90分間、広大なピッチを駆け巡るサッカー選手たち。彼らが一体どれほどの距離を走っているのか、気になったことはありませんか?特に、世界最高峰のリーグと称されるイングランドのプレミアリーグでは、選手たちの運動量は他のリーグを圧倒すると言われています。
この記事では、「サッカー」「走行距離」「プレミアリーグ」というキーワードを軸に、選手たちの驚異的なデータや、走行距離が試合に与える影響、そしてポジションによる違いなどを、サッカーを最近見始めた方にも分かりやすく、そして深く掘り下げて解説していきます。走行距離という視点からサッカーを見ると、戦術の奥深さや選手のすごさがより一層理解できるようになるはずです。一緒にプレミアリーグの新たな魅力を発見しにいきましょう。
プレミアリーグにおけるサッカー選手の走行距離とは?
世界中のサッカーファンを魅了するプレミアリーグ。その魅力の一つに、試合展開の速さとインテンシティ(プレー強度)の高さが挙げられます。 この激しいプレーを支えているのが、選手たちの驚異的な走行距離です。ここでは、プレミアリーグの選手たちがどれくらい走り、そのデータが何を意味するのか、そしてどうやって計測されているのかを詳しく見ていきましょう。
プレミアリーグの選手はどれくらい走る?
プレミアリーグの選手は、1試合あたり平均で約10km~13kmもの距離を走ります。 これは、一般的な市民ランナーが1時間かけて走る距離に匹敵し、90分間の試合中にそれをこなしていると考えると、その運動量の多さがうかがえます。
もちろん、これはあくまで平均値です。中には、1試合で13km以上を走破する選手も珍しくありません。 特に、攻守にわたって常にピッチを動き回ることが求められるミッドフィルダーの選手は、走行距離が長くなる傾向にあります。
このように、プレミアリーグの選手たちは、まさに超人的なスタミinaを武器に、90分間ピッチを駆け抜けているのです。
走行距離が意味するものとは?
サッカーにおける走行距離は、単に「どれだけ走ったか」を示すだけの数値ではありません。これは、選手の運動量や試合への貢献度を測る重要な指標の一つです。
走行距離が長い選手は、それだけ多くのプレーに関与している可能性が高いと言えます。例えば、守備では相手選手を追いかけ、攻撃ではスペースに走り込んでチャンスを作り出すなど、攻守にわたってチームに貢献している証となります。
また、チーム全体の走行距離も重要なデータです。 チームの総走行距離が多いということは、それだけ選手たちが連動して動き、積極的にプレッシャーをかけたり、スペースを埋めたりしていることを示します。 多くの研究で、試合に勝利したチームは敗れたチームよりも走行距離が長い傾向があることが示されており、走行距離と勝敗には相関関係があると考えられています。 ただし、必ずしも「走れば勝てる」というわけではなく、どのように、そしてなぜ走るのかという「走りの質」がより重要になります。
走行距離はどうやって測っているの?
現在、プレミアリーグをはじめとする多くのプロサッカーリーグでは、トラッキングシステムを用いて選手の走行距離やスプリント回数などをリアルタイムで計測しています。
スタジアムの屋根などに設置された複数の高性能カメラが、ピッチ上の全選手の動きを追跡します。そして、専用のソフトウェアがそのデータを解析し、走行距離、スプリント(全力疾走)の回数や最高速度、ヒートマップ(選手がよく動いた範囲)といった詳細なデータを算出するのです。
この技術の進化により、私たちはテレビ中継などでも、個々の選手の走行距離をリアルタイムで知ることができるようになりました。これらのデータを参考にしながら試合を観戦すると、選手の貢献度やチームの戦術がより深く理解でき、サッカー観戦の楽しみ方が一層広がります。
【2023-2024シーズン】プレミアリーグ走行距離ランキング
昨シーズンのプレミアリーグでは、どの選手が最もピッチを駆け巡ったのでしょうか。ここでは、2023-2024シーズンの個人、そしてチーム別の走行距離ランキングを見ていきます。ポジションによる走行距離の違いにも注目してみましょう。
選手個人ランキング
2023-24シーズンのプレミアリーグで最も長い距離を走ったのは、ニューカッスル・ユナイテッドに所属するブラジル代表MFのブルーノ・ギマランイス選手で、シーズン総走行距離は実に423kmに達しました。 これは東京から名古屋までの直線距離に匹敵するほどの長さです。
以下は、2023-2024シーズン前半戦終了時点での走行距離トップ10の選手たちです。
順位 | 選手名 | 所属クラブ | 総走行距離 |
---|---|---|---|
1位 | ジェームズ・ウォード=プラウズ | ウェストハム | 224.0 km |
2位 | デヤン・クルゼフスキ | トッテナム | 222.9 km |
3位 | デクラン・ライス | アーセナル | 221.7 km |
4位 | ブルーノ・ギマランイス | ニューカッスル | 216.1 km |
5位 | ペドロ・ポロ | トッテナム | 214.5 km |
6位 | ブルーノ・フェルナンデス | マンチェスター・U | 213.7 km |
7位 | ヴラディミール・ツォウファル | ウェストハム | 211.5 km |
8位 | パスカル・グロス | ブライトン | 211.2 km |
9位 | クリスティアン・ノアゴール | ブレントフォード | 208.3 km |
10位 | コナー・ギャラガー | チェルシー | 206.3 km |
このランキングを見ると、トップ10のうちほとんどが中盤のミッドフィルダー(MF)の選手であることがわかります。 攻守の繋ぎ役として、ピッチの中央で広範囲をカバーする必要があるため、必然的に走行距離が長くなるのです。
チーム別ランキング
選手の走行距離だけでなく、チーム全体の走行距離も戦術を分析する上で興味深いデータです。一般的に、前線から激しいプレスをかける戦術を採用するチームは、総走行距離が多くなる傾向があります。
過去のシーズンデータを見ると、マンチェスター・シティやリヴァプールといったトップチームは、選手が平均して11~12kmの距離を走るとされており、これが彼らの支配的なプレースタイルを支えています。
一方で、必ずしも走行距離が多いチームが常に上位にいるわけではありません。 例えば、2022-23シーズンでは、クリスタル・パレスの1試合あたりの平均走行距離はリーグ最下位でした。 これは、自陣に引いて守備ブロックを固める「ローブロック」戦術を多用するため、無駄な走りを減らしていた結果と考えられます。 このように、チームの走行距離は、そのチームがどのような戦術を志向しているかを知るための一つのヒントになります。
ポジション別の走行距離の違い
サッカーでは、ポジションごとに求められる役割が異なるため、1試合あたりの平均走行距離にも違いが生まれます。
- ミッドフィルダー (MF): 11km~13km。攻守の要としてピッチ全体をカバーするため、最も走行距離が長くなるポジションです。 特に、攻守両面で貢献するボランチ(守備的MF)の選手は、チームの心臓として走り続けます。
- フォワード (FW): 10km~11km。相手ディフェンスラインの裏へ抜け出す動きや、前線からの守備(プレス)など、短い距離の全力疾走(スプリント)が多くなります。
- ディフェンダー (DF): 9km~11km。相手の攻撃に対応するためのラインコントロールや、攻撃参加(特にサイドバック)などで走行距離が伸びます。
- ゴールキーパー (GK): 4km~5km。フィールドプレーヤーと比べると走行距離は短いですが、現代サッカーでは守備範囲の広さやビルドアップ(攻撃の組み立て)への参加も求められるため、決して運動量が少ないわけではありません。
走行距離が戦術に与える影響
選手の走行距離は、個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の戦術にも大きな影響を与えます。現代サッカーでは、「走る」ことが戦術の根幹をなすことも少なくありません。ここでは、走行距離と戦術の密接な関係について、具体的な例を挙げながら解説します。
ハイプレス戦術と走行距離
近年、多くのトップチームが採用しているのが「ハイプレス」戦術です。これは、相手陣内の高い位置から積極的にプレッシャーをかけてボールを奪い、ショートカウンターでゴールを狙う戦術のことを指します。
このハイプレスを機能させるためには、チーム全体が連動して走り続けることが不可欠です。 フォワードの選手は相手ディフェンダーを追いかけ、ミッドフィルダーはパスコースを限定し、ディフェンダーはラインを高く保ってコンパクトな陣形を維持します。全員が豊富な運動量を持ち、90分間走り続けなければ、この戦術は成り立ちません。
リヴァプールやマンチェスター・シティといったチームは、まさにこのハイプレスを武器に成功を収めてきました。 彼らの試合を見ると、選手たちが常に走り、相手に自由な時間とスペースを与えない様子がよくわかります。チーム全体の走行距離が多いことは、こうした積極的な守備戦術の表れなのです。
ポゼッションサッカーと走行距離
一方で、「ポゼッションサッカー」と呼ばれる、ボールを長く保持して試合を支配するスタイルのチームもあります。一見すると、ボールを回している間はあまり走らなくても良いように思えるかもしれません。しかし、実際にはポゼッションサッカーでも非常に多くの走行距離が求められます。
ボールを保持しているチームの選手たちは、パスを受けるために常に動き直し、相手のマークを外すためのランニングを繰り返さなければなりません。ボールを持っていない選手がどれだけ質の高い動き(オフ・ザ・ボールの動き)ができるかが、ポゼッションの質を高めるのです。
また、ボールを失った瞬間にすぐさま切り替えてプレスをかけ、ボールを奪い返す「即時奪回(ゲーゲンプレッシング)」も重要になります。これもまた、選手たちの高い運動量があって初めて可能になる戦術です。つまり、ボールを支配するためにも、結局は「走る」ことが基本となるのです。
走行距離が多いチームの共通点
走行距離が多いチームには、いくつかの共通点が見られます。まず、監督がインテンシティの高い(激しい)サッカーを志向していることが多い点です。選手たちに戦術的な規律と、それを実行するためのハードワークを求めます。
また、科学的なトレーニングやコンディショニング管理が進んでいることも特徴です。選手が90分間走り続けられるように、フィジカルトレーニングはもちろん、栄養管理や休息、怪我の予防にも細心の注意を払っています。
驚異的な走行距離を誇る注目選手
プレミアリーグには、その驚異的な運動量でチームを支える選手たちが数多く存在します。彼らは「ピッチ上のエンジン」や「働き者」と称され、攻守にわたって絶大な影響力を発揮します。ここでは、特に走行距離で注目すべき選手たちをピックアップしてご紹介します。
デクラン・ライス(アーセナル)
アーセナルの心臓部を担うイングランド代表MF、デクラン・ライス選手は、プレミアリーグ屈指の走行距離を誇る選手の一人です。 2023-24シーズン前半戦では、221.7kmを走破し、リーグ3位にランクインしました。
彼のすごさは、単に走行距離が長いだけではありません。守備では広大なエリアをカバーして相手の攻撃の芽を摘み、攻撃では正確なパスでリズムを作り出すなど、走りの質が非常に高いのが特徴です。 ボールを奪う能力、そして奪ったボールを的確に前線へ繋ぐ能力は世界トップクラスであり、そのすべてが豊富な運動量に支えられています。アーセナルの安定した戦いぶりは、彼の存在なくしては語れません。
ブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル)
2023-24シーズンの年間総走行距離でリーグトップに輝いたのが、ニューカッスルのブルーノ・ギマランイス選手です。 その距離は423kmにも及び、まさに「無尽蔵のスタミナ」という言葉がふさわしい選手です。
ギマランイス選手は、中盤の底でフィルター役として機能するだけでなく、機を見た攻撃参加も得意としています。 献身的にピッチを動き回り、パスを供給し、さらにはドリブルでボールを運ぶこともできる彼のプレースタイルは、ニューカッスルのダイナミックなサッカーの中心となっています。 攻守両面で常に顔を出し、チームのために走り続ける姿勢は、多くのファンから愛されています。
過去のレジェンドたちの走行距離
走行距離の計測が一般的になったのは比較的近年のことですが、過去にも驚異的な運動量で知られたレジェンドたちは数多く存在します。
例えば、元イングランド代表のフランク・ランパードやスティーヴン・ジェラードといったミッドフィルダーは、現代の選手たちにも引けを取らないほどの運動量を誇っていたと言われています。彼らは「ボックス・トゥ・ボックス」(自陣のペナルティエリアから敵陣のペナルティエリアまで動き回る選手)の代表格であり、90分間を通して攻守に関与し続けました。
走行距離を支える要素
プレミアリーグの選手たちが、なぜあれほどまでに走り続けることができるのか。その背景には、単なる才能や根性だけではない、科学的根拠に基づいた様々な要素が存在します。ここでは、驚異的な走行距離を支えるトレーニング、食事、そしてメンタルといった側面について解説します。
科学的なトレーニングとコンディショニング
現代サッカーでは、科学に基づいたトレーニングが不可欠です。選手たちは、日々のトレーニングで試合の強度に近い負荷をかけることで、90分間走り続けられる身体を作り上げています。
特に持久力を高めるためのインターバルトレーニング(高強度の運動と休息を繰り返すトレーニング)や、スプリント能力を向上させるためのトレーニングが重要視されています。また、GPS機能付きのウェアラブルデバイスを着用してトレーニング中の心拍数や走行距離、スプリント回数などを計測し、データを分析することで、各選手に最適化されたトレーニングプログラムが組まれています。
さらに、試合後のリカバリー(回復)も極めて重要です。アイシング、マッサージ、ストレッチなどを徹底し、次の試合までに身体を最高の状態に戻す「コンディショニング」が、シーズンを通して高いパフォーマンスを維持する上で欠かせません。
食事と栄養管理の重要性
トップアスリートにとって、食事はトレーニングと同じくらい重要です。選手たちの身体は、いわば高性能なエンジンであり、そのエネルギー源となるのが日々の食事です。
サッカー選手は、試合で消費する大量のエネルギーを補給するために、炭水化物を中心としたバランスの取れた食事を摂ることが求められます。試合前にはエネルギー源となるグリコーゲンを体内に蓄えるためにパスタなどを摂取し、試合後には筋肉の修復を助けるためにタンパク質を摂取するのが一般的です。
メンタルとモチベーション
どれだけ優れたフィジカルを持っていても、それを90分間最大限に発揮するためには、強いメンタルと高いモチベーションが必要です。
試合が苦しい時間帯に「もう一歩」足を踏み出せるかどうかは、技術や体力だけでなく、精神的な強さに大きく左右されます。チームのために戦うという強い意志、勝利への渇望、そしてファンへの責任感といったものが、選手たちを最後まで走らせる原動力となります。
また、監督のリーダーシップやチーム内の良好な関係も、選手のモチベーションに大きく影響します。チームとしての一体感や明確な目標があるからこそ、選手は個人の限界を超えて走り続けることができるのです。驚異的な走行距離は、フィジカルとメンタルの両方が高いレベルで融合して初めて生まれるものと言えるでしょう。
まとめ:サッカープレミアリーグの走行距離から見える現代サッカーの進化
今回は、「サッカー」「走行距離」「プレミアリーグ」をテーマに、選手たちの驚異的なデータやその背景について詳しく解説してきました。
プレミアリーグの選手たちは1試合平均10km以上を走り、その運動量はチームの戦術や勝敗に大きな影響を与えています。 特に、中盤の選手は攻守にわたって走り回り、チームの心臓としての役割を果たしています。
こうした走行距離は、GPSトラッキングシステムなどのテクノロジーによって正確に計測され、私たちのサッカー観戦をより深く、面白いものにしてくれています。 そして、その驚異的な運動量の裏には、科学的なトレーニング、徹底した栄養管理、そして強いメンタルといった様々な支えがあることもお分かりいただけたかと思います。
走行距離という一つのデータに注目するだけで、現代サッカーのインテンシティの高さや戦術の複雑さ、そして選手のプロフェッショナリズムが見えてきます。次にプレミアリーグの試合を観るときは、ぜひ選手たちの足元だけでなく、その「走行距離」にも注目してみてください。きっと、これまでとは違ったサッカーの魅力に気づくはずです。
コメント