プレミアリーグを観戦していると、「あの選手はイエローカードがたまって次の試合に出られない」といった解説を耳にすることがありますよね。これは、プレミアリーグにカードの累積による出場停止ルールが定められているためです。
このレギュレーションを知ることで、各チームの選手起用や戦術、さらにはシーズン終盤の優勝争いや残留争いの行方をより深く楽しむことができます。一見すると少し複雑に感じるかもしれませんが、ルールはいくつかのポイントに整理されています。
この記事では、世界最高峰のサッカーリーグであるプレミアリーグのカード累積レギュレーションについて、サッカー観戦を始めたばかりの方にも理解しやすいように、具体的な枚数や試合数を交えながら、やさしく解説していきます。
プレミアリーグのカード累積レギュレーションの基本
プレミアリーグの試合をエキサイティングにする要素の一つに、審判が提示するカードがあります。これは選手のプレーに対する懲戒罰を示すもので、イエローカードとレッドカードの2種類が存在します。これらのカードは、ただその場のプレーを罰するだけでなく、シーズンを通して累積されていき、選手の出場機会に直接影響を与えます。まずは、それぞれのカードがどのような意味を持つのか、基本的な部分から見ていきましょう。
イエローカード(警告)とは?
イエローカードは、「警告」を意味するカードです。サッカーのルールでは、反スポーツ的行為に対して提示されます。具体的には、以下のようなプレーが対象となります。
- 危険な方法でのプレー(ラフプレー)
- 失点やチャンスを防ぐための意図的なハンド
- シミュレーション(ファウルを受けたように見せかける行為)
- 審判の判定に対する執拗な抗議
- プレーの再開を遅らせる遅延行為
1試合の中で同じ選手がイエローカードを2枚提示されると、後述するレッドカードが提示され、その試合は退場となります。プレミアリーグでは、このイエローカードがシーズンを通して累積されていき、一定の枚数に達すると出場停止処分が科せられるのです。
レッドカード(退場)とは?
レッドカードは、「退場」を意味するカードです。これは非常に重い罰則であり、提示された選手はその試合から退場しなければならず、チームは残りの時間を一人少ない人数で戦うことになります。レッドカードが提示されるのは、主に以下のような悪質なプレーです。
- 著しく不正なプレー(相手選手の安全を脅かすような非常に危険なタックルなど)
- 乱暴な行為(相手選手を殴る、蹴るなど)
- 相手選手や審判への唾吐き行為
- 決定的な得点機会の阻止(DOGSO – Denial of an Obvious Goal-Scoring Opportunity)
- 侮辱的、虐待的、または軽蔑的な言動やジェスチャー
- 同じ試合で2枚目のイエローカードを受ける
レッドカードを提示された選手は、その試合の退場に加えて、次の試合以降も出場停止となります。この出場停止の試合数は、違反行為の深刻さによって変動します。
イエローカードとレッドカードの違い
イエローカードとレッドカードの最も大きな違いは、罰則の深刻さと即時性です。
項目 | イエローカード(警告) | レッドカード(退場) |
---|---|---|
意味 | 警告 | 退場 |
試合への影響 | プレーは続行可能(ただし累積に注意) | 即時退場し、チームは数的不利になる |
出場停止 | シーズン中の累積枚数に応じて発生 | 即時に発生(最低1試合以上) |
提示される状況 | 反スポーツ的行為、危険なプレーなど | 著しく不正なプレー、乱暴な行為、2枚目の警告など |
イエローカードはあくまで「次はないですよ」という警告ですが、レッドカードはその場で試合から排除される最終通告です。プレミアリーグの激しい攻防の中では、一瞬の判断ミスや感情の昂りがこれらのカードに繋がり、試合結果やチームのシーズン戦略にまで大きな影響を及ぼすことがあるのです。
イエローカード累積による出場停止ルール
プレミアリーグのイエローカード累積ルールは、他の国のリーグと比較して少し特徴的です。 シーズンを特定の期間で区切り、その時点までに受けたイエローカードの枚数によって出場停止試合数が決まる段階的なシステムが採用されています。 このルールを理解することが、シーズン中の選手の起用法やチームの台所事情を読み解く上で重要になります。
19試合までの「5枚」の壁
シーズンが開幕してから、各チームがリーグ戦19試合を消化するまでが最初の区切りとなります。 この期間内にイエローカードの累計が5枚に達してしまった選手は、次のリーグ戦1試合の出場停止処分を受けます。
シーズン序盤は、新しい戦術への適応やコンディション調整が難しい時期でもあり、不用意なファウルが増えがちです。特に中盤で激しいボールの奪い合いをする守備的な選手や、前線から積極的にプレスをかけるフォワードの選手は、この「5枚の壁」を常に意識しながらプレーする必要があります。監督にとっても、主力選手が重要な試合で出場停止にならないよう、カードの枚数を管理しながら起用を考えるというマネジメント能力が問われます。
32試合までの「10枚」の壁
リーグ戦の折り返し地点である19試合目を過ぎると、「5枚での出場停止」というルールはなくなります。 例えば、19試合終了時点で4枚のイエローカードを受けていた選手は、20試合目以降に5枚目をもらっても出場停止にはなりません。
しかし、次に待ち受けるのがリーグ戦32試合目までという2つ目の区切りです。 この期間内にイエローカードの累計が10枚に達した選手は、次のリーグ戦2試合が出場停止となります。 1試合ではなく2試合の出場停止となるため、チームにとってはより大きな痛手となります。シーズンも終盤に差し掛かり、優勝争いや残留争いが激化する中で主力選手が2試合も離脱することは、チームの成績に深刻な影響を与えかねません。この時期になると、解説者やファンの間でも「あの選手はあと1枚で出場停止」といった話題が頻繁にのぼるようになります。
シーズン終了までの「15枚」の壁
リーグ戦32試合を過ぎると、「10枚での出場停止」というルールも適用されなくなります。そして、シーズン終了までに適用される最後のルールが、累計15枚のイエローカードによるものです。
シーズンを通してイエローカードの累計が15枚に達した選手は、次のリーグ戦3試合が出場停止となります。 さらに、もし累計が20枚に達した場合は、FA(イングランドサッカー協会)の独立規制委員会によって出場停止期間が別途決定されるという、非常に厳しい処分が待っています。 シーズン終盤の数試合に出場できないことは、個人の成績だけでなく、チームの最終順位を大きく左右する可能性を秘めています。
32節までに10枚到達 → 2試合の出場停止
シーズン終了までに15枚到達 → *3試合の出場停止
出場停止となる試合は?
イエローカードの累積による出場停止が適用されるのは、プレミアリーグの試合のみです。例えば、プレミアリーグでイエローカードが5枚たまって出場停止になったとしても、その後のFAカップやカラバオカップ(リーグカップ)の試合には出場することができます。
この点は、後述するレッドカードによる出場停止とは異なる重要なポイントです。チームのスケジュールによっては、リーグ戦の出場停止期間中にカップ戦が組まれていることもあり、選手はコンディションを維持しながら次のリーグ戦復帰に備えることができます。ただし、監督やコーチ陣がイエローカードを累積させた場合、その出場停止はリーグやカップ戦を問わず適用されることがあります。
リセットされるタイミングはある?
プレミアリーグのイエローカード累積は、シーズンをまたいで持ち越されることはありません。新シーズンが開幕すると、すべての選手が0枚の状態からスタートします。
シーズン中においては、「リセット」という表現が使われることがありますが、これは少し注意が必要です。 例えば、19試合目が終わった時点で、それまでのカード枚数がすべて0になるわけではありません。 あくまで「5枚に達した場合の出場停止」というルールが適用されなくなるだけで、カウント自体は継続されます。 19試合終了時点で4枚だった選手は、その後も4枚の状態からカウントが続き、32試合目までに合計10枚に達すれば2試合の出場停止処分が科されることになります。
レッドカードによる出場停止ルール
レッドカードは、選手に提示される罰則の中で最も重いものです。提示された選手は即座にピッチを去らなければならず、チームは残りの時間を数的不利な状況で戦うことを強いられます。 さらに、レッドカードによる退場処分には、次の試合以降の出場停止という追加のペナルティが伴います。この出場停止試合数は、退場の原因となったプレーの内容によって異なります。
一発レッドカードの場合
イエローカードを1枚も受けていない状態から、一度のプレーで直接レッドカードが提示されることを「一発レッド」と呼びます。この場合、違反行為の悪質性に応じて出場停止の試合数が定められています。
主な違反行為と出場停止試合数の目安は以下の通りです。
違反行為の種類 | 内容 | 出場停止試合数(目安) |
---|---|---|
DOGSO | 決定的な得点機会の阻止(プロフェッショナルファウル) | 1試合 |
SFP / VC | 著しく不正なプレーや乱暴な行為(危険なタックルや暴力行為など) | 3試合 |
その他 | 審判や相手選手への侮辱的・攻撃的な言動、唾吐き行為など | 3試合以上(内容により変動) |
特に、相手選手の安全を脅かすような危険なプレーや暴力行為に対しては、厳しい処分が下されます。これらの行為による出場停止は、原則として国内のすべての公式戦(プレミアリーグ、FAカップ、カラバオカップ)に適用されるという点が、イエローカード累積による出場停止との大きな違いです。
イエローカード2枚による退場の場合
1つの試合の中で、同じ選手がイエローカードを2枚提示された場合も、レッドカードが提示され退場となります。この「警告2回による退場」の場合、出場停止は原則として次の1試合となります。
この場合の出場停止も、基本的にはそのカードが提示された大会(プレミアリーグの試合なら次のプレミアリーグの試合)に適用されます。一発レッドカードのような悪質な行為とは見なされないため、出場停止の試合数も最小限に抑えられています。しかし、試合の重要な局面で退場者を出してしまうと、チームが受けるダメージは計り知れません。たとえ1試合の出場停止であっても、チームの戦力ダウンは避けられないのです。
違反行為の深刻さで変わる出場停止試合数
レッドカードによる出場停止試合数は、あくまで基本的な目安であり、違反行為の深刻さや悪質性によっては、FAによる裁定でさらに重い処分が科されることがあります。例えば、相手選手に怪我を負わせるような極めて危険なタックルや、人種差別的な発言などの非常に反スポーツ的な行為があった場合、3試合を超える長期の出場停止処分や、罰金が科されることもあります。
逆に、クラブ側はレッドカードの判定に不服がある場合、FAに異議申し立てを行うことも可能です。映像などを用いて判定が誤りであったことが認められれば、レッドカード自体が取り消され、出場停止処分が免除されるケースも稀にあります。このように、レッドカード一枚とっても、その背景にあるプレーの内容が処分の重さを大きく左右するのです。
FAカップやカラバオカップでのカードはどうなる?
プレミアリーグの他に、イングランドでは歴史ある「FAカップ」や、リーグ所属クラブが参加する「カラバオカップ(リーグカップ)」といった主要な国内カップ戦が開催されます。 これらの大会にも当然カードのルールは存在しますが、プレミアリーグのカード累積とはどのように関連するのでしょうか。複数の大会を並行して戦うチームにとっては、非常に重要なポイントとなります。
基本は大会ごとに独立
まず、基本的な原則として、イエローカードの累積は各大会で独立してカウントされます。 つまり、プレミアリーグで受けたイエローカードの枚数は、FAカップやカラバオカップの累積枚数には加算されません。その逆も同様で、FAカップでイエローカードを2枚もらっていても、プレミアリーグでのカウントは0枚のままです。
例えば、ある選手がプレミアリーグで4枚のイエローカードを累積している状態でFAカップの試合に出場し、そこでイエローカードを1枚もらったとします。この場合、FAカップでの累積は1枚となりますが、プレミアリーグでの累積は4枚のままであり、次のリーグ戦で出場停止になることはありません。それぞれの大会で、独自の出場停止ルール(例:FAカップでは累積2枚で1試合出場停止など)が定められています。
レッドカードの例外的な扱い
イエローカードの累積は大会ごとに独立していますが、レッドカードによる出場停止は例外的な扱いを受けます。
これは非常に重要なルールです。例えば、FAカップの試合で一発レッドカードを受けて3試合の出場停止処分となった場合、その選手は次の試合からプレミアリーグ、カラバオカップ、FAカップを問わず、公式戦3試合に出場できなくなります。仮に、退場したFAカップの次の試合が重要なプレミアリーグのダービーマッチだったとしても、その選手は出場することができません。このように、レッドカードは大会の垣根を越えてチームの戦力に影響を及ぼすため、選手はどの大会においても規律あるプレーを心がける必要があるのです。
異なる大会のカードは累積されるのか?
前述の通り、異なる大会のイエローカードが合算されて累積されることはありません。それぞれの大会は、完全に別のコンペティションとして扱われます。
カードの種類 | プレミアリーグ | FAカップ | カラバオカップ |
---|---|---|---|
イエローカード | プレミアリーグ内でのみ累積 | FAカップ内でのみ累積 | カラバオカップ内でのみ累積 |
レッドカード | 出場停止は全国内大会に適用 | 出場停止は全国内大会に適用 | 出場停止は全国内大会に適用 |
このルールを知っておくと、選手の起用についてより深く理解することができます。例えば、プレミアリーグでイエローカードがたまっていて次の試合で出場停止になりそうな選手を、あえてカップ戦で休ませる、といった監督の采配が見られることもあります。逆に、カップ戦で退場者が出てしまうと、その後のリーグ戦のメンバー構成にも頭を悩ませることになります。
選手やチームへの影響と戦略
カードの累積や退場による出場停止は、単に選手個人の問題に留まりません。チーム全体の戦術やシーズンを通した目標達成にまで、多岐にわたる影響を及ぼします。監督やコーチ陣は、このレギュレーションを常に念頭に置きながら、戦略を練る必要があります。
主力選手の離脱がもたらす影響
チームの得点源であるエースストライカーや、守備の要であるセンターバック、ゲームを組み立てる司令塔といった主力選手が出場停止で離脱することは、チームにとって計り知れない打撃となります。代わりに出場する選手がいたとしても、これまで築き上げてきた連携面での不安や、個々の能力差が試合結果に直結してしまうことも少なくありません。
特に、優勝争いやUEFAチャンピオンズリーグ出場権争い、あるいは残留争いが熾烈になるシーズン終盤戦での主力選手の離脱は、致命的となる可能性があります。たった1枚のカードが、チームの運命を大きく左右することもあるのです。ファンやサポーターも、主力選手のカード累積状況には常に気を配り、ハラハラしながら試合を見守ることになります。
監督の采配と選手交代の重要性
優秀な監督は、カードの累積状況を巧みに管理します。例えば、イエローカードをすでに1枚もらっている選手や、累積枚数がかさんでいる選手を、試合展開によっては早めに交代させるという判断を下します。これは、退場のリスクを回避するだけでなく、次の試合での出場停止を防ぐための戦略的な采配です。
また、主力選手が出場停止になった場合に備えて、控え選手のコンディションを整え、いつでも出場できるように準備させておくことも監督の重要な仕事です。チームの総合力が試される瞬間であり、控え選手にとっては大きなチャンスとなります。出場停止をきっかけに、新たなスター選手が誕生することもあるのが、サッカーの面白いところです。
カードをもらいやすいポジションとプレースタイル
サッカーには、その役割上、どうしてもカードをもらいやすいポジションというものが存在します。一般的には、相手の攻撃を最前線で食い止めるディフェンダーや、中盤で激しいボールの奪い合いを繰り広げる守備的ミッドフィルダーが、警告を受ける回数が多くなる傾向にあります。
また、選手のプレースタイルもカードの枚数に大きく関係します。球際に激しくいくアグレッシブなプレースタイルの選手は、ファウルを取られる回数も多くなりがちです。一方で、相手を苛立たせるようなトリッキーなドリブルを得意とする選手は、相手からファウルを受けやすく、結果的に相手選手にイエローカードを出させることもチームへの貢献と言えるでしょう。このように、選手のポジションやプレースタイルとカードの関係性に着目すると、試合の新たな側面が見えてきます。
まとめ:プレミアリーグのカード累積レギュレーションを理解して観戦を楽しもう
この記事では、プレミアリーグにおけるカードの累積と出場停止に関するレギュレーションについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ってみましょう。
- イエローカードの累積は、19試合までに5枚(1試合停止)、32試合までに10枚(2試合停止)、シーズン終了までに15枚(3試合停止)という段階的なルールが設けられている。
- イエローカードの累積による出場停止は、プレミアリーグの試合にのみ適用される。
- レッドカードによる出場停止は、違反行為の悪質性に応じて試合数が変動し(通常1〜3試合)、国内の全公式戦に適用される。
- FAカップやカラバオカップなど、異なる大会間ではイエローカードの累積は合算されない。
これらのルールを理解することで、なぜ選手が交代するのか、次の試合のメンバーはどうなるのか、といった監督の采配やチームの事情をより深く読み解くことができるようになります。カードの累積状況は、時にシーズンの行方を占う重要な要素となります。ぜひ、この知識を活かして、これまで以上にプレミアリーグの観戦を楽しんでください。
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