サッカーの順位表を見ていると、「勝ち点」の隣に並んでいる数字が気になったことはありませんか?応援しているチームとライバルチームが同じ勝ち点で並んだとき、なぜ順位に差がついているのか不思議に思うこともあるでしょう。その理由の多くは「得失点差」にあります。
この数字は、単なる記録ではなく、優勝争いや残留争いの運命を左右する非常に重要な要素です。この記事では、サッカー観戦初心者の方にもわかりやすく、得失点差の意味や計算方法、そして順位決定におけるドラマチックな役割について解説します。
サッカーの得失点差とは?基本的な意味と見方

まずは、このキーワードである「得失点差」が一体何を表しているのか、その基本的な定義と見方について確認していきましょう。
得点と失点の引き算で決まるシンプルな数字
得失点差(とくしってんさ)とは、その名の通り「チームの総得点」から「チームの総失点」を引いた数値のことです。
サッカーのリーグ戦では、試合ごとに勝てば「3」、引き分けなら「1」、負ければ「0」という「勝ち点」が加算され、この合計で順位を競います。しかし、長いシーズンを戦う中で、複数のチームが同じ勝ち点で並ぶことは珍しくありません。
そんなとき、チームの強さをより詳細に比較するために使われるのが、この得失点差です。どれだけ多くゴールを決め、どれだけ失点を防いだかという、チームの総合力がこの数字に表れます。
プラスとマイナスが表すチームの状況
得失点差は、プラス(正の数)になることもあれば、マイナス(負の数)になることもあります。これはチームの戦いぶりを端的に示しています。
攻撃力が守備力を上回っていれば、数字はプラスになり、大きくなっていきます。逆に、得点よりも失点の方が多ければ、数字はマイナスになります。一般的に、上位チームはプラスの数字が大きく、下位チームはマイナスの数字が大きくなる傾向があります。
勝ち点が同じときに順位を決める「第2の勝負」
サッカーのリーグ戦において、最も優先されるのは「勝ち点」です。しかし、勝ち点が同じだった場合、多くの大会で次に参照されるのがこの得失点差です。
つまり、同じ「1勝」でも、ギリギリの「1-0」で勝つのと、圧倒的な「5-0」で勝つのとでは、勝ち点は同じ「3」でも、得失点差には大きな違いが生まれます。この差が、シーズンの最後に優勝できるか、あるいは降格してしまうかを分ける決定打になるのです。
どう計算する?得失点差の具体的な計算シミュレーション
ここでは、実際にどのように計算が行われているのか、具体的な例を使って見ていきましょう。計算自体はとても単純な引き算です。
勝ち点・得点・失点を使った計算例
得失点差の計算式は以下の通りです。
得失点差 = 総得点(決めたゴールの合計) - 総失点(決められたゴールの合計)
例えば、あるチームのシーズン成績が以下のような場合を考えてみましょう。
- 総得点:50点
- 総失点:30点
この場合、「50 - 30 = 20」となり、得失点差は「+20」となります。
逆に、苦戦しているチームの場合はどうでしょうか。
- 総得点:20点
- 総失点:40点
この場合は、「20 - 40 = -20」となり、得失点差は「-20」となります。記号の「マイナス(-)」や「▲」をつけて表記されることが一般的です。
得失点差が「0」になるパターンとは
計算結果がちょうど「0」になることもあります。これは、シーズンを通して決めたゴールの数と、相手に決められたゴールの数が全く同じ状態です。
例えば「得点35、失点35」のようなケースです。これは、攻撃と守備のバランスが拮抗している、あるいは大勝と大敗を繰り返して数字が相殺された結果と言えます。
順位表を見たときに得失点差が「0」に近いチームは、リーグの中位に位置していることが多く、実力が拮抗した試合を続けているチームと言えるかもしれません。
総得点との違いを整理しよう
よく混同されがちなのが「総得点」です。得失点差と総得点は、順位決定における役割が異なります。
多くのリーグでは、勝ち点 > 得失点差 > 総得点 という優先順位で順位を決めます。もし「勝ち点」も「得失点差」も全く同じだった場合に初めて、「総得点(より多くのゴールを決めた方)」が上の順位になります。
リーグや大会で違う!順位決定の優先順位ルール

実は、すべてのサッカー大会で「得失点差」が最優先されるわけではありません。大会の主催者やリーグの規定によって、順位の決め方には違いがあります。ここでは代表的なリーグや大会のルールを紹介します。
Jリーグやプレミアリーグは「得失点差」が優先
日本のJリーグや、イングランドのプレミアリーグなど、多くの主要リーグでは、勝ち点が並んだ際に得失点差を最優先します。
このルールの特徴は、対戦相手に関わらず、常に「1点でも多く取り、1点でも失点を減らす」ことが重要になる点です。そのため、シーズンを通して攻撃的な姿勢が推奨されやすい仕組みと言えます。
スペイン(ラ・リーガ)は「直接対決」が優先される
一方で、スペインのラ・リーガやイタリアのセリエA(一部状況による)などでは、勝ち点が並んだ場合、得失点差よりも「当該チーム間の対戦成績(直接対決の結果)」を優先します。
例えば、AチームとBチームが勝ち点で並んだとします。全体の得失点差ではAチームが上回っていても、直接対決でBチームが勝っていれば、Bチームが上位になります。
このルールの場合、「ライバルには絶対に負けない」という直接対決の重要性が非常に高まります。リーグごとの文化の違いが出る面白いポイントです。
ワールドカップのグループリーグでの決まり方
4年に1度のワールドカップ(W杯)のグループリーグでは、通常以下の優先順位で順位が決まります。
1. 勝ち点
2. 得失点差
3. 総得点
4. 直接対決の勝ち点
短期決戦のワールドカップでは、1試合の大敗が命取りになります。逆に言えば、他国との試合で大量得点をしておけば、勝ち点で並んだ際に圧倒的に有利になるため、最後まで手を抜かない試合運びが見られます。
なぜ重要?得失点差がチームの戦術に与える影響
得失点差というルールが存在することで、ピッチ上の選手や監督の判断、そしてチームの戦術にも大きな影響が及びます。単に「勝てばいい」だけではない、サッカーの奥深さがここにあります。
優勝や残留争いでの「1点」の重み
リーグ戦の終盤になると、優勝争いや残留争い(降格争い)をしているチームにとって、得失点差の「1点」が天国と地獄を分けることがあります。
「勝ち点では並んでいるが、得失点差で負けている」という状況は、実質的に「勝ち点0.5」分くらい負けているのと同じような重圧になります。そのため、ライバルチームの試合結果を気にしながら、自分たちはあと何点取る必要があるのかを計算して戦うことになります。
勝っているチームが攻撃を緩めない理由
試合終盤、3-0で勝っているチームが、さらに攻撃の手を緩めずに4点目、5点目を狙いにいくシーンを見たことがありませんか?
これは、将来的に勝ち点で並んだときのために、得失点差を少しでも稼いでおきたいという意図があるからです。「もう勝負は決まったから流そう」と攻撃をやめてしまうと、シーズン終盤にその「取らなかった1点」に泣く可能性があるのです。
負け試合でも守備を崩してはいけない心理
逆に、強豪相手に0-2で負けているチームが、無理に反撃に出ずに守備を固めることもあります。これは「これ以上失点して得失点差を悪化させないため」の現実的な判断です。
0-5のような大敗をしてしまうと、得失点差が一気にマイナスになり、順位争いで圧倒的に不利になります。負けは負けでも、「傷口を最小限に留める」ことが、長いリーグ戦を生き残る知恵となるのです。
観戦がもっと面白くなる得失点差の注目ポイント

得失点差の仕組みを理解すると、試合の見方が変わります。特にシーズンが進むにつれて、この数字が持つドラマ性は高まっていきます。
リーグ終盤戦で見るべき数字の動き
リーグ戦の残り試合が少なくなると、「条件」が話題になります。「Aチームは最終戦で引き分けでも優勝だが、Bチームは5点差以上で勝たないと優勝できない」といった状況です。
このような場合、Bチームは序盤から猛攻を仕掛ける必要があり、スリリングな展開が期待できます。順位表の「得失点差」の列に注目しながら観戦すると、各チームの必死さがより伝わってくるはずです。
攻撃的なチームと守備的なチームの得失点差の特徴
順位表を眺めていると、チームのカラーが見えてきます。
例えば、同じ勝ち点のチームでも、「得点60・失点50(得失点差+10)」のチームは、打ち合い上等の攻撃的なチーム。「得点30・失点20(得失点差+10)」のチームは、堅守で手堅く勝つチームだと推測できます。数字を見るだけで、そのチームがどんなサッカーをしているのか想像するのも楽しみの一つです。
フェアプレーポイントや抽選になる珍しいケース
非常に稀なケースですが、「勝ち点」「得失点差」「総得点」「直接対決」のすべてが完全に同じになることがあります。
この場合、ワールドカップなどでは「フェアプレーポイント」が採用されます。これはイエローカードやレッドカードの数が少ない(反則が少ない)チームを上位にするルールです。それでも決まらない場合は、最終手段として「抽選(くじ引き)」で順位を決めることもあります。
メモ:
2018年のロシアワールドカップでは、日本代表とセネガル代表が勝ち点・得失点差・総得点・直接対決で完全に並びました。その結果、イエローカードの枚数が少なかった日本が「フェアプレーポイント」の差で決勝トーナメント進出を決めたという、歴史的な出来事がありました。
まとめ:サッカーの得失点差とは順位を左右する大きな要素

サッカーの得失点差とは、単なる得点と失点の記録ではなく、チームの運命を決定づける重要な指標です。
- 基本計算:「総得点」-「総失点」で算出される。
- 優先順位:多くのリーグで、勝ち点が並んだ際の最初の判断基準となる。
- 戦略性:「1点の重み」が、攻撃や守備の戦術に影響を与える。
- ルールの違い:スペインリーグなど、直接対決を優先する場合もある。
たかが1点、されど1点。得失点差の意味を知ることで、大量リードの試合や、拮抗した順位争いの緊張感をより深く味わえるようになります。ぜひこれからは順位表の「得失点差」にも注目して、サッカー観戦を楽しんでください。


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