サッカーピッチの広さは？公式ルールから少年サッカーまで徹底解説！

サッカーの試合を観戦しているとき、「このサッカーピッチの広さ、いったいどれくらいなんだろう？」と疑問に思ったことはありませんか？実は、サッカーピッチの広さは、どの競技場でも全く同じというわけではなく、公式ルールで定められた範囲内で作られています。スタジアムによって微妙に大きさが違うこともあるのです。

この記事では、国際サッカー評議会（IFAB）が定める公式ルールに基づいたサッカーピッチの大きさから、ワールドカップなどの国際試合やJリーグ、さらには子どもたちが行う少年サッカーのコートサイズまで、カテゴリー別に詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

さらに、ピッチの広さが戦術にどのような影響を与えるのか、国内外の有名スタジアムの広さの比較など、知っているとサッカー観戦がもっと面白くなる情報も満載です。この記事を読めば、サッカーピッチの広さに関するあらゆる疑問がスッキリ解決するはずです。

サッカーピッチの広さの基本ルール

サッカーのピッチ、つまり試合が行われるグラウンドの広さは、実はどのスタジアムでも完全に同じというわけではありません。サッカーの競技規則によって、大きさの「範囲」が定められており、その範囲内であれば公式な試合を行うことが認められています。 ここでは、その基本となるルールについて、詳しく見ていきましょう。

公式ルールで定められたピッチのサイズ（縦と横の長さ）

サッカーのルールを定めている国際サッカー評議会（IFAB）の競技規則によると、ピッチのサイズは以下のように規定されています。

この範囲はかなり広いですよね。一番小さい「90m × 45m」のピッチと、一番大きい「120m × 90m」のピッチでは、面積にすると2倍もの差が生まれます。この大きさの幅が、サッカーというスポーツの奥深さや戦略の多様性につながっているのです。

ちなみに、学校でよく使われる25mプールの長辺が25mなので、タッチラインの最短である90mでもその3倍以上、最長の120mだと約5倍もの長さになります。そう考えると、サッカー選手がいかに広大なフィールドを走り回っているかがよく分かりますね。

なぜ広さに「幅」があるの？

では、なぜサッカーピッチの広さには、これほどの「幅」が設けられているのでしょうか。その理由は、サッカーというスポーツが世界中でプレーされていることと深く関係しています。

世界には様々な国や地域があり、経済的な事情や土地の確保の問題などで、規格を一つに統一してしまうと、その基準を満たせない場所が出てきてしまいます。 例えば、広大な土地を確保するのが難しい都市部のスタジアムや、経済的に大きなスタジアムを建設するのが難しい国も存在します。
ルールに幅を持たせることで、そういった様々な環境下でもサッカーをプレーできるようにしているのです。

また、歴史的な背景も関係しています。サッカーのルールが整備されていく過程で、各地域でローカルルールとして存在していたピッチサイズを、ある程度の範囲で許容する形で統一されていったという側面もあります。
この「広さの幅」は、時に戦術的な要素としても利用されます。ホームチームは、自分たちの得意な戦術に合わせて、ルールの範囲内でピッチの広さを設定することができるため、ホームアドバンテージの一つにもなり得るのです。

ピッチ内の各エリアの名称とサイズ

サッカーのピッチは、ただの長方形のグラウンドではありません。試合を公正に進めるために、様々なラインでエリアが区切られており、それぞれに名称と役割があります。ここでは、主要なエリアのサイズと役割を解説します。

これらのエリアのサイズは、ピッチ全体の大きさが変わっても、常に一定です。例えば、ペナルティエリアの大きさは、縦90mのピッチでも縦120mのピッチでも変わりません。それぞれのエリアが持つ意味を理解すると、オフサイドやファウルの判定など、ルールの理解がより一層深まり、サッカー観戦をさらに楽しむことができます。

【カテゴリ別】サッカーコートの広さの違い

サッカーのピッチサイズは、公式ルールで幅が認められていますが、試合のレベルやカテゴリーによって、推奨されるサイズや独自の規定が存在します。ワールドカップのような国際舞台と、子どもたちの少年サッカーでは、当然ながらコートの広さは異なります。ここでは、カテゴリ別のサッカーコートの広さについて見ていきましょう。

国際試合の基準となるサイズ

ワールドカップやオリンピックなど、国の代表チーム同士が戦う権威ある国際試合では、ピッチのサイズに関する規定がより厳密になります。
国際サッカー連盟（FIFA）が定める国際試合のピッチサイズは以下の通りです。

この「105m × 68m」というサイズは、試合の公平性を保ち、どの会場でも同じような条件でプレーできるようにするために定められています。 選手たちはこの標準サイズを基準に戦術を組み立て、トレーニングを行っています。ヨーロッパの主要なスタジアムや、ワールドカップの会場となるスタジアムの多くが、このサイズを採用しています。
日本国内で行われる国際試合も、この基準に準じており、全国規模の大会である国民体育大会などでも、原則としてこのサイズで競技が行われます。

Jリーグで推奨されるピッチサイズ

日本のプロサッカーリーグであるJリーグでは、スタジアムに対して独自の基準「Jリーグスタジアム基準」を設けています。 その中で、ピッチのサイズについても明確に定められています。
Jリーグでは、国際基準に合わせる形で、原則としてピッチサイズを「105m × 68m」とすることを必須条件としています。

これは、Jリーグの試合が、将来的にアジアチャンピオンズリーグ（ACL）やクラブワールドカップといった国際的な舞台につながっていることを意識したものです。 国内のリーグ戦から世界基準のピッチでプレーすることで、選手たちが国際舞台でも戸惑うことなく、持てる力を最大限に発揮できる環境を整える目的があります。

そのため、埼玉スタジアム2002や横浜国際総合競技場（日産スタジアム）など、Jリーグの多くのスタジアムがこの「105m × 68m」というサイズで建設・改修されています。 もちろん、歴史あるスタジアムなど、構造上の理由でこの基準を完全に満たせない場合もありますが、新設されるスタジアムは、この基準に沿って作られています。

少年サッカー（8人制・11人制）のコートサイズ

大人がプレーするサッカーと、小学生年代の少年サッカーとでは、選手の体格や体力に大きな差があります。そのため、子どもたちが無理なく、そして楽しくサッカーの技術を学べるように、コートのサイズも年齢に合わせて小さく設定されています。

【8人制サッカー】
現在、日本の小学生年代の公式戦では、8人制サッカーが主流となっています。 日本サッカー協会（JFA）が推奨する8人制サッカーのコートサイズは以下の通りです。

• 縦68m × 横50m

これは、大人が使うピッチ（105m×68m）のちょうど半分の広さになります。 11人制のピッチが1面あれば、8人制のピッチを2面作ることができる計算です。
人数を減らし、コートを狭くすることで、一人の選手がボールに触る機会が増え、シュートチャンスも多く生まれます。これにより、子どもたちは試合への関与を深め、サッカーの楽しさをより実感しながら、基礎技術や判断力を養うことができるのです。

【11人制サッカー】
中学生以上になると、大人と同じ11人制でプレーすることが基本になります。それに伴い、コートサイズも大人と同じ規格（縦90m〜120m、横45m〜90m）を使用します。
ただし、育成年代の大会や学校のグラウンド事情によっては、公式ルールの範囲内で少し小さめのサイズ（例：100m×64mなど）が使われることもあります。

フットサルコートとの比較

サッカーとよく似たスポーツに「フットサル」があります。フットサルは5人制で行われるスポーツで、サッカーに比べてかなり小さなコートでプレーします。
フットサルコートのサイズは以下の通りです。

一般的なフットサルコートのサイズは「縦40m × 横20m」です。
これをサッカーコート（105m×68m）と比較すると、面積では約9分の1というコンパクトさです。
この小さなコートサイズが、フットサルのスピーディーでテクニカルな試合展開を生み出しています。狭いスペースでの素早い判断力や、正確なボールコントロール技術が求められるのがフットサルの特徴であり、サッカーのトレーニングの一環として取り入れる選手も多くいます。

ピッチの広さが戦術に与える影響

サッカーピッチの広さに規定の範囲内で違いがあることは、単なる規格の問題だけではありません。わずか数メートルの差が、チームの戦術や試合展開に大きな影響を与えることがあります。 一般的に「広いピッチは攻撃側に有利」「狭いピッチは守備側に有利」と言われますが、具体的にどのような違いが生まれるのでしょうか。

広いピッチでの戦い方

タッチラインからゴールラインまでの距離が広いピッチ、特に横幅が広いピッチでは、選手間のスペースが広がりやすくなります。

【攻撃面】

• サイド攻撃が有効になる：広いスペースを活かして、ウイングやサイドバックの選手がドリブルで仕掛けたり、大きなサイドチェンジのパスを通しやすくなります。 これにより、相手の守備を左右に揺さぶり、中央にスペースを作り出すことができます。
• 個々の技術や走力が活きる：選手一人ひとりが使えるスペースが広いため、ドリブルが得意な選手や、スピードのある選手がその能力を発揮しやすくなります。また、広大なスペースをカバーする必要があるため、選手の持久力（スタミナ）も重要な要素となります。
• カウンター攻撃が決まりやすい：守備から攻撃に切り替わった際、相手ディフェンスの背後に広大なスペースが生まれやすく、スピードのあるフォワードを走らせるロングボールなどのカウンター攻撃が効果的になります。

【守備面】

• コンパクトな陣形を保つのが難しい：ピッチが広いため、選手間の距離が間延びしやすく、コンパクトな守備ブロックを形成するのが難しくなります。そのため、選手一人ひとりの守備範囲が広くなり、より多くの運動量が求められます。
• プレッシングがハマりにくい：相手選手との距離が遠いため、組織的なプレッシング（ボール保持者への連動した囲い込み）をかけるのが難しくなります。

狭いピッチでの戦い方

逆に、規定範囲内で設定された狭いピッチでは、選手間の距離が縮まり、プレーの密度が高まります。

【攻撃面】

• ショートパスでの連携が重要に：スペースが少ないため、ドリブルで長い距離を運ぶのは難しくなります。その代わり、細かいパス交換で相手の守備網を崩す、コンビネーションプレーが重要になります。
• セットプレーが鍵を握る：ゴールまでの距離が近くなるため、フリーキックやコーナーキックといったセットプレーから得点が生まれる可能性が高まります。また、ロングスローも直接的なチャンスにつながりやすくなります。
• 球際の激しさが増す：選手が密集するため、ボールの奪い合い（球際）が激しくなり、フィジカルコンタクトの強さが求められます。

【守備面】

• プレッシングをかけやすい：選手間の距離が近いため、相手に素早くプレッシャーをかけやすく、ボールを高い位置で奪いやすくなります。 前線からの積極的な守備（ハイプレス）が戦術として機能しやすくなります。
• コンパクトな守備陣形を築きやすい：守備ブロックをコンパクトに保ちやすく、相手に中央のスペースを与えにくくすることができます。これにより、相手の攻撃をサイドに追いやるなど、意図した守備を展開しやすくなります。

ホームチームがピッチサイズを戦術に活かす例

このように、ピッチの広さは戦術と密接に関係しているため、ホームチームは自分たちの得意なサッカースタイルに合わせて、競技規則の範囲内でピッチサイズを調整することがあります。

例えば、伝統的にサイド攻撃を得意とするチームは、ホームスタジアムのピッチの横幅を広く設定する傾向があります。これにより、自慢のウイングの選手が活躍できるスペースを確保し、試合を有利に進めようとします。
逆に、堅い守備からのカウンターや、前線からのハイプレスを戦術の軸とするチームは、ピッチの幅をあえて狭く設定することもあります。これにより、相手の攻撃スペースを消し、自分たちの得意な守備戦術を機能させやすくするのです。
このように、スタジアムのピッチサイズに注目してみると、「なぜこのチームはこのスタジアムで強いのか」といった、戦術的な背景が見えてきて、サッカー観戦がより一層興味深いものになるでしょう。

有名スタジアムのピッチサイズを比較！

サッカーの国際標準サイズは「105m × 68m」ですが、世界や日本のスタジアムの中には、歴史的な経緯やスタジアムの構造上の理由から、異なるサイズのピッチを持つスタジアムも存在します。ここでは、国内外の有名なスタジアムのピッチサイズをいくつかご紹介し、その特徴を見ていきましょう。

世界の有名スタジアムのピッチサイズ

ヨーロッパのビッグクラブが本拠地とするスタジアムや、歴史的な試合の舞台となってきたスタジアムのピッチサイズを見てみましょう。

このように見てみると、近年に建設または改修された大規模スタジアムはFIFA推奨の「105m × 68m」に統一される傾向がありますが、歴史の古いスタジアムでは独自のサイズが維持されていることがあります。
特にリヴァプールのホームスタジアムであるアンフィールドは、縦の長さが短いため、UEFA（欧州サッカー連มะ）の最高基準を満たしておらず、チャンピオンズリーグの決勝戦などを開催することができません。

日本国内の主要なスタジアムのピッチサイズ

次に、Jリーグの試合や日本代表戦が開催される国内の主要なスタジアムのピッチサイズを見ていきましょう。日本のスタジアムの多くは、Jリーグの基準や国際試合の開催を視野に入れて設計されています。

日本の多くの大規模スタジアムは、国際基準である「105m × 68m」を採用しています。 これは、2002年の日韓ワールドカップ開催に向けて多くのスタジアムが新設・改修された際に、FIFAの基準に合わせられたことが大きな理由です。
一方で、鹿島アントラーズのホームであるカシマサッカースタジアムは、国内でも有数の広いピッチを持つことで知られています。 この広さを活かしたダイナミックなサイド攻撃は、チームの伝統的な戦術の一つとなっています。

スタジアムによって広さが違うのはなぜ？

スタジアムによってピッチの広さが異なる理由は、主に以下の3つが挙げられます。

1. 歴史と伝統：特にヨーロッパの歴史あるスタジアムは、サッカーのルールが現在のように厳密に統一される前から存在しています。 そのため、建設当時の規格や敷地の制約が、現在のピッチサイズにも影響を与えています。
2. スタジアムの構造上の制約：観客席との距離や、陸上トラックの有無など、スタジアム全体の設計によって、確保できるピッチの広さが決まってきます。後からピッチを拡張しようとしても、物理的に不可能な場合があります。
3. 戦術的な意図：前述の通り、ホームチームが自分たちのサッカースタイルを最大限に活かすために、ルールの範囲内で意図的にピッチサイズを設定している場合があります。

試合を観戦する際には、そのスタジアムのピッチが「広いのか、狭いのか」を少し意識してみるだけで、チームの戦術や選手の動きに対する見方が変わり、新たな発見があるかもしれません。

まとめ：サッカーピッチの広さを知って観戦・プレーをもっと楽しもう

この記事では、「サッカーピッチの広さ」をテーマに、公式ルールから国際基準、少年サッカーのコートサイズ、そして広さが戦術に与える影響まで、幅広く解説してきました。

最後に、記事の要点を振り返ってみましょう。

• サッカーピッチの広さには「幅」がある：公式ルールでは、タッチライン（縦）は90m～120m、ゴールライン（横）は45m～90mと定められています。
• 国際試合の標準サイズは「105m × 68m」：ワールドカップやJリーグでは、このFIFA推奨サイズが基準となっています。
• 年代によってコートの広さは変わる：小学生年代の8人制サッカーでは、大人の約半分の「68m × 50m」という小さなコートでプレーします。
• ピッチの広さは戦術に影響する：広いピッチはサイド攻撃や個の力を活かしやすく、狭いピッチは組織的なプレスやセットプレーが有効になります。

サッカーピッチの広さは、ただのグラウンドの大きさではありません。そこには世界中の人々がプレーできるための配慮があり、チームの戦術が反映され、各スタジアムの歴史が刻まれています。

次にサッカーを観戦するときは、ぜひそのピッチの広さにも注目してみてください。「このスタジアムは少し広いから、サイドの攻防がカギになりそうだな」「今日はピッチが狭いから、激しい中盤の潰し合いが見られるかもしれない」など、これまでとは違った視点で試合を分析できるようになるはずです。
この知識が、あなたのサッカー観戦やプレーを、より深く、より楽しいものにする一助となれば幸いです。