リバプール戦術を徹底解剖!スロット新体制の「理性的な強さ」とは

リバプール戦術を徹底解剖!スロット新体制の「理性的な強さ」とは
リバプール戦術を徹底解剖!スロット新体制の「理性的な強さ」とは
ルールと戦術を学ぶ

2024-25シーズン、リバプールはクラブの歴史において極めて重要な転換点を迎えました。9年間チームを率い、数々の栄光をもたらしたユルゲン・クロップ監督が去り、新たにオランダ人指揮官アルネ・スロット監督が就任したのです。多くのファンが抱いた「偉大な時代の後は低迷するのではないか?」という不安をよそに、チームは開幕から驚異的な安定感を見せています。

クロップ時代の情熱的でエモーショナルなスタイルを土台にしつつ、スロット監督独自の「コントロール」された緻密な戦術が融合し、リバプールは新たな進化を遂げているのです。派手な打ち合いよりも、相手を完全に掌握して勝つ試合が増えたことに気づいている方も多いでしょう。

この記事では、新生リバプールの戦術的特徴や、好調の要因となっている具体的なメカニズム、そして気になる遠藤航選手の立ち位置などについて、初心者の方にもわかりやすく、かつ深掘りして解説していきます。

  1. リバプール戦術の進化:スロット監督が植え付けた「コントロール」
    1. ヘビーメタルから「静かなる支配」へ
    2. 4-2-3-1への移行と流動的なポジションチェンジ
    3. ポゼッション率向上と試合運びの妙
    4. ゴールキーパーも攻撃の起点!「+1」を作るビルドアップ
  2. 攻撃のメカニズム:緻密に計算された「罠」と「爆発」
    1. ボランチとCBで作る「ボックス」ビルドアップ
    2. 相手を自陣深くへ「誘い出す」疑似カウンター
    3. 「ゾーン14」を攻略する中央突破のアイデア
    4. サラーとサイドバックの新たな連携パターン
  3. 守備の構築:4-2-4ブロックとリスク管理の徹底
    1. パスコースを遮断する「4-2-4」の正体
    2. プレスに行く・行かないの判断基準
    3. 被カウンター激減の理由とセンターバックの役割
    4. 「人」ではなく「スペース」と「コース」を守る
  4. クロップ時代との違いと日本人選手への影響
    1. 「カオス」か「秩序」か:アプローチの根本的な違い
    2. 中盤に求められるスキルの変化:なぜ遠藤航の出番が減ったのか
    3. 遠藤航に期待される「クローザー」としての役割
    4. グラフェンベルフが重用される戦術的理由
  5. 2024-25シーズンのキーマンたち
    1. ライアン・グラフェンベルフ:中盤の再発明
    2. カーティス・ジョーンズ:万能型リンクマンの覚醒
    3. モハメド・サラー:進化する「チャンスメーカー」
    4. フィルジル・ファン・ダイク:最強の砦にして司令塔
  6. まとめ:リバプール戦術の完成度と今後の展望

リバプール戦術の進化:スロット監督が植え付けた「コントロール」

アルネ・スロット監督がリバプールにもたらした最大の変化は、試合を「コントロールする」という意識の徹底です。これまでのリバプールといえば、激しいプレッシングと電光石火のカウンターが代名詞でしたが、新体制ではボールを大切に持ちながら、相手を崩すタイミングを虎視眈々と狙うスタイルへと変貌を遂げました。

ヘビーメタルから「静かなる支配」へ

クロップ監督のサッカーは、よく「ヘビーメタル」と表現されました。これは、激しいトランジション(切り替え)の応酬が生むカオス(混沌)の中で、相手をフィジカルと勢いで圧倒するスタイルを指します。観客を熱狂させる魅力がありましたが、同時に選手への負担も大きく、試合展開が荒れやすいという側面もありました。

一方、スロット監督のスタイルは「理性的」であり、より落ち着きがあります。ボールを奪った後、無理に縦へ急ぐのではなく、一度後方でパスを回して相手の陣形を整えさせ、その整った陣形の「綻び」を突くようなプレーが増えました。これにより、試合を通じて体力の消耗を抑えつつ、90分間安定して主導権を握ることが可能になっています。

4-2-3-1への移行と流動的なポジションチェンジ

これまでの4-3-3システムから、スロット監督は「4-2-3-1」を基本フォーメーションとして採用しています。最も大きな変更点は中盤の構成です。アンカー(守備的MF)を1人置く形から、2人のボランチを並べる「ダブルボランチ」の形が基本となりました。

しかし、これはあくまでスタート時の配置に過ぎません。試合中は非常に流動的で、片方のボランチが前に出てトップ下のようになったり、サイドバックが中に入ってボランチ化したりと、選手が絶え間なく位置を入れ替えます。この「配置の流動性」こそが、相手ディフェンダーに「誰をマークすればいいのか?」という迷いを生じさせる要因となっています。

ポゼッション率向上と試合運びの妙

「ボールを持つことが最大の守備になる」という考え方が、現在のチームには深く浸透しています。特にリードしている場面での振る舞いが顕著に変わりました。以前なら追加点を狙ってリスクを冒して攻め続けていましたが、現在はパスを回して時間を使い、相手を走らせて疲弊させる「大人の戦い方」を見せます。

これは、長いシーズンを戦い抜くためのエネルギー管理としても機能しています。常に全速力で走り続けるのではなく、試合の中でギアを上げ下げするコントロールができるようになったことが、今シーズンの負けない強さにつながっています。

ゴールキーパーも攻撃の起点!「+1」を作るビルドアップ

スロット戦術の興味深い点は、ゴールキーパー(GK)をフィールドプレーヤーの一人のように扱うことです。アリソンやケレハーといった足元の技術に優れたGKに対し、センターバック(CB)の間に上がってパス回しに参加することを求めます。

これにより、後方は実質的に3人(2CB + GK)となり、相手が2トップでプレスに来ても「3対2」の数的優位を作ることができます。GKがフリーマンとなってパスを散らすことで、相手のプレスを無効化し、安全にボールを前進させるルートを確保しているのです。これは現代サッカーの最先端を行くビルドアップ戦術の一つです。

攻撃のメカニズム:緻密に計算された「罠」と「爆発」

新戦術の面白さは、攻撃の組み立て方にあります。単にパスを回すだけでなく、相手の守備組織を意図的に破壊するための「罠」が随所に仕掛けられています。ゆっくりとしたパス回しから、一瞬でスピードアップする緩急の差が相手を置き去りにします。

ボランチとCBで作る「ボックス」ビルドアップ

攻撃の起点となるのが、2人のセンターバックと2人のボランチが形成する四角形(ボックス)です。この4人が近い距離感でパスを交換しながら、相手のプレッシングラインを突破する糸口を探ります。

もし相手が中央を固めてくれば、サイドバックへ展開します。逆に相手がサイドを警戒して広がれば、ボランチへの縦パスを通します。この「ボックス」が安定しているため、前線の選手はボールを受けに下がる必要がなくなり、高い位置で攻撃に専念できる環境が整っています。

相手を自陣深くへ「誘い出す」疑似カウンター

今季のリバプールは、自陣深くでのパス回しが非常に多いことに気づくでしょう。時にはリスクに見えるほどGKやCBがボールを持ちますが、これは相手チームを「おびき寄せている」状態です。

相手がボールを奪おうと前掛かりになった瞬間、その背後には広大なスペースが生まれます。そこへ正確なロングパスや速い縦パスを一本通すことで、一気に相手ゴール前まで迫るのです。これはポゼッション(保持)していながら、カウンターのような広大なスペースで攻めることができるため、「疑似カウンター」と呼ばれます。

「ゾーン14」を攻略する中央突破のアイデア

サイドからのクロス攻撃一辺倒ではなく、中央突破のバリエーションが増えたのも特徴です。特に「ゾーン14」と呼ばれる、相手ペナルティエリア手前の中央スペースへの侵入を重視しています。

トップ下の選手(ソボスライやジョーンズなど)が相手の中盤と最終ラインの間(ライン間)でボールを受け、そこから素早いターンやワンツーパスでゴールに迫ります。中央を攻めることで相手ディフェンスが真ん中に集まり、その結果としてサイドのサラーやディアスがフリーになるという好循環も生まれています。

サラーとサイドバックの新たな連携パターン

右サイドの攻撃パターンも進化しました。これまではモハメド・サラーとトレント・アレクサンダー=アーノルドのコンビネーションが主軸でしたが、そこにより複雑な動きが加わっています。

アーノルドが中盤の内側に入って司令塔のように振る舞うことで、サラーはサイドで1対1を仕掛けるスペースを得られます。また、時にはボランチがサイドに流れてサポートするなど、トライアングル(3人)の関係性で崩す場面が増加。サラー自身も得点だけでなく、決定的なラストパスを送る「チャンスメーカー」としての役割を完璧にこなしています。

守備の構築:4-2-4ブロックとリスク管理の徹底

攻撃だけでなく、守備面でもスロット監督の色が強く出ています。クロップ時代の「ゲーゲンプレス(即時奪回)」の強度は要所で保ちつつ、より組織的で穴のない守備ブロックを形成しています。

パスコースを遮断する「4-2-4」の正体

相手がボールを持っている時、リバプールは「4-2-4」のような陣形を組むことが多くなりました。最前線のFWとトップ下、そして両ウイングが高い位置を取り、4人で第一の守備ラインを形成します。

この4人の主な役割は、ボールを奪うことよりも「相手のボランチへのパスコースを消す」ことです。中央へのパスコースを塞ぎ、相手をサイドへ誘導します。サイドにボールが出た瞬間、全体がスライドして囲い込み、ボールを奪い取るというトラップ(罠)を張っています。

プレスに行く・行かないの判断基準

以前は「常に全力でプレス」という傾向がありましたが、現在は状況に応じた判断が徹底されています。相手がボールのコントロールをミスした時や、後ろ向きでボールを持った時は激しくプレスに行きます。

逆に、相手がボールを落ち着いて持っている時は、無理に飛び込まずブロックを作って待ち構えます。この「行く時」と「行かない時」のメリハリがついたことで、無駄な走りが減り、試合終盤まで守備の強度を維持できるようになりました。

被カウンター激減の理由とセンターバックの役割

組織的な守備により、リバプールの長年の課題だった「カウンターへの脆さ」が劇的に改善されました。攻撃時に無理な人数をかけすぎず、常に後ろに3〜4人を残すリスク管理(レストディフェンス)が徹底されています。

万が一突破されても、ファン・ダイクやコナテという対人戦最強クラスのセンターバックが待ち構えています。彼らが広範囲をカバーできるため、チーム全体が高いラインを保つことができ、コンパクトな陣形を維持しやすくなっています。

「人」ではなく「スペース」と「コース」を守る

クロップ時代はマンツーマン気味に「人」に食いつく守備が多かったですが、現在は「スペース」や「コース」を管理するゾーンディフェンスの要素が強まりました。

特定の選手を追いかけ回すのではなく、自分たちが守るべきエリアに入ってきた敵を潰すスタイルです。これにより、一人が抜かれても次の選手がすぐにカバーできる補完関係が築かれ、崩されにくい堅牢な守備組織ができあがっています。

クロップ時代との違いと日本人選手への影響

ここまで見てきたように、スロット監督とクロップ前監督の戦術には明確な違いがあります。ここで、日本のファンが最も気になっているであろう遠藤航選手の状況についても、戦術的な観点から紐解いていきましょう。

「カオス」か「秩序」か:アプローチの根本的な違い

クロップ監督は、試合を「カオス(混沌)」に陥れることを好みました。互いに激しくボールが行き交う展開こそがリバプールの土俵であり、その熱量で相手を飲み込むスタイルです。

対してスロット監督は「秩序」を重んじます。カオスな展開は自分たちのコントロールが効かなくなるため、できるだけ避けようとします。熱量で押し切るのではなく、論理的に相手を詰ませていく、まるでチェスや将棋のようなアプローチをとります。

中盤に求められるスキルの変化:なぜ遠藤航の出番が減ったのか

昨シーズン、レギュラーとして活躍した遠藤航選手の出場機会が減少している理由は、ボランチに求められる役割の変化にあります。

クロップ監督が求めたのは、ボールを奪い取る「守備力」や「闘争心」でした。しかし、スロット監督がボランチに最も求めるのは「プレッシャーを受けた状態で、後ろ向きにボールを受けて前を向く能力」「ボールを運ぶドリブル」です。

ビルドアップ(攻撃の組み立て)の中心となるボランチには、相手のプレスをパスやターンで剥がす技術が最優先されます。この点において、遠藤選手よりもグラフェンベルフ選手の方が、新戦術への適性が高いと判断されているのが現状です。

遠藤航に期待される「クローザー」としての役割

では、遠藤選手は構想外なのでしょうか?決してそうではありません。スロット監督は、試合を終わらせる「クローザー」としての役割を遠藤選手に託しています。

リードしている試合の終盤、守備を固めて逃げ切りたい場面では、遠藤選手の高い守備力や危機察知能力が必要不可欠です。また、相手がフィジカルで押し込んでくるような特定の試合においては、スタメンの選択肢に入る可能性も十分あります。長いシーズンの中で、彼の守備力が必要になる瞬間は必ず訪れます。

グラフェンベルフが重用される戦術的理由

遠藤選手に代わって定位置を掴んだライアン・グラフェンベルフは、スロット戦術の象徴とも言える存在です。彼は本来攻撃的な選手でしたが、ボランチにコンバートされたことで才能が開花しました。

彼の最大の武器は、長い手足を活かしたキープ力と、相手の間をスルスルと抜けていく推進力です。彼が一人でボールを運べるため、チーム全体が押し上げることができます。「守備の人」ではなく「攻撃の第一歩となる人」をボランチに置くことこそが、スロット流の真髄なのです。

2024-25シーズンのキーマンたち

最後に、スロット戦術を体現し、チームの好調を支えている重要な選手たちを紹介します。彼らのパフォーマンスが、今季のタイトルの行方を左右するでしょう。

ライアン・グラフェンベルフ:中盤の再発明

今季最大のサプライズであり、MVP級の活躍を見せているのがグラフェンベルフです。これまでは才能を持て余している印象もありましたが、スロット監督の指導により守備意識が劇的に向上しました。

インターセプト数もリーグ上位を記録しており、守備で貢献しながら攻撃のスイッチを入れる、現代的な万能MFへと成長しました。彼のパフォーマンスが維持できるかが、チームの浮沈に関わってきます。

カーティス・ジョーンズ:万能型リンクマンの覚醒

生え抜きのカーティス・ジョーンズも重要な役割を担っています。高い技術とボールキープ力を持つ彼は、相手のプレスを回避する「逃げ道」として機能します。

トップ下でもボランチでもプレーでき、狭い局面でもボールを失わない彼の存在は、ポゼッションを重視する新戦術において非常に重宝されています。派手さはなくとも、チームのリズムを作る影の司令塔です。

モハメド・サラー:進化する「チャンスメーカー」

30代となっても衰え知らずのサラーですが、プレースタイルはより洗練されました。自ら得点を狙う嗅覚はそのままに、味方を使うプレーの質が向上しています。

右サイドからカットインしてシュートを狙うだけでなく、アーリークロスやスルーパスでアシストを量産。戦術の変更によってプレーの幅が広がり、より「止められない選手」へと進化しています。

フィルジル・ファン・ダイク:最強の砦にして司令塔

組織的な守備ラインを統率するのは、やはりキャプテンのファン・ダイクです。ラインを高く保ちつつ、裏へのボールには圧倒的なスピードと読みで対応します。

守備だけでなく、ビルドアップの局面でも彼の存在は絶大です。正確なロングフィードで局面を一気に打開するプレーは、スロット監督の「疑似カウンター」戦術において重要な武器となっています。

まとめ:リバプール戦術の完成度と今後の展望

まとめ
まとめ

今回は、2024-25シーズンのリバプール戦術について、スロット新監督のもとで起きた劇的な変化を詳しく解説しました。

これまでの「情熱的で激しいリバプール」の良さを残しつつ、「理性的でコントロールされた」新しい強さが加わったことで、チームはより隙のない集団へと進化しています。

【スロット戦術の重要ポイント】

1. 4-2-3-1への移行と流動性:ポジションにとらわれない柔軟な攻撃。

2. GKを含めたビルドアップ:数的優位を作り、安全かつ確実に前進する。

3. 疑似カウンター:自陣深くで相手を誘い出し、背後のスペースを突く。

4. 4-2-4のブロック守備:パスコースを消して誘導し、リスクを管理する。

シーズンが進むにつれて戦術の浸透度はさらに深まり、連携の精度も上がっていくでしょう。遠藤航選手を含めたスカッド全員の力が必要になる場面も必ず訪れます。クロップ時代の遺産を受け継ぎながら、新たな黄金期を築こうとしているリバプールの戦いから、今後も目が離せません。

タイトルとURLをコピーしました