タッチラインとは?サッカーの基本ルールと戦術での重要性を徹底解説

ルールと戦術を学ぶ

サッカーの試合を観戦していると、「タッチラインを割った」という実況を耳にすることがありますよね。なんとなく「ボールが外に出たこと」と理解している方が多いかもしれませんが、実はこのタッチライン、サッカーというスポーツの根幹に関わる非常に重要な線なのです。

タッチラインは、単にプレーエリアの境界を示すだけでなく、試合の再開方法や戦術にも深く関わってきます。例えば、ボールがタッチラインから出た場合に行われる「スローイン」には細かいルールがあり、それを知っているかどうかで試合の見え方が大きく変わってくるでしょう。

この記事では、サッカーのタッチラインとは何かという基本的な情報から、関連するルール、そして戦術的な重要性まで、初心者の方にも分かりやすく、そしてサッカーファンならもっと試合が楽しめるようになる情報をお届けします。

タッチラインとは?サッカーコートの重要な境界線

サッカーのフィールドは長方形で、複数の白いラインによって区切られています。 その中でも、フィールドの長い方の辺を示す2本の線が「タッチライン」です。 このラインは、プレーが有効なエリアとそうでないエリアを分ける、非常に重要な役割を担っています。

タッチラインの基本的な意味と語源

タッチラインは、フィールドの長辺を示す境界線です。 このラインをボールが完全に越えると、プレーは一時中断され、試合は「スローイン」によって再開されます。

なぜ「サイドライン」ではなく「タッチライン」と呼ぶのでしょうか。その理由は、サッカーの歴史にあります。19世紀半ば、まだルールが統一されていなかった時代には、ラインから出たボールを最初に触った(タッチした)選手に、プレーを再開する権利が与えられていました。 その名残で、今でも「タッチライン」という名称が使われています。

タッチラインの寸法と規格

サッカーコートのサイズは、実は試合のレベルによって少しずつ異なります。国際サッカー評議会(IFAB)が定める競技規則によると、タッチラインの長さは90m~120mと定められています。

ただし、ワールドカップやオリンピックなどの国際試合では、より厳密な規定があり、タッチラインは100m~110m(FIFA推奨は105m)と決められています。 日本のJリーグのスタジアムも、この国際基準である105m×68mが標準となっています。

ポイント:スタジアムによって、タッチラインの長さに若干の違いがあることも、サッカーの面白さの一つと言えるかもしれません。

ゴールラインとの違い

タッチラインとしばしば混同されるのが「ゴールライン」です。この二つのラインは、フィールドを形作る上でどちらも不可欠ですが、役割は全く異なります。

ラインの種類 説明 ボールが出た場合の再開方法
タッチライン フィールドの長い方の辺。サイドラインとも呼ばれる。 スローイン
ゴールライン フィールドの短い方の辺。ゴールが設置されている。 ゴールキック または コーナーキック

簡単に言うと、横の線がタッチライン、縦の線(ゴールの奥の線)がゴールラインと覚えると分かりやすいでしょう。 ボールがどちらのラインから出るかによって、試合の再開方法が全く異なるため、この違いを理解しておくことは、サッカー観戦の第一歩です。

ボールがタッチラインを割った際のルール

試合中、ボールがタッチラインを完全に越えることを「タッチラインを割る」と言います。 この場合、プレーは中断され、「スローイン」という方法で試合が再開されます。ここでは、スローインの基本的なルールから、少しマニアックな反則まで詳しく見ていきましょう。

スローインの基本ルール

スローインは、タッチラインからボールが出た時に、プレーを再開するために行われるセットプレーの一つです。 スローインを行うためには、以下のルールをすべて守る必要があります。

  • フィールドに面して立つ
  • 両足の一部がタッチライン上、またはタッチラインの外の地面についている
  • 両手を使って投げる
  • ボールを頭の後ろから、頭上を通して投げる

これらのうち、一つでもルールを破ると「ファウルスロー」という反則になり、相手チームのスローインで試合が再開されてしまいます。

どちらのチームのボールになる?

スローインの権利は、最後にボールに触れた選手の相手チームに与えられます。 例えば、Aチームの選手が蹴ったボールが、誰にも触れずにそのままタッチラインを割った場合は、Bチームのスローインで試合が再開されます。

このルールは、選手たちの駆け引きを生む要因にもなります。例えば、自陣の深い位置で相手選手にプレッシャーをかけられた際、わざと相手選手の足にボールを当ててタッチラインの外に出すことで、マイボールのスローインを獲得する、といったクレバーなプレーも見られます。

ファウルスローと判定されるケース

正しいスローインのルールを守らないと、「ファウルスロー(反則なスローイン)」と判定されます。 主なファウルスローの例は以下の通りです。

  • 片手で投げる:バスケットボールのように片手で投げるのは禁止です。
  • ジャンプして投げる:投げる瞬間に両足が地面から離れてはいけません。 つま先立ちはOKです。
  • ラインを踏み越える:足が完全にタッチラインの内側(フィールド内)に入ってはいけません。 ライン上はOKです。
  • 頭の上を通さない:横から投げたり、下から投げたりするのは反則です。

ファウルスローをすると、せっかくの攻撃のチャンスを失い、相手ボールになってしまうので、特に試合の重要な局面では絶対に避けたいミスです。 ちなみに、スローインで投げたボールを、他の誰も触る前に自分で再び触ることもできません。

タッチラインをめぐる判定の基準

「今のボール、ラインを割っていた?」「出ていなかった?」サッカーの試合では、タッチライン際のきわどいプレーが勝敗を分けることも少なくありません。ここでは、ボールがタッチラインを「割った」と判断される基準や、それを判定する審判の役割について解説します。

ボールが完全に出たかどうかの見極め

サッカーのルールでは、ボールがラインを「割った(アウトオブプレー)」と判断されるのは、ボール全体がタッチラインを完全に越えた場合のみです。

真上から見たときに、ボールのごく一部でもラインにかかっていれば、それはインプレー(プレー続行)となります。 地面に接している部分がラインの外に出ていても、ボールの膨らみの部分がラインの上にかかっていればセーフです。 これは空中のボールも同様で、空中でボールが完全にラインを越えればアウトオブプレーです。

このルールは、2022年のFIFAワールドカップ カタール大会、日本対スペイン戦での「三笘の1ミリ」として世界的に有名になりました。ゴールライン際で三笘薫選手が折り返したボールが、VAR判定の結果、ゴールラインを完全には割っていなかったと判断され、日本の決勝ゴールにつながったシーンは、多くの人の記憶に新しいでしょう。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による判定

近年、サッカー界ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入が進んでいます。VARは、ピッチの外で映像を確認し、主審の判定をサポートする審判員のことです。

タッチライン際の判定は、通常、副審の役割ですが、得点に直結するようなきわどいプレー、例えば前述の「三笘の1ミリ」のようなケースでは、VARが介入して映像による確認が行われることがあります。ボールに埋め込まれたマイクロチップのデータや、様々な角度からのカメラ映像を駆使して、ミリ単位での正確な判定を下します。これにより、以前よりも公平で正確なジャッジが可能になりました。

主審と副審の役割分担

サッカーの審判団は、主に主審1名と副審2名、そして第4の審判員で構成されます。タッチライン際の判定において、中心的な役割を担うのが副審です。

副審は、担当するサイドのタッチラインに沿って動き、ボールがラインを割ったかどうか、どちらのチームのスローインか、そしてオフサイドなどを主審に伝えます。 副審は旗を持っており、ボールがタッチラインを割った際には旗を上げて主審に知らせます。

最終的な判定を下す権限は主審にありますが、タッチライン際の攻防においては、最も近い位置で見ている副審の判断が非常に重要になるのです。

タッチライン際の攻防と戦術的な重要性

タッチラインは単なる境界線ではなく、攻守において非常に重要な意味を持つエリアです。タッチラインをうまく利用することで、攻撃のチャンスを広げたり、相手の攻撃を限定したりと、様々な戦術が生まれます。

サイド攻撃の起点としての役割

現代サッカーにおいて、サイド攻撃は得点を奪うための重要な戦術の一つです。その起点となるのが、タッチライン際でのプレーです。

ウイングやサイドバックの選手がタッチライン際をドリブルで突破し、ゴール前にクロスボール(センタリング)を上げる形は、最も基本的な攻撃パターンと言えるでしょう。また、スローインも重要な攻撃の起点となります。素早くリスタートする「クイックスロー」で相手の守備が整う前にチャンスを作ったり、ゴール前にロングスローを投げ込んで高さで勝負したりと、スローイン一つで多彩な攻撃を仕掛けることができます。

守備側が相手を追い込むエリアとして

守備側にとって、タッチラインは「12人目のディフェンダー」とも言える頼もしい存在です。

相手選手をタッチライン際に追い込むことで、その選手のプレーの選択肢を大幅に制限することができます。タッチラインがあるため、選手は一方向にしか進むことができず、パスコースやドリブルのコースも限られます。複数の選手でタッチライン際に追い詰めることで、ボールを奪いやすくなるのです。これは「ボールを奪われたらすぐに自陣に戻って守備の陣形を整える」リトリート戦術などと組み合わせて使われます。

タッチライン際でのテクニック(ボールキープなど)

タッチライン際は、非常に狭く、プレッシャーも厳しいエリアです。そのため、このエリアでボールを失わずにプレーするには、高いテクニックが要求されます。

相手に体を寄せられても倒れないフィジカルの強さや、狭いスペースでボールをコントロールする足元の技術が不可欠です。相手とタッチラインの間に自分の体を入れ、ボールを隠しながらキープする「ボールキープ」の技術は、サイドでプレーする選手にとって必須のスキルと言えるでしょう。また、タッチラインを背にすることで、相手ディフェンダーとの1対1の状況を作り出しやすくなり、ドリブル突破のチャンスも生まれます。

タッチラインに関するよくある質問

ここでは、タッチラインにまつわる少し細かいけれど、知っているとサッカー観戦がもっと面白くなるような、よくある質問にお答えします。

選手の体の一部がタッチラインの外に出ていてもプレーは有効?

はい、有効です。

サッカーのルールは、あくまでボールの位置が基準となります。 プレーしている選手自身の体の一部、例えば足がタッチラインの外に出ていても、ボールがフィールド内にあればプレーは続行されます。

スライディングタックルをした結果、体はフィールドの外に出たけれど、足先でボールをフィールド内に残す、といったアクロバティックなプレーが見られるのも、このルールがあるからです。

タッチライン上でボールが止まった場合は?

この場合も、インプレー(プレー続行)です。

前述の通り、ボールがアウトオブプレーになるのは、ボール全体が完全にラインを越えた時だけです。 そのため、ボールがタッチラインの真上に静止している状態は、まだラインにかかっていると判断されるため、プレーは続行されます。

もし、主審が何らかの理由でプレーを停止させた場合などは、「ドロップボール」という方法で試合が再開されることもあります。

スローインから直接ゴールを狙える?

いいえ、スローインから直接ゴールしても得点にはなりません。

スローインで投げられたボールが、誰にも触れずにそのまま相手ゴールに入った場合は、相手チームのゴールキックで試合が再開されます。もし、自陣のゴールに入ってしまった場合は、相手チームのコーナーキックとなります。

ただし、スローインのボールをフィールド上の他の選手(味方、相手問わず)が触れた後にゴールに入れば、それは得点として認められます。 また、スローインからのプレーではオフサイドのルールは適用されないという特殊なルールもあります。 これを利用して、相手のディフェンスラインの裏へロングスローを送り込み、ゴールチャンスを演出する戦術もあります。

まとめ:サッカーのタッチラインを理解して試合観戦をより楽しもう

この記事では、サッカーの「タッチライン」について、その基本的な意味からルール、戦術的な重要性までを詳しく解説してきました。

タッチラインは、単にフィールドの境界を示す線ではなく、スローインという試合再開のルールや、サイド攻撃、サイドでの守備戦術など、サッカーの奥深さを象徴する要素が詰まっています。ボールがラインを割ったかどうかのきわどい判定基準や、タッチライン際での選手たちの激しい攻防に注目することで、これまでとは違った視点でサッカー観戦を楽しめるようになるはずです。

次にサッカーを観る機会があれば、ぜひタッチライン際のプレーに注目してみてください。そこには、チームの戦術や選手の技術、そして勝利への執念が凝縮されています。

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