サッカーの試合を見ていると、実況や解説で「LSB」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。「LSB」とは「Left Side Back(レフト・サイド・バック)」の略称で、左サイドバックのポジションを指す言葉です。
かつては守備が主な役割でしたが、現代サッカーにおいては攻撃の起点となったり、ゲームメイクに参加したりと、その役割は劇的に進化しています。
この記事では、サッカー初心者の方にもわかりやすく、LSBの基本的な役割から現代戦術における重要性、そして注目の有名選手までを詳しく解説していきます。
サッカーLSB(左サイドバック)の基本的な意味とポジション

まずは、LSBというポジションがピッチ上のどこに位置し、どのような意味を持つのか、基礎的な知識から確認していきましょう。
LSBは「レフト・サイド・バック」の略称
LSBという言葉は、英語の「Left Side Back」の頭文字をとったものです。日本のサッカー用語では「左サイドバック」と呼ばれることが一般的ですが、戦術ボードやゲーム、専門的な分析記事などでは「LSB」と表記されるケースが多くあります。DF(ディフェンダー)の一員であり、最終ラインの左端を担当します。守備陣の一部としてゴールを守る責任を持ちながら、サイドのスペースを使って攻撃にも参加するという、非常にタフで重要なポジションです。
ピッチ上での位置とフォーメーション
LSBは、基本的に4バック(ディフェンダーが4人のシステム)の左端に位置します。センターバック(CB)の左隣が定位置です。3バックのシステムを採用しているチームの場合は、LSBというポジションが存在せず、代わりに「ウイングバック(WB)」と呼ばれるポジションが置かれることが一般的です。ウイングバックはサイドバックよりも少し高い位置を取り、より攻撃的な役割を求められますが、守備に戻る際はサイドバックと同じエリアをカバーするため、共通するスキルも多くあります。
右サイドバック(RSB)との違い
右サイドバック(RSB)との最大の違いは、左右の配置による「視界」と「利き足」の影響です。LSBは左側のタッチラインを背にしてプレーするため、ピッチ全体を右斜め前に見る形になります。そのため、左利きの選手が重宝される傾向にあります。左足でボールを持つことで、スムーズに前線へパスを出したり、クロスを上げたりしやすいからです。ただし、近年では右利きの選手をあえてLSBに配置し、内側に切り込んでシュートやパスを狙う戦術も増えてきています。
攻守に求められるLSBの重要な5つの役割

LSBは、現代サッカーにおいて最もタスク(仕事)が多いポジションの一つと言われています。ここでは、具体的にどのような動きが求められるのか、5つのポイントに分けて解説します。
1対1の守備で相手を止める
LSBの守備における最大の役割は、相手チームの右ウイング(FW)や右サイドハーフとの1対1に勝つことです。相手の攻撃選手は、スピードやドリブルテクニックに優れたスター選手であることが多いため、彼らに突破を許さない粘り強い守備対応が求められます。単にボールを奪うだけでなく、相手に前を向かせない、自由にクロスを上げさせないといった「遅らせる守備」も重要です。ここでの勝敗が、失点に直結することも少なくありません。
攻撃参加とオーバーラップ
攻撃面での代表的なプレーが「オーバーラップ」です。これは、前方にいる味方の選手(左サイドハーフやウイング)がボールを持った瞬間に、その外側を猛スピードで追い越して走る動きのことです。LSBが駆け上がることで、相手の守備陣は「ボールを持っている選手」と「走ってきたLSB」のどちらをマークすべきか迷います。この一瞬の隙を突いて数的優位を作り、サイド深くからクロスボールを供給してゴールチャンスを演出します。
ビルドアップ(攻撃の組み立て)
現代のLSBには、ゴールキーパーやセンターバックからパスを受け、攻撃を組み立てる「ビルドアップ」の能力も必須です。相手チームからのプレッシャーを受ける中で、冷静にボールをコントロールし、中盤の選手や前線の選手へ正確なパスを繋ぐ必要があります。単に大きく蹴り出すのではなく、パスを繋いで自分たちの攻撃時間を長くすることが、チーム全体の安定感を生み出します。そのため、足元の技術(トラップやパス精度)も高く求められます。
リスク管理とカバーリング
攻撃に参加したい気持ちを抑え、リスクを管理することも重要な役割です。例えば、味方の右サイドバックが攻撃に上がっている場合、左サイドバックであるLSBはバランスを取るために後ろに残る必要があります。また、センターバックが相手選手につり出されたり、抜かれたりした際に、その空いたスペースを埋める「カバーリング」の動きも欠かせません。常にピッチ全体の状況を把握し、攻めるべきか守るべきかを瞬時に判断する知性が問われます。
インナーラップ(内側を走る動き)
近年急速に普及しているのが「インナーラップ(アンダーラップ)」という動きです。オーバーラップが味方の「外側」を走るのに対し、インナーラップは味方の「内側(相手ゴールに近い中央寄り)」のスペースへ走り込みます。相手守備陣の意表を突き、ゴールに近い位置でパスを受けてシュートを狙ったり、ラストパスを送ったりします。従来の「サイドバック=外側」という常識を覆す、現代的で高度な戦術眼が必要なプレーです。
現代サッカーにおけるLSBの戦術的な進化

「守備職人」から「司令塔」へ。LSBの役割はここ数年で大きく変化しました。ここでは、現代サッカーならではの戦術的なトレンドについて深掘りします。
「偽サイドバック」という新しい戦術
「偽サイドバック(インバーテッド・フルバック)」とは、攻撃時にサイドバックが本来の位置から中央(ボランチのエリア)へと移動する戦術です。サイドに張り付くのではなく、ピッチの中央でプレーすることで、中盤の人数を増やしてボールを支配しやすくします。また、相手のカウンター攻撃を受けた際、即座に中央で守備ブロックを形成できるメリットもあります。この戦術をこなすためには、MF並みのパスセンスと視野の広さが必要です。
ゲームメイク能力の重要性
かつてのLSBは、足が速くてスタミナがあれば務まることもありましたが、現在は「ゲームメイク能力」がないとトップレベルでは通用しにくくなっています。GKからボールを受けた際、相手のプレスを回避するパスを出せるか、味方の動きに合わせてテンポを作れるかが重要視されます。実際に、世界的な強豪クラブでは、もともとMFだった選手をLSBにコンバート(転向)させ、攻撃の組み立て役として起用するケースが増えています。
右利きの左サイドバックが増えている理由
以前は「LSBは左利きが絶対有利」と言われていましたが、最近は右利きの選手がLSBを務めることも珍しくありません。右利きの選手が左サイドにいると、体の向きが自然とピッチの内側(ゴール方向)を向くため、中央へのパスコースが見えやすくなります。また、ドリブルで内側に切り込んで、得意な右足で強烈なシュートを放つ「カットイン」もしやすくなります。カンセロ選手(マンチェスター・シティなどで活躍)や冨安健洋選手のような、両足を器用に使える右利きのLSBが評価されています。
LSBに向いている人の特徴と必要な能力

もしあなたがプレーヤーだったり、特定の選手を応援したりする場合、「どんな人がLSBに向いているのか」は気になるところでしょう。このポジションで輝くための要素を紹介します。
無尽蔵のスタミナとスプリント能力
LSBはピッチの端から端まで、およそ100メートル近い距離を何度も往復しなければなりません。攻撃のチャンスがあれば全力で前線へ走り、ボールを奪われたら即座に自陣深くへ戻って守備をする必要があります。そのため、90分間走り続けられる「無尽蔵のスタミナ」と、攻守の切り替え時に爆発的なスピードを出せる「スプリント能力」は、LSBにとって最も基本的な武器となります。
高い戦術理解度と判断力
「いつ上がるべきか」「いつ残るべきか」という判断は、一瞬の迷いが失点につながります。味方の位置、敵の位置、ボールの状況、時間帯、スコアなど、あらゆる情報を瞬時に処理する「戦術的知能(サッカーIQ)」が必要です。特に現代サッカーでは複雑なポジショニングが求められるため、監督の指示を正しく理解し、ピッチ上で実行できる賢い選手が重宝されます。
メンタルの強さと責任感
サイドバックはミスが目立ちやすいポジションでもあります。裏のスペースを取られて失点に絡んだり、クロスの精度が悪くてチャンスを潰したりすることもあります。しかし、そこで落ち込んでいる暇はありません。失敗してもすぐに気持ちを切り替え、次のプレーに集中できるタフなメンタルが必要です。また、チームのために黒子に徹して走り続ける「献身性」や「責任感」も、LSBに向いている重要な資質です。
世界と日本で活躍する代表的なLSBの選手たち

具体的なイメージを掴むために、世界最高峰のLSBや、日本を代表する選手たちを紹介します。彼らのプレー動画などを検索してみると、より理解が深まるでしょう。
伝説的な攻撃的LSB:マルセロ
レアル・マドリードで長年活躍したブラジル代表のマルセロ選手は、サッカー史上最高のLSBの一人です。彼の特徴は、FW顔負けの圧倒的なテクニックとボールコントロール。守備の選手でありながら、魔法のようなドリブルやパスで観客を魅了し、多くのゴールやアシストを記録しました。「LSBは攻撃の主役になれる」ことを証明した象徴的な選手です。
現代型の万能LSB:アンドリュー・ロバートソン
リヴァプールFC(イングランド)に所属するスコットランド代表、ロバートソン選手は、現代的なLSBの完成形と言われています。非常に精度の高い左足のキックを持ち、高速のクロスボールで数多くのアシストを量産します。さらに、守備の強度も非常に高く、90分間全く落ちない運動量でチームを支えます。攻守のバランスが極めて高いレベルで整っている選手です。
日本が誇る鉄人:長友佑都
日本サッカー界におけるLSBの代名詞といえば、長友佑都選手です。イタリアの名門インテル・ミラノで長年レギュラーを張り、日本代表としてもワールドカップに4大会連続出場しました。彼の武器は、世界トップクラスの相手にも走り負けない驚異的なスタミナと、1対1の粘り強さです。小柄な体格ながら、屈強な外国人選手を封じ込める姿は、多くのファンに勇気を与えました。
注目ポイント
最近では、伊藤洋輝選手(バイエルン・ミュンヘン)のように、身長が高くてセンターバックもこなせる大型のLSBや、三笘薫選手のようにウイングバックとして攻撃力を発揮するタイプも登場しています。選手のタイプによって、チームの戦い方がどう変わるかに注目するのも面白いでしょう。
まとめ
今回は、サッカーの「LSB(左サイドバック)」について、その意味や役割、現代的な戦術から有名選手まで幅広く解説しました。
記事の要点振り返り
- LSBは「Left Side Back」の略で、守備ラインの左端を担当するポジション。
- 役割は守備(1対1、カバー)だけでなく、攻撃(オーバーラップ、ビルドアップ)も極めて重要。
- 現代では「偽サイドバック」や「インナーラップ」など、中央でプレーする戦術も増えている。
- 必要な能力はスタミナ、スピード、クロス精度、そして高い戦術理解度。
- マルセロや長友佑都など、チームの勝敗を左右する影響力のある選手が多い。
LSBは、単に「守る人」ではなく、チームの攻撃スイッチを入れる重要なポジションです。試合観戦の際は、ボールを持っていない時のLSBのポジショニングや、攻守の切り替え時のスプリントにぜひ注目してみてください。その献身的な動きや賢い駆け引きを知ることで、サッカー観戦がより一層奥深く、楽しいものになるはずです。



