「チームの中で自分だけリフティングができない」と悩んでいる選手や、「うちの子はリフティングが苦手で、サッカーの試合でも活躍できないんじゃないか」と心配されている保護者の方は非常に多くいらっしゃいます。周りのチームメイトが軽々とボールを操っている姿を見ると、焦りや劣等感を感じてしまうのは当然のことです。
しかし、結論からお伝えすると、リフティングが苦手でもサッカーの試合で大活躍している選手は世界中に存在します。リフティングの回数がそのままサッカーの実力に直結するわけではありません。
この記事では、「リフティングできないサッカー選手」というキーワードをテーマに、なぜリフティングができなくても大丈夫なのかという真実と、それでも練習することのメリット、そして誰でも必ず上達できる具体的なコツを優しく解説します。焦らず、自分のペースでサッカーと向き合うためのヒントを持ち帰ってください。
リフティングできないサッカー選手は実在するのか?

「プロのサッカー選手なら、リフティングなんて無限にできるに違いない」と思っていませんか?実は、プロの世界でもリフティングがあまり得意ではない選手は実在します。もちろん、プロ選手ですので「3回しかできない」といったレベルではありませんが、華麗なトリック技ができたり、ボールを何時間も落とさずにいられたりする選手ばかりではないのです。
「できない」の定義を正しく理解する
まず、「リフティングができない」という言葉の定義を少し整理してみましょう。一般的に私たちがイメージする「リフティングができる」状態とは、ボールを地面に落とさずに突き続けることですが、これには大きく分けて二つの種類があります。
1. 基本的なボールコントロールとしてのリフティング
インステップ(足の甲)やインサイド、太ももなどを使って、ボールを落とさずにコントロールする基礎技術。
2. パフォーマンスとしてのフリースタイル・リフティング
空中でボールをまたいだり、首の後ろに乗せたりといった、曲芸のような高度なトリック技。
プロ選手の中で「リフティングが苦手」と言われる場合、多くは後者の「派手なパフォーマンスはできない」という意味を含んでいます。一方で、前者の基礎的なコントロールに関しては、プロであれば最低限のレベルはクリアしています。しかし、ここが重要なポイントですが、その「最低限」の基準は、みなさんが想像するよりもシンプルなものかもしれません。
プロ選手とリフティングの関係性
実際に、かつて日本代表としてワールドカップに出場した選手の中にも、子供の頃はリフティングが100回もできなかったと語る選手がいます。また、屈強なディフェンダーやゴールキーパーの中には、足元の細かい技術よりも、フィジカルの強さやポジショニングの良さ、戦術理解度で評価されている選手がたくさんいます。
海外の有名な元ドイツ代表選手でも、「リフティングは下手だったけれど、ブンデスリーガで長くプレーできた」と公言している指導者がいます。彼らは「試合でリフティングをする場面はない」と割り切り、ヘディングの競り合いや、相手からボールを奪うタックル、的確なパスといった「試合で勝つためのスキル」を極めることに時間を費やしました。
リフティングが下手でも評価される選手の特徴
では、リフティングが苦手でも活躍できる選手にはどのような特徴があるのでしょうか。彼らに共通しているのは、「サッカーの本質」を理解している点です。サッカーはボールを地面に落とさない時間を競うスポーツではありません。相手ゴールにボールを入れ、自陣のゴールを守るスポーツです。
例えば、足元の技術が多少不格好でも、誰よりも早くボールの落下地点に入ることができる選手や、泥臭く体を張ってゴールを守れる選手は、チームにとって欠かせない存在となります。リフティングの回数コンテストでは優勝できなくても、試合のMVPにはなれるのです。この事実を知るだけで、少し心が軽くなりませんか?
次のセクションでは、より具体的に「試合での必要性」について掘り下げていきましょう。
サッカーの試合でリフティング技術は本当に必要なのか

「試合中にリフティングができなくて困った」という経験がある人は、実は少ないのではないでしょうか。実際のサッカーの試合において、リフティングそのものの動作が求められるシーンは極めて稀です。
試合中にボールを浮かせ続ける場面は少ない
サッカーの試合の90分間の中で、ボールが空中に浮いている時間はそれなりにありますが、選手がその場でトントンとボールを真上に突き上げ続けるシチュエーションはまずありません。もし試合中にそんなことをしていれば、すぐに相手ディフェンダーに寄せられてボールを奪われてしまうでしょう。
実戦で求められるのは、浮いてきたボールをピタリと足元に収める「トラップ」の技術や、バウンドしたボールをダイレクトに味方へ蹴る「ボレーパス」の技術です。これらはリフティングの要素を含んではいますが、リフティングそのものではありません。
必要なのは「ボールを止める・運ぶ」技術
サッカーにおいて最も重要な基礎技術は、「止める(トラップ)」と「蹴る(パス・シュート)」、そして「運ぶ(ドリブル)」の三つです。これらはすべて、地面にあるボール、もしくは地面に向かって落ちてくるボールを扱う技術です。
リフティングが何千回できても、転がってくるボールを正確にトラップできなければ試合では使えません。逆に、リフティングが10回しかできなくても、味方からの強いパスを足元にピタッと止めて、素早く次のプレーに移れる選手の方が、実際の試合では「上手い選手」として重宝されます。
リフティングが上手い=サッカーが上手いわけではない
ここが非常に誤解されやすいポイントですが、リフティングの回数とサッカーの総合力はイコールではありません。リフティングは、あくまで閉ざされた空間で、自分とボールだけで完結する動作です。一方、サッカーの試合には「相手」がいて「味方」がいて「スペース」があります。
リフティングが得意な「リフティングマスター」が、必ずしも良いサッカー選手になれないのは、試合中に必要な「判断力」や「戦術眼」がリフティングだけでは養われないからです。リフティングができないからといって、サッカー選手としての可能性が閉ざされているわけでは全くありません。
それでもリフティング練習をすべき重要な理由

ここまで「リフティングができなくても試合では活躍できる」とお伝えしてきました。しかし、それでもなお、世界中のサッカーコーチは子供たちにリフティングの練習を推奨します。それはなぜでしょうか?
「試合で使わないなら練習しなくていいじゃないか」と思うかもしれませんが、リフティングにはサッカー上達に欠かせない「隠れたメリット」がたくさんあるのです。ここからは、その理由を4つのポイントに分けて解説します。
ボールの芯(中心)を捉える感覚を養う
これがリフティング練習を行う最大の目的と言っても過言ではありません。ボールを真っ直ぐ上に蹴り上げるためには、ボールの重心、つまり「芯」を足の「芯(スイートスポット)」で捉える必要があります。
もしボールの芯から少しでもずれた場所を蹴ってしまうと、ボールには回転がかかり、あさっての方向へ飛んでいってしまいます。リフティング練習を繰り返すことで、足のどの部分で、どのくらいの力加減で触れればボールがどう動くのかという「ボール感覚」が研ぎ澄まされます。この感覚は、パスやシュート、トラップの精度に直結する非常に重要な能力です。
身体のバランスとコーディネーション能力の向上
リフティングをしている時、選手は基本的に片足立ちの状態になります。軸足(地面に着いている足)で身体全体を支えながら、もう片方の足でボールをコントロールしなければなりません。ボールが少し左右にずれたら、素早く軸足を動かして体勢を立て直す必要もあります。
この動作は、優れたバランス感覚と、脳からの指令をスムーズに筋肉に伝える「コーディネーション能力」を鍛えるのに最適です。試合中、相手と競り合いながらでも倒れずにプレーできる強さは、こうした地道なバランス練習から生まれます。
ボールタッチの柔らかさを手に入れる
上手な選手のリフティングを見ていると、ボールが足に吸い付いているかのように見えませんか?これは足首や膝を柔らかく使い、ボールの勢いを吸収しているからです。リフティング練習を通じて、足首の力を抜くタイミングや、膝のクッションの使い方を覚えることができます。
「柔らかいタッチ」は、強烈なパスを足元に収めるトラップの技術にそのまま応用できます。ガチガチに力が入った足ではボールは大きく跳ね返ってしまいますが、リフティングで培った柔らかい足の使い方ができれば、難しいボールも自分のものにできるようになります。
自信につながりメンタル面でもプラスになる
技術的なこと以上に大切なのが、このメンタル面への効果です。リフティングは努力の結果が数字(回数)として明確に表れます。「昨日は5回だったけど、今日は7回できた!」という小さな成功体験は、子供たちや初心者にとって大きな自信になります。
「練習すればできるようになる」という実感は、サッカー以外のプレーや勉強など、他の分野における挑戦意欲にも繋がります。また、ボールを自分の意のままに操れるようになると、試合中にボールが飛んできても「怖い」と思わなくなり、落ち着いてプレーできるようになります。この「心の余裕」こそが、リフティング練習がもたらす最大のギフトかもしれません。
リフティングができない人に共通する原因と特徴

「練習しているのに全然回数が伸びない」「いつも2、3回で終わってしまう」という方には、実は共通した原因があります。闇雲に回数だけを追うのではなく、なぜ続かないのかというフォームや意識の問題点を見直すことが、上達への近道です。
足首が固定されすぎている、またはグラグラしすぎている
リフティングにおいて足首の使い方は非常に重要です。初心者に多いのが、足首がプランプランに伸びきった状態で、つま先(爪先)でボールを突いてしまうケースです。これではボールにバックスピンがかかりすぎて自分の方へ飛んできたり、制御不能な回転がかかったりします。
インステップ(足の甲)で蹴る瞬間は、足首を少し伸ばして固定し、平らな面を作る必要があります。 テニスラケットの面を作るようなイメージです。しかし、蹴る前後までガチガチに固めていると膝のクッションが使えません。「インパクトの瞬間だけ面を作る」という感覚が掴めると、ボールは安定して真上に上がるようになります。
ボールを高く上げすぎている
回数を続けようと必死になるあまり、ボールを頭の高さやそれ以上に高く蹴り上げていませんか?ボールが高く上がれば上がるほど、落下してくるスピードは速くなり、次に蹴る時のタイミング合わせが難しくなります。
また、高く上がるとボールが左右にぶれる可能性も高まります。初心者のうちは、ボールの高さを「膝から腰の間」くらいに抑えるのがコツです。低く、一定のリズムで蹴ることで、安定して芯を捉え続けることができるようになります。
膝が伸びきって棒立ちになっている
上手な人のリフティングは、リズムに乗っているように見えます。これは膝を柔らかく使い、身体全体でリズムを取っているからです。対照的に、リフティングができない人は膝がピンと伸びきった「棒立ち」の状態になっていることが多いです。
膝が伸びていると、ボールが少しずれた時に素早く反応できません。また、着地の衝撃を吸収できないため、動作がぎこちなくなります。リラックスして膝を軽く曲げ、小刻みにステップを踏める状態を作っておくことが大切です。
練習環境や靴の影響
意外と見落としがちなのが、練習している環境と靴です。例えば、ランニングシューズや厚底のスニーカーは、つま先が反り上がっている形状のものが多く、ボールの中心を捉えるのが難しくなります。リフティングの練習をする際は、底が平らなフットサルシューズや、トレーニングシューズを履くことをおすすめします。
また、風が強い日や、凸凹した地面での練習は上級者でも難しいものです。最初は風の影響を受けにくい場所や、平らな地面を選んで練習することで、変な癖がつかずに正しいフォームを身につけることができます。
今日からできる!リフティング克服のための段階的練習法

原因がわかったところで、具体的な練習方法を見ていきましょう。いきなり「落とさずに10回」を目指す必要はありません。スモールステップで少しずつ感覚を養っていくことが、最終的には一番の近道になります。
まずはワンバウンド・リフティングから
ボールを連続して蹴るのではなく、一回蹴り上げるごとに地面にバウンドさせる練習法です。「蹴る→バウンド→蹴る→バウンド」のリズムで行います。
この練習のメリットは、次のキックまでの準備時間が長く取れることです。ボールの落下地点にしっかりと移動し、正しい姿勢でボールを待つことができます。これが10回以上連続でできるようになったら、かなりボールの中心を捉える感覚が身についている証拠です。
手を使って「落として蹴ってキャッチ」
次はノーバウンドに挑戦しますが、連続では行いません。「手から落とす→足で蹴る→手でキャッチ」を繰り返します。
右足で1回蹴ってキャッチ、左足で1回蹴ってキャッチ。これを丁寧に繰り返してください。ここで重要なのは、「ボールを迎えに行かない」ことです。ボールを蹴る時に足が高く上がりすぎると、身体が後傾してバランスを崩します。ボールが落ちてくるのを待ち、膝から下の振りだけでコンパクトに蹴る感覚を掴みましょう。
慣れてきたら「右・右・キャッチ」「左・左・キャッチ」「右・左・キャッチ」と回数を増やしていきます。手でキャッチすることで、毎回リセットして正しいフォームを確認できます。
利き足だけでなく逆足も使うタイミング
リフティング練習を始めると、どうしても得意な利き足ばかりを使ってしまいがちです。しかし、片足だけで練習を続けると、軸足の負担が大きくなり、身体のバランスも悪くなります。
早い段階から、苦手な方の足(逆足)も積極的に使いましょう。「利き足で3回やるなら、逆足でも1回はやる」といったルールを自分で決めると良いでしょう。逆足を使うことで脳が刺激され、結果的に利き足の技術向上にも繋がることがわかっています。両足でバランスよくボールを触れるようになると、リフティングの回数は飛躍的に伸びていきます。
毎日5分継続するためのコツ
リフティングは「1週間に1回、2時間の猛特訓」をするよりも、「毎日5分」練習する方が圧倒的に上達します。ボール感覚は、日を空けるとすぐに鈍ってしまうからです。
継続のヒント:
玄関にボールを置いておき、出かける前や帰ってきた時に必ず触るようにする、テレビのCMの間だけ座ってボールを触るなど、生活の中に「ボールを触る」習慣を組み込みましょう。
また、ネットに入れたボールを使うのも一つの手です(ボールがどこかへ飛んでいかないため、室内でも練習しやすくなります)。とにかく「ボールに触れている時間」を増やすことが、上達への唯一にして最大の近道です。
まとめ:リフティングできないサッカー選手も技術を磨けば輝ける
最後に、ここまでの内容を振り返りましょう。
「リフティングできないサッカー選手」は、決してダメな選手ではありません。プロの世界でも、リフティング技術より実戦的なスキルを磨いて活躍している選手はたくさんいます。サッカーの本質は「試合に勝つこと」であり、「リフティング大会で優勝すること」ではないからです。
しかし、リフティング練習が無駄かというと、決してそうではありません。ボールの芯を捉える技術、身体のバランス、そして何より「自分はできる」という自信を育むために、リフティングは非常に有効なトレーニングです。
大切なのは、リフティングの回数そのものを目的にしないことです。 回数はあくまで、日々の努力の結果としてついてくる「おまけ」のようなものです。今日3回しかできなくても、明日4回できればそれは素晴らしい成長です。
もし今、リフティングができなくて悩んでいるなら、まずは「ワンバウンド」や「手でキャッチ」といった簡単な練習から始めてみてください。焦らず、楽しみながらボールと触れ合う時間を増やしていけば、必ず道は開けます。リフティングができなくてもサッカーは楽しめますし、上手くなれます。自信を持ってピッチに立ちましょう!




