれません。しかし、ここでどのように振る舞うかが、その後の選手の成長を大きく左右します。
まず理解しておきたいのは、「トレセンに落ちた=サッカー選手としての才能がない」というわけでは決してないということです。成長のスピードは一人ひとり異なり、選考の基準もその時のコーチの考え方によって変わります。ここでは、落選という結果をどう受け止め、次につなげていくべきか、保護者としての接し方について考えてみましょう。
落選を否定せず選手の努力を認める言葉がけ
落選の知らせを聞いた時、お子さんは自分自身を否定されたような気持ちになっているかもしれません。そんな時、一番身近な親が「なんでダメだったの?」「もっと練習しないからだよ」といった否定的な言葉をかけるのは逆効果です。まずは、選考会に挑戦した勇気と、そこまでの努力をしっかりと認めてあげることが大切です。
「今回は残念だったけど、ここまで一生懸命頑張ってきた姿は見ていたよ」「あの選考会でプレーしたことは必ず経験になるよ」といった、過程を肯定する言葉をかけてあげてください。親が自分の味方であることを実感できれば、選手は再び顔を上げて練習に取り組むことができます。感情的にならず、まずは本人の気持ちに寄り添うことが、心の回復には不可欠です。
また、落ち込んでいる時は無理に励ましすぎる必要もありません。少し時間をおいて、本人が自分から「何が足りなかったんだろう」と話し始めた時に、一緒に考える姿勢を見せることが理想的です。親ができるのは、選手が自分で立ち上がるのを静かに見守り、支えることです。結果を責めるのではなく、次のチャレンジを応援する姿勢を貫きましょう。
晩成型の選手も多い!成長のタイミングを待つ重要性
ジュニア年代の選考には、どうしても「早生まれ・遅生まれ」の影響や「成長期の早さ」が関わってきます。小学校5、6年生の頃は、体の大きい子が有利になりやすく、技術はあっても体がまだ出来上がっていない選手が落選することは多々あります。しかし、こうした選手が中学生、高校生になって急成長し、トレセンに選ばれた選手を追い越すケースは枚挙にいとまがありません。
サッカー界には「晩成型(晩熟型)」と呼ばれる選手がたくさんいます。現在プロで活躍している選手の中にも、小学生の頃はトレセンに一度も選ばれなかったという人は大勢います。今この瞬間の評価が、一生の評価ではないことを親子で共有しておきましょう。大切なのは、今の立ち位置を悲観することではなく、将来の自分のために今できることを淡々と続けることです。
トレセンはあくまで「その時点での評価」に過ぎません。体が成長し、筋力がついてきた時に、これまで培ってきた技術が爆発的に伸びる時期が必ず来ます。その時のために、今は基礎をコツコツと磨いておく時期だと割り切ることも必要です。長期的な視点を持って、お子さんの成長を信じて待ち続ける忍耐強さが、保護者には求められます。
ジュニア時代の選考結果は、あくまで「通過点」です。ここで選ばれなかったことで、悔しさをバネに努力し続け、最終的に大きな成功を掴む選手はたくさんいます。
トレセン以外の道!スクールや遠征で経験を積む方法
サッカートレセンとは別の方法でも、レベルの高い環境を経験することは可能です。もしトレセンに縁がなかったとしても、成長のチャンスを自ら作り出すことができます。例えば、Jリーグの下部組織が運営する「アドバンスクラス」や、実力者が集まる民間の強化スクールのセレクションを受けてみるのも一つの手です。そこにはトレセンと同じか、それ以上に意識の高い選手が集まっています。
また、長期休暇中に開催されるキャンプや海外遠征プログラムに参加することも、大きな経験になります。普段とは違う環境、違うメンバーの中でプレーすることは、トレセン活動で得られる刺激と似た効果があります。今は個人で申し込める質の高いプログラムが豊富にあるため、自分の意志で外の世界に飛び出していくことが可能です。
一つの選考結果に固執せず、視野を広く持つことが大切です。トレセンだけが成長の場所ではありません。自分に合ったレベルの場所、自分を評価してくれる場所を見つけ、そこで成功体験を積むことが自信につながります。「どこでプレーするか」よりも「どのようにプレーするか」を大切にしながら、多様な経験をさせてあげることが、選手の可能性を広げることになります。
まとめ:サッカーのトレセン制度を成長のバネにして飛躍しよう
ここまで、サッカートレセンとはどのような制度なのか、その目的から選考基準、そして向き合い方まで詳しく解説してきました。トレセンは、日本サッカーの将来を担う個を育てるための非常に優れたシステムです。選ばれることで得られる刺激や経験は、選手にとって大きな財産となり、成長を大きく加速させてくれます。
しかし、忘れてはいけないのは、トレセンはあくまで「手段」であり「目的」ではないということです。トレセンに入ることがゴールではなく、そこで何を学び、自分のチームや将来にどう活かすかが重要です。また、選ばれなかったとしても、それは決して挫折ではありません。むしろその悔しさをエネルギーに変えて、基礎技術を徹底的に磨き直す絶好の機会と捉えることができます。
サッカーを愛するジュニア選手たちにとって、トレセンという存在が「自分を試す前向きな挑戦の場」であってほしいと願っています。保護者の方は、結果に一喜一憂しすぎず、お子さんがサッカーを楽しみ、日々成長していく過程を一番近くで支えてあげてください。どのような結果であっても、一生懸命取り組んだ経験は、必ず将来の大きな力になるはずです。
【今回の記事のまとめ】
・サッカートレセンとは、JFAによる「個の育成」のための選抜制度
・地区、県、地域、全国というピラミッド構造で成り立っている
・技術、判断、守備の意識、人間性などが多角的に評価される
・参加は大きなメリットだが、不合格でもチャンスはいくらでもある
・長期的な視点を持ち、親子で成長を楽しむ姿勢が何より大切


