サッカーボールが白黒の理由とは?テレビ放送との深い関係をわかりやすく解説!

サッカー豆知識

サッカーと聞いて多くの人が思い浮かべる、あの白黒のボール。実は、そのデザインにはちゃんとした理由があることをご存じでしたか?最近ではワールドカップなどでカラフルなボールを目にすることも増えましたが、今でも「サッカーボールといえば白黒」というイメージは根強く残っています。

この記事では、なぜサッカーボールが白黒になったのか、その歴史的な背景と理由を詳しく掘り下げていきます。白黒デザインが誕生したきっかけは、なんとテレビ放送の普及と深く関わっていました。この記事を読めば、サッカーボールの色の秘密がわかり、サッカー観戦がもっと楽しくなること間違いなしです。ボールのデザインに隠された物語を、一緒に見ていきましょう。

 

サッカーボールが白黒の理由はテレビにあった!

多くの人がサッカーボールの象徴として認識している白黒のデザイン。このデザインが生まれた背景には、20世紀のある大きなメディアの変化が関係していました。それは、家庭へのテレビの普及です。

白黒テレビでも見やすくするために

サッカーボールが白黒のデザインになった最も大きな理由は、白黒テレビで放送した際に、ボールの動きを視聴者が見やすくするためでした。

1960年代、世界的にテレビ放送が普及し始めましたが、そのほとんどはまだモノクロ(白黒)放送でした。 それまでのサッカーボールは、天然皮革の色である茶色一色のものが主流でした。 しかし、この茶色いボールは、緑の芝生の上では問題なくとも、白黒テレビの画面を通すと背景に溶け込んでしまい、どこにあるのか非常に分かりにくかったのです。

そこで、テレビの視聴者がボールの動きをはっきりと目で追えるように、

コントラストの強い白と黒を組み合わせたデザイン

が考案されました。 これにより、ボールが回転している様子も分かりやすくなり、テレビでのサッカー観戦の質を大きく向上させることになったのです。

革命的なデザイン「テルスター」の登場

この白黒デザインを世界中に広めるきっかけとなったのが、1970年のFIFAワールドカップ・メキシコ大会で公式試合球として採用された、アディダス社の「テルスター(Telstar)」です。

テルスターは、黒い正五角形のパネル12枚と、白い正六角形のパネル20枚で構成された、切頂二十面体(せっちょうにじゅうめんたい)という立体構造をしています。 このデザインは、ボールをより球体に近づけるための工夫でもありました。

そして、その名前の由来は「テレビジョンのスター(Television Star)」から来ています。 まさに、テレビ放送の時代にふさわしいボールとして開発されたことが、その名前からもよく分かります。このテルスターの登場によって、「サッカーボール=白黒」というイメージが世界的に定着しました。

「テルスター」が変えたサッカーボールの常識

テルスターは、単にテレビ映りを良くしただけではありませんでした。それまでのボールに比べて、より球体に近い形状をしていたため、選手のボールコントロール性やキックの正確性を向上させることにも貢献しました。

また、選手だけでなく、スタジアムで観戦する観客にとっても、ボールの行方が追いやすくなるというメリットがありました。 このように、視認性の向上はプレーの質を高め、観戦の楽しさを増幅させ、サッカーというスポーツが世界的な人気を獲得していく上で、非常に大きな役割を果たしたのです。

ちなみに、この白黒の亀甲模様デザインのサッカーボールを世界で最初に開発・販売したのは、実は日本のスポーツ用品メーカーであるモルテン社だと言われています。 1966年に日本で発売されたこのボールが、後のテルスターにも影響を与えたと考えられています。

白黒ボールが生まれる前のサッカーボールとは?

現在では当たり前のように目にする白黒のサッカーボールですが、そのデザインが生まれるまでには長い歴史がありました。テレビ放送が普及する以前、選手たちはどのようなボールを使ってプレーしていたのでしょうか。

昔は茶色いボールが当たり前だった

テルスターが登場する1960年代半ばまで、サッカーボールといえば天然の革(牛革など)で作られた茶色いボールが一般的でした。 パネルの形状も、現在の五角形と六角形の組み合わせとは異なり、12枚や18枚の細長い革を縫い合わせた、バレーボールに近い見た目のものが主流でした。

当時のグラウンドは土が多かったため、茶色いボールは地面の色と同化してしまい、選手にとって見えにくいという問題がありました。 特に、日本では土のグラウンドがほとんどだったため、白いボールの登場が待ち望まれていたという背景もあります。 茶色いボールは、サッカーの長い歴史の初期段階を象徴する存在だったのです。

動物の膀胱から始まったボールの歴史

サッカーボールの起源をさらに遡ると、驚くべきものに行き着きます。最も初期のボールは、豚や牛などの動物の膀胱(ぼうこう)を膨らませたものだったと言われています。 もちろん、これらは非常に壊れやすく、形もいびつでした。

その後、耐久性を高めるために、膀胱を革で覆うようになり、徐々に現在のボールの原型へと近づいていきました。 1930年の第1回ワールドカップで使われたボールには、まだラグビーボールのような革紐がついており、空気を入れた後にその紐で口を縛る仕組みでした。 1950年になってようやく、紐のない、バルブから空気を入れるタイプのボールが登場し、大きな進歩を遂げました。 このように、ボールは長い年月をかけて、より安全でプレーしやすい形へと進化してきたのです。

プレーに影響を与えたボールの素材と重さ

昔のサッカーボールが抱えていた最大の問題の一つが、素材でした。天然皮革で作られたボールは、雨が降ると水分を大量に吸ってしまい、非常に重くなるという欠点がありました。 試合開始時と終了時では、ボールの重さが倍近くになることもあったと言われています。

重くなったボールを蹴るのは大変な力が必要で、特にヘディングは選手にとって大きな負担となり、危険を伴うプレーでした。この問題が解決されたのは、1986年のメキシコワールドカップで人工皮革製のボールが初めて採用されてからです。 人工皮革は水をほとんど吸わないため、天候によるボールのコンディション変化が少なくなり、選手のプレーの質を安定させることに大きく貢献しました。

白黒サッカーボールのデザインの秘密

サッカーボールの白黒デザインは、ただ色が違うだけではありません。その形にも、ボールをより「球」に近づけ、プレーしやすくするための科学的な工夫が隠されています。なぜあの形になったのか、その秘密に迫ってみましょう。

正五角形と正六角形の組み合わせ

多くの人が思い浮かべる伝統的なサッカーボールは、12枚の黒い正五角形20枚の白い正六角形、合計32枚のパネルを縫い合わせて作られています。

パネルの種類 枚数
正五角形 12枚
正六角形 20枚
合計 32枚

この立体は、数学の世界で「切頂二十面体(せっちょうにじゅうめんたい)」と呼ばれています。 これは、古代ギリシャの数学者アルキメデスが発見した13種類の「半正多面体」のうちの一つで、平面の組み合わせで作れる立体の中で、最も球に近い形の一つとされています。 この構造のおかげで、ボールはどこを蹴っても同じような感触で飛んでいく、安定した性能を持つことができたのです。

なぜこの形でなければならなかったのか?

では、なぜわざわざ五角形と六角形という2種類の図形を組み合わせる必要があったのでしょうか。その理由は、球体に近づけるためです。

もし、同じ形の正多角形(例えば正六角形だけ)でボールを作ろうとすると、平面になってしまい、球体にすることができません。一方、正五角形だけだと、12枚で正十二面体という立体になりますが、角が尖りすぎてしまい、球とはほど遠い形になってしまいます。

そこで、

正五角形と正六角形を巧みに組み合わせることで、それぞれの角の丸みを補い合い、より滑らかな球体を作り出すことができる

のです。 この32面体の構造は、当時の技術において、ボールの弾み方、転がり方、そして蹴りやすさのバランスが最も取れた理想的な形でした。また、白と黒のパネルが交互に配置されることで、ボールの回転が視覚的に非常によくわかるというメリットもありました。

より球体に近い形への進化

伝統的な32枚パネルのサッカーボールは長年にわたって愛用されてきましたが、技術の進歩とともに、ボールの構造も進化を続けています。2006年のドイツワールドカップで登場した「チームガイスト」は、パネルの枚数をわずか14枚に減らし、より滑らかで真球に近い形状を実現しました。

さらに、近年のボールは、パネルを糸で縫い合わせるのではなく、熱で圧着する「サーマルボンディング製法」で作られています。 これにより、縫い目がなくなり、水の吸収をさらに防ぎ、どこを蹴っても均一な反発力が得られるようになりました。

2022年のカタールワールドカップで使われた「アル・リフラ」のように、最新のボールは表面の凹凸(テクスチャー)にも工夫が凝らされ、空力特性が計算され尽くされています。 これにより、ボールはより速く、正確に飛ぶようになり、選手のスーパープレーを支えています。

白黒からカラフルへ!現代のサッカーボール

かつてはサッカーボールの代名詞だった白黒デザインですが、今ではワールドカップをはじめとする大きな大会で、非常にカラフルで独創的なデザインのボールが使われています。なぜ、ボールは白黒からカラフルへと変化していったのでしょうか。

カラーテレビの普及とデザインの多様化

白黒ボールが生まれた理由が白黒テレビにあったように、ボールがカラフルになった大きな理由はカラーテレビの普及です。 テレビ放送がカラーになることで、ボールの視認性を確保するために白黒である必要がなくなりました。

これにより、デザイナーたちは色やデザインの制約から解放され、より自由な発想でボールをデザインできるようになりました。白を基調としながらも、大会のロゴや開催国の文化を反映した鮮やかな色彩や模様が取り入れられるようになり、サッカーボールは単なる競技の道具から、大会を象徴する華やかなシンボルへと変化していったのです。

ワールドカップごとに変わる公式球デザイン

1970年の「テルスター」以降、FIFAワールドカップでは毎回新しいデザインの公式試合球がアディダス社によって開発・発表されています。 これは、サッカーファンにとって大会の楽しみの一つとなっています。

例えば、2002年の日韓ワールドカップで使われた「フィーバーノヴァ」は、伝統的な白黒デザインから脱却し、ゴールドを基調とした斬新なデザインで話題を呼びました。2010年南アフリカ大会の「ジャブラニ」は8枚パネル構造、そして2022年カタール大会の「アル・リフラ」は、飛行安定性を追求したデザインと、内部にボールの動きを追跡するセンサーを搭載したことでも注目されました。

これらのボールは、大会ごとに最新技術が投入されるだけでなく、そのデザインがマーケティング戦略においても重要な役割を担っています。新しい公式球が発表されるたびに、レプリカモデルが世界中で販売され、大会の盛り上がりに貢献しています。

最新技術が詰まった現代のボール

現代のサッカーボールは、見た目の華やかさだけでなく、その内部にも最先端の科学技術が詰め込まれています。前述の通り、パネルの枚数を減らしてより真球に近づける工夫や、縫い目のないサーマルボンディング製法は、今やトップモデルの標準仕様です。

さらに、ボールの表面には微細な凹凸や溝が施されています。 これはゴルフボールのディンプル(くぼみ)と同じ考え方で、ボール周りの空気の流れをコントロールし、飛行中のブレを抑えてキックの精度を高める効果があります。

また、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の判定を補助するために、ボール内部にICチップを内蔵し、オフサイドの判定などをより正確に行うための技術も導入されています。 このように、現代のサッカーボールは、選手のパフォーマンスを最大限に引き出し、試合の公平性を保つためのハイテク機器へと進化を遂げているのです。

サッカーボールの色のルールとは?

白黒からカラフルへ、時代と共にデザインが大きく変化してきたサッカーボールですが、公式な試合で使うボールの色に、何か特別なルールは存在するのでしょうか。天候などによってボールを使い分けることがあるのかも気になるところです。

公式試合での色の規定

意外に思われるかもしれませんが、サッカーの競技規則(Laws of the Game)において、ボールの色に関する厳密な規定は存在しません。 規則の第2条「ボール」には、以下のような品質や規格が定められているだけです。

  • 球形であること
  • 適切な材質であること(皮革など)
  • 外周:68cm~70cm
  • 重さ:410g~450g
  • 空気圧:0.6~1.1気圧

出典: サッカー競技規則 第2条「ボール」

つまり、理論上はこれらの規格を満たしていれば、どんな色のボールを使ってもルール違反にはなりません。 ただし、ワールドカップやJリーグなどの公式な大会では、主催団体やリーグが認定した特定の試合球(公式球)を使用することが義務付けられています。 そのため、試合で選手たちが勝手に好きな色のボールを使うことはできません。

天候によってボールを使い分ける?

試合中にボールの色が変わる数少ない例が、悪天候の時です。特に、雪が降ってピッチが真っ白になってしまった場合、白いボールでは選手や審判、そして観客からもボールがどこにあるのか非常に見えにくくなってしまいます。

このような状況では、視認性を確保するためにオレンジ色や黄色といった、雪の中でも目立つ色のボール(カラーボール、雪用ボール)が使用されます。 Jリーグや海外のリーグ戦でも、冬の試合で雪が降った際に、主審の判断で白いボールからオレンジ色のボールに交換される光景が見られます。 これは、試合を公正かつスムーズに進行させるための重要な措置です。

フットサルボールとの色の違い

サッカーと似たスポーツであるフットサルでは、どのようなボールが使われているのでしょうか。フットサルボールは、サッカーボール(5号球)よりも一回り小さい4号球サイズで、弾みにくいローバウンド仕様になっているのが大きな特徴です。

色については、サッカーボールと同様に厳密な決まりはありませんが、体育館などの室内でプレーされることが多いため、床や壁の色に対して視認性の高い黄色をベースにしたデザインが多く採用されています。これも、プレーヤーがボールを瞬時に認識し、素早い判断を下せるようにするための工夫と言えるでしょう。

まとめ:サッカーボールが白黒の理由は、時代を映す鏡だった

今回は、サッカーボールがなぜ白黒なのか、その理由と歴史について詳しく解説してきました。

この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 白黒になった最大の理由は、白黒テレビでの視認性向上だった。
  • 1970年W杯の公式球「テルスター」の登場で、白黒デザインが世界中に広まった。
  • 白黒以前は、水を吸って重くなる茶色い革製ボールが主流だった。
  • 白黒デザインは、球体に最も近い「切頂二十面体」という構造を分かりやすく示している。
  • カラーテレビの普及と共にボールはカラフルになり、現在は最新技術が搭載されている。

サッカーボールのデザインの変遷は、単なる見た目の変化ではありません。テレビというメディアの進化に対応し、よりプレーしやすく、より観戦しやすくという目的のために、素材や構造が絶えず改良されてきた技術革新の歴史そのものです。

白黒のボールがテレビ放送という時代を映し出したように、現代のカラフルでハイテクなボールは、グローバル化した現代サッカーの姿を象徴していると言えるでしょう。次にサッカーボールを手に取ったり、試合を観戦したりする際には、そのデザインに隠された物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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