Jリーグの試合を支える審判員は、選手と同様にピッチで走り続け、公平なジャッジを下す重要な役割を担っています。しかし、その舞台裏で彼らがどれくらいの報酬を得ているのか、詳しく知っている方は少ないかもしれません。華やかなプロの世界でありながら、審判員の待遇や生活の実態は意外と知られていないものです。
この記事では、Jリーグ 審判 年収というキーワードを軸に、プロ審判とアマチュア審判の決定的な違いや、1試合あたりの出場手当、さらには年収の決まり方について詳しく解説します。サッカーファンなら一度は気になる「審判のお金事情」を知ることで、これからの試合観戦がより深いものになるはずです。それでは、審判員の給料の仕組みを一つずつ紐解いていきましょう。
Jリーグ審判の年収相場とカテゴリーによる決定的な違い

Jリーグで笛を吹く審判員の年収は、その人が「プロ契約」を結んでいるか、あるいは「本業を持ちながら活動しているか」によって大きく異なります。Jリーグのピッチに立つ審判員はすべてがプロというわけではなく、むしろ専業で生活しているのは一握りのエリート層に限られているのが現状です。
プロフェッショナルレフェリー(PR)の年収は1,000万円を超えることも
日本サッカー協会(JFA)とプロ契約を結んでいる審判員は「プロフェッショナルレフェリー(PR)」と呼ばれます。彼らの年収は、固定の基本報酬に出場手当が加算される仕組みになっており、トップクラスになると年収2,000万円から3,000万円に達すると言われています。これは一般的な会社員の平均年収を大きく上回る金額です。
プロ審判は年間を通じて審判活動に専念できる環境が整えられています。平日はトレーニングや試合映像の分析、ルールの確認などに時間を費やし、週末の試合に向けて最高のパフォーマンスを発揮できるよう準備します。まさに「審判のプロ」として、高い技術と精神力が求められる対価として、これだけの高額な報酬が設定されているのです。
ただし、PRとして契約できる人数は非常に限られており、Jリーグ全体でも主審・副審合わせて20〜30名程度しかいません。実力主義の世界であるため、評価が低ければ契約が更新されないという厳しい側面もあります。プロ選手と同じように、常に結果を出し続けなければならないプレッシャーの中で彼らは高収入を得ていると言えるでしょう。
また、国際審判員(FIFA登録)に選出されると、ワールドカップやアジアカップといった国際大会への派遣も増えます。こうした国際舞台での活動も、彼らのキャリアと収入を支える大きな要因となっています。世界のトップレベルで活躍する審判員は、日本国内だけでなく世界基準の報酬を得る機会も持っているのです。
1級審判員の多くは本業を持つ「兼業審判」として活動
プロ契約を結んでいない審判員の多くは、普段は教職員や公務員、会社員として働きながら、週末にJリーグの試合を担当しています。これを「兼業審判」と呼びます。この場合、年収は「本業の給料 + 審判としての出場手当」の合計となります。審判としての収入だけで見ると、年間で300万円から600万円程度になるケースが一般的です。
Jリーグを担当するためには、JFAが認定する「1級審判員」の資格が必要です。1級審判員であれば、平日は通常業務をこなし、金曜日の夜や土曜日に試合会場へ移動します。多忙を極めるスケジュールの中で、コンディションを維持するのは並大抵のことではありません。彼らにとって審判活動は、経済的な利益以上に「サッカーへの情熱」が大きな原動力となっています。
兼業審判の場合、職場側の理解も不可欠です。週末だけでなく、平日に行われるルヴァンカップやACL(アジア・チャンピオンズリーグ)などの担当が入ることもあるため、有給休暇などを活用して活動しています。近年では、働き方改革やスポーツへの理解が進み、副業として審判活動を認める企業も増えてきましたが、依然として過酷な環境であることに変わりはありません。
年収面ではプロ審判に及びませんが、本業の安定した収入があるという点では、引退後のリスクが少ないというメリットもあります。それでも、週末ごとに全国各地を飛び回り、数万人の観衆の前でジャッジを下すという激務をこなす彼らの献身が、Jリーグのクオリティを支えているのは間違いありません。
審判のランク(1級~4級)で担当できるカテゴリーが変わる
日本のサッカー審判制度は、4級から1級までのライセンスに分かれています。このランクによって担当できる試合のレベルが決まり、結果として年収や報酬にも直結します。
【審判ライセンスの区分】
・1級:Jリーグ、日本代表戦、天皇杯など全ての試合
・2級:地域リーグ、都道府県のトップリーグなど
・3級:都道府県内の支部レベルの試合
・4級:市区町村レベル、少年サッカーなど
Jリーグの試合を担当できるのは原則として「1級審判員」のみです。1級審判員になるためには、各都道府県や地域の推薦を受け、厳しい体力テストや筆記試験をクリアし、数年にわたる実績を積む必要があります。この狭き門を突破した者だけが、Jリーグのピッチに立つ権利を得て、プロとしての報酬を得るスタートラインに立てるのです。
2級や3級の審判員も、大会によっては数千円から1万円程度の謝礼が出ることはありますが、それは「年収」と呼べるレベルではありません。交通費程度にとどまることが多く、ボランティアに近い形で地域サッカーを支えています。そのため、審判員として本格的に稼ぐためには、いかに早く昇級し、1級審判員としてJリーグのピッチに登り詰めるかが重要なポイントとなります。
1級審判員の中でも評価によってJ1、J2、J3と担当するカテゴリーが振り分けられます。最高峰のJ1リーグを担当することが、名誉だけでなく最も高い報酬につながるため、審判員同士の切磋琢磨も非常に激しいものがあります。ランクを上げることが、そのまま年収アップの唯一の道と言っても過言ではありません。
Jリーグ審判が受け取る報酬の具体的な内訳を解析

Jリーグの審判員の収入は、大きく分けて「試合ごとの出場手当」と、プロ契約者のみに支払われる「基本報酬」、そして「旅費・宿泊費」の3つで構成されています。具体的に1試合あたりいくらもらえるのか、その仕組みを知ることで年収のリアルな数字が見えてきます。ここでは、一般的には公開されることが少ない報酬の詳細に迫ります。
試合ごとに支払われる「出場手当(マッチ料)」の金額
Jリーグの審判員には、担当した試合ごとに「出場手当(マッチ料)」が支払われます。この金額は、担当するリーグのカテゴリー(J1・J2・J3)や、役割(主審・副審・第4の審判員)によって細かく設定されています。J1の主審であれば、1試合につき約12万円から13万円程度が支給されるのが現在の相場です。
副審や第4の審判員の場合は、主審の約半分から3分の1程度の金額になります。例えばJ1の副審であれば1試合約6万円程度です。J2リーグになると、主審で約6万円、副審で約3万円と、J1に比べて金額は大きく下がります。さらにJ3リーグではさらに低く設定されており、カテゴリー間の「格差」は非常に明確です。
年間で30試合程度を担当した場合、J1の主審であれば出場手当だけで400万円近い収入になります。これにカップ戦や天皇杯などの手当が加算されます。一方で、J2やJ3を中心に担当する審判員の場合、出場手当だけで生活を維持するのは難しいため、やはり兼業やプロ契約の基本報酬が重要になってくるのです。
プロフェッショナルレフェリーのみが受け取る「基本報酬」
先述した「プロフェッショナルレフェリー(PR)」契約を結んでいる審判員には、試合の有無にかかわらず毎月支払われる「基本報酬(固定給)」が存在します。これがプロ審判の年収を底上げする最大の要因です。基本報酬の額は個人の経験や評価によって異なりますが、年間で数百万円から1,000万円以上に設定されることもあります。
この基本報酬は、審判員がトレーニングに専念するための生活保障としての意味合いが強いものです。Jリーグの試合がないオフシーズンや、怪我で一時的に試合を担当できない期間であっても、一定の収入が保証されます。この制度があるからこそ、彼らは本業を持たずに毎日サッカーと向き合い、高いパフォーマンスを維持することができるのです。
逆に言えば、基本報酬をもらっているプロ審判は、それに見合うだけの徹底した自己管理が求められます。JFAによる定期的なフィットネステストに合格しなければならず、もし基準を下回るようなことがあれば、契約解除の可能性も出てきます。高額な基本報酬は、常に高いレベルを維持することへの対価であり、プロとしての責任の重さを象徴しています。
若手の審判員がプロを目指す最大の動機も、この基本報酬による生活の安定です。兼業審判として働きながら活動するのは体力的に限界があるため、PR契約を目指して日々研鑽を積んでいます。しかし、予算の関係上、PRの枠は限られており、実力と運の両方が必要となる非常に狭き門となっています。
遠征に伴う交通費や宿泊費などの諸手当
審判員は全国各地のスタジアムへ赴くため、移動にかかる実費も報酬とは別に支給されます。これには、自宅から会場までの往復交通費や、前泊・後泊が必要な場合の宿泊費が含まれます。Jリーグの規定に基づき、基本的には公共交通機関(新幹線や飛行機)の費用が全額カバーされる仕組みです。
また、宿泊費のほかにも「日当」という形で数千円程度の手当が出る場合もあります。これは遠征先での食費などを賄うためのもので、審判員の自己負担を軽減するために設定されています。これらの諸手当は年収(課税対象となる所得)に含まれますが、基本的には経費の補填としての性格が強いものです。
遠征は非常にハードです。例えば土曜日に九州で試合を行い、翌週には北海道で試合を担当するというケースも珍しくありません。移動時間だけで1日の大半を費やすことも多いため、交通費がしっかり支給されることは審判活動を継続する上で不可欠な要素です。近年では、移動の疲労を軽減するために、移動手段のランクアップが認められるケースもあるようです。
このように、Jリーグ審判の年収は「目に見える出場手当」だけでなく、「プロとしての固定給」や「活動を支える経費サポート」によって成り立っています。多額の報酬を得るためには、単に試合をさばくだけでなく、JFAからの高い信頼を勝ち取り、上位カテゴリーやプロ契約の座を掴み取る必要があるのです。
J1・J2・J3およびVAR担当による報酬格差の実態

Jリーグ審判の年収を語る上で避けて通れないのが、カテゴリーごとの報酬格差です。日本のトップリーグであるJ1と、育成の側面も持つJ3では、1試合あたりの単価が倍以上に異なります。また、近年導入されたVAR(ビデオアシスタントレフェリー)という新しい役割が、審判員の収入構造にどのような影響を与えているのかも注目すべきポイントです。
国内最高峰のJ1リーグにおける主審・副審の報酬
J1リーグの主審は、日本国内で最も高い出場手当を受け取ります。1試合約12万6,000円という金額は、90分間(前後の準備を含めて数時間)の労働に対する報酬としては非常に高額に見えます。しかし、J1の試合には数万人の観衆が集まり、多額の放映権料やスポンサー料が動いています。一つの判定がクラブの運命や数億円の経済効果を左右することもあるため、その責任の重さに見合った金額と言えます。
副審についてもJ1では約6万3,000円と、他のカテゴリーの主審以上の報酬が設定されています。副審はオフサイド判定という非常に繊細な技術が求められ、VARとの連携も重要になっています。現代サッカーにおける副審の役割は以前よりも複雑化しており、その専門性が高く評価されている結果です。
J1を担当する審判員は、JFAの審判委員会によって厳選されたトップ層です。年間を通じて安定してJ1のピッチに立ち続けることができれば、出場手当だけで年収500万円前後を稼ぐことができます。これにプロ契約の基本報酬が加われば、1,000万円を超える年収が現実味を帯びてきます。J1の舞台は、審判員にとってもまさに「夢の場所」なのです。
しかし、J1の審判員は常に厳しい評価にさらされています。試合後にはアセッサー(審判指導員)による詳細なレポートが作成され、判定の妥当性がスコア化されます。スコアが悪ければ、次節以降の割り当てが減らされたり、J2への降格を言い渡されたりすることもあります。高い年収を得る権利は、常に結果を出し続ける義務と表裏一体なのです。
J2・J3リーグやカップ戦での報酬設定
J2リーグにカテゴリーが下がると、報酬額は一気にJ1の約半分程度になります。主審で約6万3,000円、副審で約3万1,500円となります。J2も非常にレベルの高いプロリーグですが、興行規模の違いが審判員の報酬にも反映されています。さらにJ3リーグになると主審で4万円程度となり、若手審判員の登竜門としての色彩が強くなります。
カップ戦(ルヴァンカップ)や天皇杯についても、大会のラウンド(予選・決勝など)に応じて報酬が設定されています。特に天皇杯の決勝などは、J1リーグ戦と同等かそれ以上の高い格付けがなされます。これらの試合は週末のリーグ戦の合間に行われることが多いため、数多く担当すればその分だけ年収にプラスされます。
若手や中堅の審判員にとって、J2やJ3での活動は「将来J1で活躍するための修行期間」という意味合いも持ちます。報酬はJ1より低いものの、プロの舞台で経験を積める貴重な機会です。ここで高い評価を得ることが、将来的な昇級と年収アップへの最短ルートとなります。多くの審判員は、平日の仕事をこなしながら、この「階段」を一歩ずつ登っているのです。
また、J3やJFL(日本フットボールリーグ)などのカテゴリーでは、審判員の育成を目的として1級審判員だけでなく、有望な2級審判員が担当することもあります。彼らにとっての報酬は、金額そのものよりも「プロの基準で評価されること」に価値があると言えます。過酷な移動や低い単価にも耐え、上位カテゴリーを目指すハングリー精神が求められます。
近年導入されたVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の報酬
2020年代に入り、Jリーグ(特にJ1)でも全面的に導入されたVAR制度。これに伴い、「VAR」および「AVAR(アシスタントVAR)」という新しい役割が誕生しました。彼らはスタジアムのモニター室や集中ビデオオペレーションセンターで試合を監視し、主審をサポートします。この役割にも、しっかりとした出場手当が設定されています。
VAR担当の報酬は、主審よりは低く副審と同等かそれ以下の水準に設定されていることが多いです。具体的な金額は公表されていない部分もありますが、1試合あたり数万円程度が支給されると言われています。VARはピッチ上を走り回るわけではありませんが、高度な映像分析能力とルールへの深い理解、そして瞬時の判断力が求められる特殊な技能です。
VAR制度の導入により、審判員が「担当できる枠」が増えたことは、年収面においてポジティブな影響を与えています。例えば、土曜日に主審を務め、日曜日に別の試合でVARを担当するといったスケジュールが可能になれば、週末だけで2回分の手当を得ることができます。体力的にはハードですが、収入を増やすチャンスが広がったと言えるでしょう。
ただし、VARを担当するためには専用のトレーニングを受け、認定を受ける必要があります。また、VARの判定ミスは主審以上に批判の対象になりやすく、心理的なプレッシャーは計り知れません。年収を底上げする手段ではあるものの、それに見合うだけの高い専門性と責任が伴う職務であることは間違いありません。
プロ審判(PR)への道と契約の実態:年収以上の厳しさ

Jリーグ 審判 年収という言葉に惹かれる人は多いですが、その頂点であるプロフェッショナルレフェリー(PR)になるためには、日本国内の全審判員数万人の頂点に立つ必要があります。PR契約とはどのようなもので、その生活にはどのような実態があるのでしょうか。単なる「高給取り」ではない、プロとしての過酷な現実を解説します。
日本サッカー協会(JFA)と契約するPRとは?
プロフェッショナルレフェリー(PR)は、JFAと直接契約を結ぶ「個人事業主」です。一般的なサラリーマンのように雇用されているわけではなく、あくまで「審判業務を請け負うプロフェッショナル」という立場です。そのため、国民年金や国民健康保険への加入、確定申告なども自分で行う必要があります。
PR契約の最大の目的は、審判技術の向上とサッカー界の発展に寄与することです。JFAから高い期待を寄せられており、国内の若手審判員の指導や講習会での講師を務めることもあります。単に試合で笛を吹くだけでなく、日本の審判全体のレベルを底上げするリーダーとしての役割も期待されているのです。
PRになるためには、まず1級審判員として数年間にわたりJ1・J2でトップクラスの評価を得続ける必要があります。その上で、JFAの審判委員会から「プロとして契約する価値がある」と認められた者だけが、その座を射止めることができます。毎年数名が入れ替わるかどうかの非常に狭き門であり、技術だけでなく、人格面やリーダーシップも重視されます。
現在、PRとして活躍している審判員の中には、かつて高校教師や警察官だった人もいます。彼らは安定した公務員の地位を捨てて、あえて不安定なプロの世界へ飛び込みました。それは年収への期待だけでなく、サッカーという競技を極めたいという純粋な情熱があるからです。プロ審判の生活は、そのような強い覚悟の上に成り立っています。
契約更改と評価制度による厳しいプロの世界
PR契約は通常1年更新であり、毎年契約更改が行われます。ここでの報酬額の決定には、前年度の「アセッサー評価」が大きく影響します。アセッサーとは、試合をスタンドから監視し、審判の動きや判断、マネジメント能力を100点満点に近い形式で採点する役職です。この点数が低いと、基本報酬の減額や、最悪の場合は契約解除を言い渡されます。
「1回の誤審が人生を変える」と言っても過言ではありません。特にSNSが発達した現代では、審判への批判が可視化されやすく、メンタル面での負担は相当なものです。試合中にどれだけ正しいジャッジを続けても、一つの見落としで全てが否定されることもあります。そのような環境下で、1年間の契約を勝ち取り続けるのは、プロ選手以上に過酷なサバイバルです。
また、PRには年齢による制限も事実上存在します。審判員には高い身体能力が必要なため、40代後半から50代になるとトップリーグのスピードについていくのが難しくなります。PRとして契約し続けられる期間は限られており、引退の時期を常に意識しながら活動しなければなりません。高年収を得られる期間は決して長くはないのが現実です。
そのため、PRの審判員は日々のトレーニングに余念がありません。心拍数計を装着して走り込み、最新のルール改正を常に頭に叩き込み、過去の試合映像を何度も見返して自身の反省を行います。この「見えない努力」こそが、プロとしての高い報酬を正当化する根拠となっています。年収の高さは、そのストイックな生活への報酬でもあるのです。
定年や引退後のキャリアパスとセカンドキャリア
審判員には明確な定年はありませんが、Jリーグを担当できるのは体力的な限界を考慮して50歳前後までとされることが一般的です。引退後のセカンドキャリアは、審判員にとって極めて重要な課題です。プロ契約を結んでいた審判員の場合、引退後の収入は一気に減少するリスクがあります。
多くのトップ審判員は、引退後に「アセッサー(審判指導員)」や「審判インストラクター」として活動します。JFAの役職に就き、次世代の審判を育成する側に回るのです。しかし、これだけで現役時代と同等の収入を得るのは難しいため、サッカー関連の解説者や、講演活動、あるいは全く別の事業を立ち上げる人もいます。
兼業審判員の場合は、引退後も本業の仕事が継続できるため、生活面での不安は少ないかもしれません。しかし、プロ審判員の場合は、若いうちから引退後の資産形成やキャリア形成を考えておく必要があります。近年ではJFAも審判員のセカンドキャリア支援に乗り出していますが、プロ選手と同様に「その後」の人生設計が重要であることに変わりはありません。
一部の著名な審判員は、JFAの理事や技術委員など、組織の要職に就くこともあります。日本のサッカーをより良くするために、ピッチの上から組織の中へと活動の場を移すのです。年収という数字だけを見れば現役時代がピークかもしれませんが、サッカー界への貢献という意味では、引退後も長く活躍できる道が用意されていると言えるでしょう。
Jリーグ審判になるためのステップと過酷な業務内容

Jリーグ 審判 年収の高さに興味を持ったとしても、そこに至るまでの道のりは非常に険しく、また実際の業務内容も想像以上にハードです。週末の90分間だけが仕事ではありません。ここでは、審判員になるための具体的なステップと、Jリーグ担当審判員がどのような日常を送っているのかを紹介します。
4級から1級へ昇級するための試験とプロセス
審判員の道は、誰でも受講できる「4級審判員」の講習会から始まります。そこから3級、2級とステップアップするには、一定期間の実績と昇級試験の合格が必要です。特に2級から1級への壁は非常に高く、筆記試験や体力テストに加え、実技試験(実際の試合でのジャッジ)で高い評価を得る必要があります。
1級審判員試験に合格しても、すぐにJリーグを担当できるわけではありません。まずは地域リーグや大学サッカーなどで経験を積み、JFAの担当者によって「Jリーグで通用する」と太鼓判を押される必要があります。1級審判員の中でもJリーグの担当リストに名前が載るのはさらに絞られたメンバーであり、そこまでのプロセスには通常10年以上の歳月がかかります。
この昇級プロセス自体にはほとんど報酬が発生しません。むしろ、遠征費や講習会費を自腹で払って活動する時期が長く続きます。多くの審判員は、この「下積み時代」をサッカーへの愛だけで乗り越えてきました。Jリーグのピッチに立ち、高額な手当をもらえるようになるのは、長い無償の努力を続けた結果なのです。
また、国際審判員を目指す場合は、英語でのコミュニケーション能力も必須となります。世界のルール改正は常に英語で発信され、国際試合では他国の審判員や選手と意思疎通を図らなければなりません。技術だけでなく、知性や語学力も求められるのが現代のトップレフェリーへの道です。
週末の試合に向けた平日のトレーニングと体調管理
Jリーグの審判員は、アスリートそのものです。90分間の試合で、主審は平均して10kmから12kmを走ります。しかも、ただ走るだけでなく、常にプレーの近くにいて最適な角度からジャッジを下すために、急加速やバック走を繰り返さなければなりません。これに耐えうる身体を作るため、平日のトレーニングは欠かせません。
多くの審判員は、火曜日や水曜日に強度の高いインターバルトレーニングを行い、木曜日や金曜日にコンディショニングを整えて週末の試合に臨みます。心拍数や走行距離はウェアラブルデバイスで記録され、JFAに提出することもあります。不摂生な生活をして体調を崩したり、体重が増えすぎたりすれば、すぐに担当を外される厳しい世界です。
また、食事管理も徹底されています。遠征先での食事も栄養バランスを考え、試合直前のエネルギー摂取から試合後のリカバリーまで、プロ選手さながらの管理を行っています。審判員が試合中に足を攣ったり、バテてしまったりすることは、重大な誤審につながるリスクがあるため、許されないことなのです。
このように、年収に見合うだけの高いパフォーマンスを維持するためには、1週間のすべてを審判活動中心に回す必要があります。兼業審判員であれば、これに仕事のストレスや労働時間が加わるため、その過酷さは想像を絶します。彼らの報酬は、週末の90分だけでなく、平日の絶え間ない努力に対しても支払われていると考えるべきでしょう。
批判やプレッシャーと戦う精神面の負担
審判員にとって最も過酷なのは、肉体的な疲労よりも「精神的なプレッシャー」かもしれません。スタジアムを埋め尽くすサポーターからの怒号、敗戦したチームの監督からの厳しいコメント、そしてインターネット上の容赦ない誹謗中傷。これらすべてを真正面から受け止める強靭なメンタルが求められます。
「審判は正解して当たり前、間違えれば大罪」という空気感の中で、一瞬の判断を下し続けるのは、極めて孤独な戦いです。どんなにベテランになっても、試合前にはプレッシャーで食事が喉を通らないという審判員もいるほどです。判定の正誤を巡ってメディアで大きく取り上げられることも多く、家族にまで心ない言葉を浴びせられるケースさえあります。
JFAでは、こうした心理的負荷を軽減するためのメンタルケアプログラムも用意されていますが、最終的には自分自身で乗り越えるしかありません。審判員たちは、なぜそこまでして笛を吹き続けるのでしょうか。それは、自分のジャッジによって試合がスムーズに進行し、最高のエンターテインメントが成立した瞬間の達成感を知っているからです。
年収1,000万円や数万円の出場手当という数字は、こうした精神的な削り取りに対する「危険手当」のような側面も持っています。高年収であることは、それだけの非難を浴びる可能性を背負っていることの裏返しでもあるのです。観客として審判を見る際、そのジャッジの裏にある並々ならぬ覚悟を想像してみると、また違った見え方がしてくるかもしれません。
Jリーグ審判員は、高額な報酬を得る代わりに、私生活の制限や極度のプレッシャー、そして常に結果を求められる厳しい評価制度の中で生きています。単なる「サッカー好きの延長」では決して務まらない、真のプロフェッショナルな職業なのです。
まとめ:Jリーグ審判の年収とやりがいに注目しよう
Jリーグ審判の年収について詳しく見てきましたが、いかがでしたでしょうか。プロ契約の審判員であれば1,000万円を超える高収入を得るチャンスがありますが、それは非常に狭き門であり、過酷なトレーニングと評価制度の上に成り立っていることがお分かりいただけたかと思います。
一方で、多くの1級審判員は本業を持ちながら、サッカーへの情熱を原動力に週末のピッチに立っています。1試合あたりの出場手当は、J1であれば12万円を超えますが、カテゴリーが下がるにつれて金額も下がり、決して楽に稼げる仕事ではありません。むしろ、移動の負担や精神的なプレッシャーを考えれば、報酬以上の献身が必要とされる職務です。
次にJリーグの試合を観戦する際は、ぜひ審判員の動きや判定にも注目してみてください。彼らがどれほど正確なポジションを取り、アスリートとして選手たちに食らいついているか、そのパフォーマンスの高さに驚くはずです。年収や待遇という側面から審判を知ることは、彼らへのリスペクトを高め、サッカーをより深く楽しむための第一歩となります。選手だけでなく、審判もまた、命をかけて戦うJリーグの大切な主役なのです。




