スローインにオフサイドはない!サッカーの意外なルールをわかりやすく解説

ルールと戦術を学ぶ

サッカーの試合を観戦していると、「今のプレー、オフサイドじゃないの?」と疑問に思う瞬間はありませんか。特に、ゴール前の緊迫した場面でのスローイン。

攻撃側の選手がディフェンダーの裏へ巧みに抜け出すシーンを見て、ヒヤッとした経験がある方も多いのではないでしょうか。実はサッカーには、スローインの時にはオフサイドが適用されないという、少し意外なルールが存在します。

この記事では、「スローインとオフサイド」の関係性に焦点を当て、サッカー初心者の方にも理解しやすいように、そのルールを詳しく解説していきます。オフサイドの基本的な考え方から、なぜスローインではオフサイドにならないのか、そして、そのルールを戦術としてどう活かすのかまで、幅広くご紹介します。この記事を読めば、あなたのサッカー観戦がより一層深く、楽しいものになるはずです。

スローインにオフサイドはない!その理由とルールを徹底解説

サッカーのルールの中でも特に複雑で、多くの人を悩ませるのが「オフサイド」です。しかし、試合の再開方法の一つであるスローインの場面では、このオフサイドが適用されないという特別な決まりがあります。この章では、まずオフサイドの基本をおさらいし、なぜスローインがオフサイドの例外となるのか、その理由と公式なルールについて掘り下げていきます。

そもそもオフサイドとは?基本的なルールをおさらい

オフサイドは、ひと言でいうと「ゴール前での待ち伏せを禁止する」ためのルールです。 もしこのルールがなければ、攻撃側の選手が常に相手ゴール前に張り付き、そこにロングパスを一本通すだけで簡単に得点できてしまうかもしれません。 それでは、試合が単調なロングボールの蹴り合いになってしまいます。 オフサイドというルールがあることで、チーム全体で連携して攻撃を組み立てる必要が生まれ、サッカーというスポーツがより戦術的で面白いものになっているのです。

では、具体的にどのような場合にオフサイドの反則が取られるのでしょうか。オフサイドになるには、以下の3つの条件がすべて満たされている必要があります。

  • 場所:相手陣内にいること
  • ボールとの位置関係:ボールより前にいること
  • 相手選手との位置関係:相手チームの後ろから2人目の選手よりゴールラインに近いこと

これらの条件が揃った場所をオフサイドポジションと呼びます。 ただし、オフサイドポジションにいるだけでは反則にはなりません。味方選手からパスが出された瞬間にオフサイドポジションにいて、そのボールに触れたり、相手選手のプレーを妨害したりするなど、プレーに積極的に関与した場合に初めてオフサイドの反則が宣告されます。

なぜスローインではオフサイドが適用されないのか?

それでは、本題の「なぜスローインではオフサイドが適用されないのか?」という疑問について解説します。サッカーの競技規則では、試合の公平性を保ち、プレーを円滑に進めるために、いくつかの例外が設けられています。スローインは、その例外の一つなのです。

スローインは、ボールがタッチライン(ピッチの長い方の境界線)から完全に出た場合に、ボールを出したチームの相手チームによってプレーが再開される方法です。手でボールを投げるという特殊な状況であり、インプレー(試合が進行している状態)中のパスとは性質が異なります。

もしスローインでオフサイドが適用されると、攻撃側の選手はボールを受けるために相手ディフェンダーより後ろにいる必要があり、プレーの選択肢が著しく制限されてしまいます。これでは、試合のスムーズな再開が難しくなってしまうでしょう。そのため、スローインから直接ボールを受ける選手に対しては、オフサイドのルールは適用されないことになっています。 これにより、攻撃側はより自由にポジションを取り、戦術の幅を広げることができるのです。

競技規則にはどう書かれている?公式ルールを確認

このルールは、サッカーの国際的なルールを定めるFIFA(国際サッカー連盟)の「サッカー競技規則」の第11条「オフサイド」に明確に記載されています。

競技規則には、「オフサイドの反則ではない」場合として、以下の3つのプレーが挙げられています。

  • ゴールキック
  • コーナーキック
  • スローイン

このように、スローインは公式ルールによってオフサイドの適用外であることがはっきりと定められているのです。 したがって、審判はルールに則って判定を下すため、スローインの場面で選手がオフサイドポジションにいても、それが直接の理由で笛が吹かれることはありません。 このルールを正しく理解しておくことで、試合展開をより正確に把握し、観戦を楽しむことができます。

オフサイドが適用されない3つの特別なプレー

サッカーには、オフサイドという複雑なルールがありますが、全ての状況で適用されるわけではありません。試合の再開時に行われる特定のプレーでは、オフサイドの反則が免除されるのです。これにより、試合がよりダイナミックに、そして戦術的に展開します。ここでは、オフサイドが適用されない3つの特別なプレー、「スローイン」「ゴールキック」「コーナーキック」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

スローイン:タッチラインからの再開プレー

前述の通り、スローインから直接ボールを受けるプレーではオフサイドは適用されません。 これは、ボールがタッチラインの外から手で投げ入れられるという、特殊な再開方法であるためです。攻撃側の選手は、相手のディフェンスラインの裏、つまりオフサイドポジションでボールを受けることが許されています。

このルールがあることで、特に相手ゴールに近い位置でのスローインは、大きな得点チャンスに繋がり得ます。 長い距離を投げられる選手がいるチームは、まるでコーナーキックのようにゴール前へボールを放り込み、混乱を生み出す戦術(ロングスロー)を用いることがあります。 受け手の選手はオフサイドを気にする必要がないため、自由に動き回って相手のマークを外し、決定的なパスを受けようとします。このように、スローインは単なる試合再開の手段ではなく、戦術上非常に重要なセットプレーなのです。

ゴールキック:ゴールエリアからの再開プレー

ゴールキックも、スローインと同様にオフサイドが適用されないプレーの一つです。 ゴールキックは、攻撃側の選手が最後にボールに触れて、相手のゴールラインを越えた場合に、守備側のチームによってゴールエリア内から行われるキックで試合を再開する方法です。

この場面でオフサイドがないため、ゴールキーパーやディフェンダーは、味方選手の位置を気にすることなく、前線の選手めがけて思い切りボールを蹴り出すことができます。 例えば、足の速いフォワードを相手ディフェンスラインのギリギリに配置しておき、そこへ正確なロングキックを送ることで、一気にカウンター攻撃を仕掛けることも可能です。守備側はオフサイドトラップ(意図的にディフェンスラインを上げて相手をオフサイドに誘う戦術)を使えないため、純粋にフォワードとのスピード勝負や高さの競り合いで対応する必要があり、緊張感のある攻防が生まれます。

コーナーキック:コーナーアークからの再開プレー

コーナーキックも、オフサイドの例外となるセットプレーです。 コーナーキックは、守備側の選手が最後にボールに触れて、自陣のゴールラインを越えた場合に、攻撃側のチームに与えられます。ピッチの角にあるコーナーアークからボールを蹴り、試合を再開します。

コーナーキックのボールは、ゴールラインとほぼ同じか、それより後ろの位置から蹴り出されます。 オフサイドのルールは、ボールより前にいる選手に適用されるため、原理的にコーナーキックから直接ボールを受ける選手がオフサイドになることはほとんどありません。 このルールにより、攻撃側の選手はゴール前に密集し、ヘディングシュートなどを狙うことができます。ゴール前の狭いエリアで多くの選手がひしめき合うコーナーキックは、得点が生まれやすい、試合の中でも最大の見せ場の一つと言えるでしょう。

プレーの種類 オフサイドの適用 プレーの概要
スローイン 適用されない タッチラインからボールが出た際の再開プレー
ゴールキック 適用されない ゴールラインを攻撃側が出した際の再開プレー
コーナーキック 適用されない ゴールラインを守備側が出した際の再開プレー
フリーキック 適用される ファウルがあった際の再開プレー

スローインでオフサイドがないことを利用した戦術

スローインにオフサイドがないというルールは、単なる例外規定ではありません。これを戦略的に活用することで、チームは大きな攻撃のチャンスを生み出すことができます。特に相手ゴールに近いエリアでのスローインは、得点に直結する可能性を秘めた重要なセットプレーとなります。ここでは、オフサイドがないという特性を活かした具体的な戦術について解説します。

ロングスロー戦術とは?

ロングスローとは、その名の通り、スローインで長い距離のボールを投げる戦術のことです。 腕の力が強い、あるいは全身をうまく使って遠投できる選手がいるチームは、これを強力な武器として用います。 相手のペナルティエリア近くまでボールを投げ込むことができれば、それはもはや手で投げるコーナーキックのようなものです。

オフサイドがないため、攻撃側の選手はゴール前に集まり、相手ディフェンダーと競り合います。ボールが直接ゴールに入ることはありませんが、味方選手が頭で合わせたり、こぼれ球を押し込んだりすることで得点を狙います。 低くて速い弾道のロングスローは、相手ディフェンダーにとってはクリアしづらく、ゴール前で混戦を生み出しやすいという特徴もあります。 このように、ロングスローは単にボールを前に運ぶだけでなく、一気に得点機を創出するための効果的な戦術なのです。

相手ディフェンスラインの裏を狙う動き

スローインの場面では、オフサイドがないため、攻撃側の選手は相手ディフェンスラインの裏のスペースを大胆に狙うことができます。通常のプレー中であればオフサイドになってしまうような、ゴールキーパーと最終ラインの間のスペースへ走り込む動きが有効になります。

例えば、スローワー(ボールを投げる選手)がボールを持った瞬間に、フォワードの選手が相手ディフェンダーの背後へ向かって走り出します。スローワーは、その選手の足元やスペースへ、タイミング良くボールを投げ込みます。ボールを受けた選手は、オフサイドを気にすることなく、そのままゴールに向かってドリブルで仕掛けたり、中央へクロスボールを送ったりすることができます。この動きは、守備側にとってはマークがつきにくく、一瞬の隙を突かれると決定的なピンチに繋がりかねないため、非常に警戒が必要です。

スローインを受ける選手のポジショニング

オフサイドがないスローインでは、ボールを受ける選手のポジショニングが極めて重要になります。通常のプレーであれば、常に相手のディフェンスラインを意識しながらポジションを取る必要がありますが、スローインの際はその制約がありません。

そのため、相手ディフェンダーの死角にポジションを取ったり、あえて密集地帯から少し離れた場所でフリーになったりするなど、より創造的な動きが可能になります。また、複数の選手が連動して動くことで、相手の守備を混乱させることもできます。例えば、一人の選手がおとりとなって相手ディフェンダーを引きつけ、その結果生まれたスペースに別の選手が走り込んでボールを受ける、といったプレーです。スローワーは、これらの味方の動き出しをよく見て、最も効果的な場所へ正確にボールを投げ入れる技術が求められます。

こんな時どうなる?スローインとオフサイドの境界線

「スローインから直接ボールを受ける場合はオフサイドにならない」ということはご理解いただけたかと思います。しかし、サッカーの試合では常に状況が変化し、一見すると判断が難しいグレーな場面も発生します。ここでは、スローインに関連する少し複雑なケースを取り上げ、オフサイドのルールがいつから適用されるのか、その境界線について解説します。

スローインを一度他の選手が触った場合は?

ここが非常に重要なポイントです。スローインのオフサイド無効が適用されるのは、スローワーから直接ボールを受けた最初のプレーヤーまでです。

つまり、スローインを受けた選手が、ヘディングや足元でコントロールして、オフサイドポジションにいる別の味方選手にパスを出した場合、そのパスを受けた選手はオフサイドの反則となります。 スローインという特別な状況は、ボールが他の選手に触れた瞬間に終了し、そこからは通常のインプレーと同じルールが適用されるのです。

スローイン → 味方A選手が受ける(オフサイドポジションでもOK) → 味方A選手がオフサイドポジションにいる味方B選手へパス → 味方B選手はオフサイド

このルールを知らないと、「スローインからの流れなのに、なぜオフサイドなの?」と混乱してしまうかもしれません。最初のプレーと、その後のセカンドプレーでは、オフサイドのルール適用が変わることを覚えておきましょう。

スローインを受けた選手がオフサイドポジションにいたら?

この質問は、少し言葉の捉え方が難しいかもしれません。前述の通り、スローインのボールを直接受ける選手が、たとえオフサイドポジションにいても反則にはなりません。

しかし、試合を観ていると、スローインの直後に主審が笛を吹くことがあります。これはオフサイドと勘違いされがちですが、実際には別の反則が起きている可能性が高いです。 よくあるのが、以下のようなケースです。

  • ファウルスロー(不正な投げ方): ボールを両手で持っていなかった、両足が地面から離れていた、などスローインの規定の投げ方を守れていなかった場合。
  • 相手選手への妨害: スローインをしようとする選手の邪魔をした場合。相手選手はスローインの地点から2メートル以上離れなければなりません。
  • スローワーの2度触り: 投げた選手が、他の誰もボールに触れる前に、再びボールに触ってしまった場合。

これらの反則があった場合、笛が吹かれ、相手チームのボールとなって試合が再開されます。

スローインから直接ゴールは認められる?

これもよくある疑問の一つです。結論から言うと、スローインのボールが、誰にも触れずに直接相手のゴールに入っても、得点とは認められません。

この場合、試合は相手チームのゴールキックで再開されます。 もし、スローインのボールが誰にも触れずに直接自陣のゴールに入ってしまった場合は、オウンゴールとはならず、相手チームのコーナーキックで試合が再開されます。

得点になるためには、スローインのボールがピッチに入った後、スローワー以外の他の選手(味方でも相手でも可)が少なくとも一度ボールに触れる必要があります。このルールがあるため、ゴール前のロングスローでは、多くの選手がボールに触ろうと競り合う光景が見られるのです。

まとめ:スローインとオフサイドの関係を理解してサッカー観戦をもっと楽しもう

この記事では、「スローインとオフサイド」というキーワードを軸に、サッカーの少し複雑なルールについて解説してきました。最後に、今回の重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • 基本ルール: サッカーには「オフサイド」という待ち伏せを禁止するルールがありますが、スローインから直接ボールを受ける場合には適用されません。
  • 適用されない他のプレー: スローインの他に、ゴールキックコーナーキックもオフサイドの例外となる特別なプレーです。
  • ルールの境界線: オフサイドが無効になるのは、あくまでスローインから直接ボールを受けた最初の選手までです。その選手がさらに別の味方にパスを出した場合は、通常通りオフサイドが適用されます。
  • 戦術的な活用: このルールを利用して、相手ディフェンスの裏を狙ったり、ロングスローでゴール前のチャンスを演出したりと、スローインは重要な攻撃の起点となり得ます。
  • その他の注意点: スローインから直接ゴールに入れても得点にはならず、ファウルスローなどの反則でプレーが止まることもあります。

「オフサイド」はサッカーの中でも特に理解が難しいルールの一つですが、スローインのような例外を知ることで、試合の見方が大きく変わってきます。なぜ選手があのようなポジションを取るのか、なぜ審判は笛を吹かないのか、その理由がわかると、プレーの意図や戦術の奥深さが見えてくるはずです。

次にサッカーを観戦する機会があれば、ぜひスローインの場面に注目してみてください。選手たちの駆け引きや、オフサイドがないことを利用した巧みなプレーに気づくことができれば、これまで以上にサッカー観戦が楽しくなることでしょう。

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